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プロローグ
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〈2025/9/1 改稿〉
母方の家系で十八年ぶり、父方の家系では百年ぶりの念願の女の子誕生ということで、目に入れても痛くないほどに溺愛されて育った藍蘭は、本日誕生日ということで親族総出で盛大に祝われていた。
祝ってもらえるのは勿論嬉しいし有り難いけれど、今日誕生日を迎えるのは自分だけでなく自身と三つ子である二人の弟達もそうで、一緒に祝われてはいるものの比重は自身にあるのだと年を経るごとに実感していた。
しかし当の弟達は、長年父方の血に受け継がれ最早一族のDNAに刻み込まれていると言っても過言ではない女の子が生まれて欲しいという願望の影響か、“生まれてきてくれて有難う!うちの姫君尊い!!”至上主義思想の持ち主へと健やかに育ってしまっため一緒になって…いや、寧ろ藍蘭と一緒に生まれてきたことに優越感すら覚えて他の親族にマウントを取り『藍蘭と一緒に祝ってもらえるだけで最高オブ最高』なんて二人揃って真顔で言ってのける始末で、藍蘭にとっては違う意味で頭が痛い問題である。
取り敢えずそれはさておき、規模が大きいと疲れるからせめてホームパーティー程度にしてほしいと言い続けて早数年。
分かったと言いながらホテルのパーティー会場を貸し切って親族総出で行われるそれに、少しだけ、魔が差してしまい。
「(何かハプニングでも起こんないかなぁ…)」
なんて一瞬でも考えたのがいけなかったのだろうか。
突如として足元が光り出し、一層強く光ったと思った次の瞬間。
《やぁ、我は神だよ。突然だけどアイラ、今の力にプラスしてチート能力をあげるから我の世界を助けてねー》
「っ…」
そんな声がその場にいる全員に聞こえたと同時に浮遊感を感じた藍蘭は光が収束すると共にその場から姿を消した。
藍蘭が突然光に包まれて消えたことに呆然とし、しかしその事実を目の当たりにして騒然する一族と使用人達。
皆が何が起きたのかそしてこれから如何動くかを考え倦ねる中で、我に返った皆の中でいの一番に藍璃がいた場所へ走り寄った青年ーー紗杏がポツリと呟いた。
「ここ、魔法陣が残ってる」
そう言った紗杏がしゃがみ込み触れた先――先程まで藍蘭が立っていたその場所には彼の発言通り魔法陣が残っており、その場にいる全員が色めき立った。
何故なら彼等は。
「アレ、確か自分のこと神とか言ってたわねぇ」
「大切な曽孫を掻っ攫った異教の神…つまり悪魔だな。うん、とっ捕まえて消すか」
母方の祖母の家系は、その昔エクソシストを多く排出した家系。
「流石儂の曽孫!魔法陣の保存状態が完璧だな」
「…よし、繋がったわ。あの子の気配も感知したからいつでもいいわよ」
母方の祖父の家系は、その昔陰陽師や退魔師を多く排出した家系。
「あっちに着いたらアレを全力でボコればいい、と。うん、理解」
「うふふ、全力で殺っちゃいましょう」
父方の祖父の家系は、その昔騎士や軍人を多く排出した家系。
「直ぐに消したりするんじゃあちょっと生温いよな?」
「じわじわと追い詰めて少し夢を見させてから絶望に叩き落とす、くらいしないと…ねぇ?」
父方の祖母の家系は、その昔暗殺者や拷問官などを多く排出した家系。
そう、彼らは現代に生きながらも、皆ある意味ファンタジー要素のある家柄の出自だった。
つまるところ、手段さえ整えられれば彼らにとっては何事も何とかなるのである。
「…藍蘭、今助けに行くから待ってて…」
***
一方その頃。
浮遊感が収まり地に足がついた感覚を得た藍蘭が目を開くと、そこはどこまでも続くただ真っ白い空間だった。
そして目の前には艷やかな銀髪と煌めく金の瞳を持つ、彫刻のように整った面立ちで神秘的なオーラを放つ長身の男性がいた。
多分コレがさっきの声の主で自称神なんだろう、と理解した藍蘭はにっこりと、しかし瞳の奥は全く笑っていない笑顔を浮かべて言った。
「はじめまして自称神様。取り敢えず十発殴らさせて頂きたく存じますので…──覚悟決めて、歯ぁ食いしばりやがれ」
《じゅっ?!そこは普通一発……いや、てゆーか暴力反対っ!!》
元の世界での一族の遣り取りからお察しの通り、藍蘭は不条理な件に関して割と物理と能力のゴリ押しで物事を解決する人間なのである。
母方の家系で十八年ぶり、父方の家系では百年ぶりの念願の女の子誕生ということで、目に入れても痛くないほどに溺愛されて育った藍蘭は、本日誕生日ということで親族総出で盛大に祝われていた。
祝ってもらえるのは勿論嬉しいし有り難いけれど、今日誕生日を迎えるのは自分だけでなく自身と三つ子である二人の弟達もそうで、一緒に祝われてはいるものの比重は自身にあるのだと年を経るごとに実感していた。
しかし当の弟達は、長年父方の血に受け継がれ最早一族のDNAに刻み込まれていると言っても過言ではない女の子が生まれて欲しいという願望の影響か、“生まれてきてくれて有難う!うちの姫君尊い!!”至上主義思想の持ち主へと健やかに育ってしまっため一緒になって…いや、寧ろ藍蘭と一緒に生まれてきたことに優越感すら覚えて他の親族にマウントを取り『藍蘭と一緒に祝ってもらえるだけで最高オブ最高』なんて二人揃って真顔で言ってのける始末で、藍蘭にとっては違う意味で頭が痛い問題である。
取り敢えずそれはさておき、規模が大きいと疲れるからせめてホームパーティー程度にしてほしいと言い続けて早数年。
分かったと言いながらホテルのパーティー会場を貸し切って親族総出で行われるそれに、少しだけ、魔が差してしまい。
「(何かハプニングでも起こんないかなぁ…)」
なんて一瞬でも考えたのがいけなかったのだろうか。
突如として足元が光り出し、一層強く光ったと思った次の瞬間。
《やぁ、我は神だよ。突然だけどアイラ、今の力にプラスしてチート能力をあげるから我の世界を助けてねー》
「っ…」
そんな声がその場にいる全員に聞こえたと同時に浮遊感を感じた藍蘭は光が収束すると共にその場から姿を消した。
藍蘭が突然光に包まれて消えたことに呆然とし、しかしその事実を目の当たりにして騒然する一族と使用人達。
皆が何が起きたのかそしてこれから如何動くかを考え倦ねる中で、我に返った皆の中でいの一番に藍璃がいた場所へ走り寄った青年ーー紗杏がポツリと呟いた。
「ここ、魔法陣が残ってる」
そう言った紗杏がしゃがみ込み触れた先――先程まで藍蘭が立っていたその場所には彼の発言通り魔法陣が残っており、その場にいる全員が色めき立った。
何故なら彼等は。
「アレ、確か自分のこと神とか言ってたわねぇ」
「大切な曽孫を掻っ攫った異教の神…つまり悪魔だな。うん、とっ捕まえて消すか」
母方の祖母の家系は、その昔エクソシストを多く排出した家系。
「流石儂の曽孫!魔法陣の保存状態が完璧だな」
「…よし、繋がったわ。あの子の気配も感知したからいつでもいいわよ」
母方の祖父の家系は、その昔陰陽師や退魔師を多く排出した家系。
「あっちに着いたらアレを全力でボコればいい、と。うん、理解」
「うふふ、全力で殺っちゃいましょう」
父方の祖父の家系は、その昔騎士や軍人を多く排出した家系。
「直ぐに消したりするんじゃあちょっと生温いよな?」
「じわじわと追い詰めて少し夢を見させてから絶望に叩き落とす、くらいしないと…ねぇ?」
父方の祖母の家系は、その昔暗殺者や拷問官などを多く排出した家系。
そう、彼らは現代に生きながらも、皆ある意味ファンタジー要素のある家柄の出自だった。
つまるところ、手段さえ整えられれば彼らにとっては何事も何とかなるのである。
「…藍蘭、今助けに行くから待ってて…」
***
一方その頃。
浮遊感が収まり地に足がついた感覚を得た藍蘭が目を開くと、そこはどこまでも続くただ真っ白い空間だった。
そして目の前には艷やかな銀髪と煌めく金の瞳を持つ、彫刻のように整った面立ちで神秘的なオーラを放つ長身の男性がいた。
多分コレがさっきの声の主で自称神なんだろう、と理解した藍蘭はにっこりと、しかし瞳の奥は全く笑っていない笑顔を浮かべて言った。
「はじめまして自称神様。取り敢えず十発殴らさせて頂きたく存じますので…──覚悟決めて、歯ぁ食いしばりやがれ」
《じゅっ?!そこは普通一発……いや、てゆーか暴力反対っ!!》
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