TS魔法少女リュネール・エトワール! ~星月の魔法少女は気の赴くままに行動する~

月夜るな

文字の大きさ
41 / 137
第三章『真白襲来!?』

Act.12:シスター✕クリスマス②

しおりを挟む

 ファミレスにてお昼をとった後、俺たちは再び車へと乗る。運転席には俺が、助手席には真白が座る形だ。特に目的地もないが、ドライブだしそんなもんだろう。

「お兄、何処に行くの?」
「ドライブだしな、行き先なんて無いさ」
「それもそうだねー」

 車を走らせ、道路を進んでいく。特に向かう目的地はないが、ひたすら進んでいくだけ。同じ道路でも、ずっと進めば景色も変わってくるし、そういうのも良いだろう。

「ふふ」
「何だ、真白楽しそうだな」
「うん! お兄と二人で出掛けるのは久しぶりだなって思って、ついつい」

 確かにそうだな。
 真白は大学に行ってしまったから、あまり会えないしこうやってのんびり出掛けるのは久し振りかもしれない。対する俺はニートであるのは突っ込まないでくれ。

「取り敢えず北の外れまで行ってみるかー」
「北の外れって言うと、北茨城市?」
「だな。中に入れば他にも外れはいくつもあるけどな」

 特に理由はないが、まあ、ドライブだしこういうのも良いよな。国道を走り抜け、見慣れた景色が続く。やっぱり国道なので、混んでいるのは仕方がないか。クリスマスだしな……。

「この辺はあまり変わらないね」
「まあ、国道沿いだしなー。でも潰れた店や新しく出来た店も一応はあるな」

 昔はやっていた店が気が付けば、閉まっていたり、新しいお店になっていたりとか良くあるよな。仕方がない事とは言え、実際行ったことある所とかだと、何か寂しくなる。

「……」

 しばらく道なりに進んで行けば、周りの風景も変わっていき、数時間ほど走らせた所で茨城県の北の外れ、北茨城市へと入る。そこで一度、近くにあったコンビニへと入る。
 ちょっと疲れたしな……それに、喉も少し乾いたし。

 しっかし、長距離を車で移動するなんていつ振りだろうか? 車は良く乗るけどそんな遠くには行ったりしてなかったし、結構久し振りかもしれない。
 まあ、一人でドライブなんてちょっと寂しいしな。いや、そういうのが好きな人も居るし、これは俺の感覚か。

「真白、喉乾いただろ。ここで一旦休憩しよう」
「うん!」

 駐車場に車を止めて、降りる。

「うぅ、寒っ」
「だな。すっかり冷え込んじゃってな」

 真冬、と言えば良いだろうか。
 何か喋ったり、口を開けたりすると白い息が出る。これもまた冬の風物詩だよな……流石にずっと外にいるのは寒いので、そのまま真白と一緒にコンビニの中へと入るのだった。



□□□



 コンビニの中に入ると、暖房が効いていてさっきまでの寒さは無くなる。と言っても、外に出ればまた寒くなるんだけどね。
 私のちょっと前を進むお兄を見る。いつ見てもぱっとしない服装を好むなあと思う。でもそれがお兄には似合っているんだけどね。

 お兄は昔からあまり変わってない。
 何ていうのかな……自己評価が低いとかそういう感じ。お兄は自分の事今じゃ冴えないおっさんとか言ってるけど、流石にそれは言い過ぎだと思う。

 ぱっと見では、おっさんではなくまだ十分青年と言えると思う。顔も普通よりは上だしね。そして何より、誰に対しても優しい。

 これはお兄の良い所でもあるけど、反対に悪い所でもある。実際、お兄って何人かに学生時代に告白されたって聞いてる。その中に同級生の子も居たらしい。
 ……本当にお兄は。

 今も、私の歩幅に合わせて歩いてくれているし、無自覚なんだろうなぁ。お兄はそういう人だもんね……でもだから私はお兄を好きになった。

 ゲームだって、私が負けてばっかりで泣きそうになった時とか、しっかり見ておかないとわからない感じでわざと負けてくれてた。それを適度にやって如何にも良い勝負してますという雰囲気を出していたし。
 昔、私が迷子になった時だって真っ先に私を見つけてくれて……他にもナンパにあっていた時とかも、いつも助けてくれていた。
 ナンパくらい、よくされてたから対応は出来たと思う。でもお兄が助けてくれた時は嬉しいって思った。

 小さい頃からずっと、そばに居てくれたお兄。勿論、今はもう居ないけど……お父さんやお母さんも好きだったけど、いつの間にか私の中でお兄という存在が大きくなっていた。

 お父さんとお母さんが亡くなった日だって、お兄は自分も悲しいはずなのに私の事を心配してくれてた。でも知ってる、お兄もこっそり部屋で泣いていたという事を。

 そう言えばお兄の学生時代の話って、あまり聞かないな。
 告白されたって事とかは、聞いてたけど……。

「真白は何にする? 買ってやるよ」
「いやお兄、私も一応それなりのお金はあるからね?」
「知ってるけど、兄としてな? それに久し振りに会ったんだから飲み物くらいは買わさせてくれ」
「ふふ。ありがとうお兄」

 本当にお兄は優しい。
 まあ、だから魔法少女の二人にも好意を抱かれたんだよね。やっぱり、予想通りというか……それでちょっと苦労してるみたいだね。

 でも、お兄を好きになる気持ちは分からなくない。私も好きだった……いや、まだ好きなんだから。

 リュネール・エトワールの時は無口キャラを演じてるみたいだけど、お兄本来の性格は全然変わってない。だから二人も恋に落とさせちゃったんだろうな、罪なお兄だよ。

「じゃあ、私もこれで」
「俺と同じ物で良いのか?」
「うん」

 私が選んだのは無糖のカフェラテである。お兄も同じのを選んでたみたい。別に、お兄が選んでたから私も選んだという訳じゃないよ? 私も無糖のラテ結構好きなんだよね。

「コンビニもクリスマスだねー」
「だなー」

 商品をカゴに入れて、私たちはレジへと向かう。思ったよりお客さんが多く、並んでいてレジも二台稼働しており、更に二人ずつ店員が着いているというフル稼働状態。
 コンビニの中は賑やかで、クリスマスソングやクリスマスのBGMとかが絶え間なく流れている。商品棚とかにも邪魔にならない程度に飾り付けもされている。

「帰りに残ってたらクリスマスケーキでも買おうか」
「いいねそれ! でも、当日って残ってるのかな?」
「むしろ当日の方が残ってそうな気がする」
「あー確かに」

 確かに当日よりも、前日の方が結構売れてるよね、ケーキって。勿論、当日も売れてるけどさ。

「他に買うものとかはないか?」
「大丈夫!」
「そうか。それならレジに行くか」

 私とお兄の飲み物以外にも、いくつかの商品をカゴに入れたお兄は、並んでいる列の後ろに続けて並ぶ。二人も並ぶと邪魔になりそうだから私は出入り口近くでお兄を待つ。

 しばらくして、レジ袋を持ったお兄が戻ってきた所でコンビニを後にする。

「うー寒い!」
「暖房が効いているところから出るとこうなるよな。とっとと車に行くか」
「うん」

 と言っても、車はすぐ近くなのでもう目の前にあるけどね。

「ん?」
「お兄?」
「真白、見てみろ」
「え?」

 車のドア近くに来た所で、お兄が足を止める。
 空を見上げていたので、私もお兄に促されるまま空を見上げれるとさっきまで太陽が出てた気がするのに、いつの間にか太陽が見えなくなっていて、代わりに厚い雲に覆われていた。さっきまで晴れてた気がするけど……あれ?

 ふと、空から何かが振っているのに気づく。雨……ではないね。これは……雪?

「雪……」
「おう。お前雪とか好きだっただろ?」
「うん」

 雪が積もった日は、お兄と一緒にいつものように雪だるまを作ったり、雪合戦したりしてたのを思い出す。でも、この辺でクリスマスに雪が降るって珍しい。

「この時期に雪が降るとはなー。いつも、2月くらいなのに」
「そうだね……って事は今年のクリスマスはホワイトクリスマスって事になるのかな?」
「まだ降り始めたばかりだから、今日中には流石に積もらないだろうけどな」

 積もらなくても取り敢えず、雪が降ったんだからホワイトクリスマスでいいよね?
 ふふっ……お兄と二人で出掛けたクリスマスがホワイトクリスマスになるって、ちょっと嬉しいかも。滅多に見られないよねこう言うのは。

「それっ!」
「って、真白!?」
「ふふっ、お兄大好き!」

 お兄の腕をがっしり掴んで私は、そう言ったのだった。


 来年も……良い事ありますように。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。

タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。 しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。 ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。 激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。

召喚されたら無能力だと追放されたが、俺の力はヘルプ機能とチュートリアルモードだった。世界の全てを事前に予習してイージーモードで活躍します

あけちともあき
ファンタジー
異世界召喚されたコトマエ・マナビ。 異世界パルメディアは、大魔法文明時代。 だが、その時代は崩壊寸前だった。 なのに人類同志は争いをやめず、異世界召喚した特殊能力を持つ人間同士を戦わせて覇を競っている。 マナビは魔力も闘気もゼロということで無能と断じられ、彼を召喚したハーフエルフ巫女のルミイとともに追放される。 追放先は、魔法文明人の娯楽にして公開処刑装置、滅びの塔。 ここで命運尽きるかと思われたが、マナビの能力、ヘルプ機能とチュートリアルシステムが発動する。 世界のすべてを事前に調べ、起こる出来事を予習する。 無理ゲーだって軽々くぐり抜け、デスゲームもヌルゲーに変わる。 化け物だって天変地異だって、事前の予習でサクサククリア。 そして自分を舐めてきた相手を、さんざん煽り倒す。 当座の目的は、ハーフエルフ巫女のルミイを実家に帰すこと。 ディストピアから、ポストアポカリプスへと崩壊していくこの世界で、マナビとルミイのどこか呑気な旅が続く。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

異世界帰りの少年は現実世界で冒険者になる

家高菜
ファンタジー
ある日突然、異世界に勇者として召喚された平凡な中学生の小鳥遊優人。 召喚者は優人を含めた5人の勇者に魔王討伐を依頼してきて、優人たちは魔王討伐を引き受ける。 多くの人々の助けを借り4年の月日を経て魔王討伐を成し遂げた優人たちは、なんとか元の世界に帰還を果たした。 しかし優人が帰還した世界には元々は無かったはずのダンジョンと、ダンジョンを探索するのを生業とする冒険者という職業が存在していた。 何故かダンジョンを探索する冒険者を育成する『冒険者育成学園』に入学することになった優人は、新たな仲間と共に冒険に身を投じるのであった。

処理中です...