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最終章『妖精世界』

Act.06:妖精世界と魔力②

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 魔力とは。
 魔法少女の力の源である不思議な力の名称だ。誰が名付けたのか……恐らく原初の魔法少女がそう言ったのだと言われてる。

 魔力は魔法少女の力を使う為に必要不可欠な力だ。魔法と呼ばれる力を行使する時も魔力を消費して、発動させている。この魔力がなくなれば当然、魔法は使えなくなる。
 他にも魔法少女になった少女たちは、変身と呼ばれる力を使う。そうそれが魔法少女と呼ばれる状態だ。変身前は普通の少女と変わりがない。

 その変身した状態を作り出しているのも魔力。
 一般的には魔力装甲と呼ばれ、攻撃を受けた際に魔法少女を守ってくれる物だ。勿論、反動はあるが実際の身体には影響を及ぼさない。

 受けた攻撃分、装甲は削れるが、すぐに体内魔力がその削れた分を補填する。これが体外の魔力装甲と体内の魔力の役割。

 魔法少女の魔力には二つあり、一つが体外の魔力。つまりさっき言った魔力装甲だ。そしてもう一つが体内魔力。これは魔法の力を使う際に消費される物。
 そして削れた魔力装甲を補填する役割も担っている。一番重要なのがこの体内魔力で、これがなくなると魔力装甲の補填ができなくなり削られていくだけとなる。更に魔法という力も使えなくなる。

 装甲を全て削りきられれば、変身状態を維持できずに解除されてしまう。そうなると、普通の人に戻ってしまうためその状態で攻撃を受ければひとたまりもないだろう。

「魔力、か」

 わたしは魔力という物について改めて考えていた。
 ラビの話を聞き、魔力という物は妖精世界では空気のような役割を持っていたと知る。これがなくなってしまったから妖精世界は、滅んでしまった。
 世界自体は残っているが、草木すら生えない環境と化してしまっている。

 妖精書庫にある本をわたしもわたしで読みながら考える。あ、もちろんラビの許可をもらってるよ。普通に読めた事には驚いたけど……。

 本に書かれてた文字は日本語でも英語でも、それこそフランス語だとかイタリア語とかでもなく、見たことのない言語だった。なのに、何故か普通に読めていた。
 ラビが言うにはわたしが、ラビによって魔法少女になった存在であるため、読めるとの事だった。ラビについての謎は多いから、良く分からなかったけど……。

 でだ。ブラックリリーの目的はこの魔力を妖精世界に戻すことだ。
 そうすれば、時間はかかるだろうけど徐々に回復していくと思っているのだ。確かにそれはあり得ると思ってる。空気と同じ役割を持つ魔力がなくなったから、世界は滅んでしまった。
 なら、それを戻せれば……。

 どれだけかかるかは分からないけど。
 ただ地球だって元々は魔力がない世界だった。それが気付けば、もう地球上全てに魔力は循環している。それは、呼吸する動植物の影響が大きいだろう。

 空気と一体化した魔力。
 それを植物は吸収し、魔力を取り込む。そして光合成を行い、酸素を生み出す。その時に酸素だけではなく魔力も生み出すようになった訳だ。

 まあ、一気に世界中に広がったのは妖精世界の魔力が一気に流れ込んだからっていう影響もあるだろうけど、そういう変化が地球には起きた。
 そして魔力は一度宿ると、消える事はなく、消費しきっても自然回復するようになる。それもあり、地球は植物がある限り魔力がなくなることはないという世界になった。

 それを妖精世界でも同じようなことが可能ならば……動植物は再び命を芽吹き、妖精世界を戻せるかもしれない。

 地球は何度も変化して進化してきた。それは動植物たちにも言える。今回は魔力という新たな力が地球上に広がり、それに合った変化が発生したのだ。

 さて、話を戻すが何故わたしは妖精書庫に居るのか?
 その理由は別に特別な事はなく、家に帰ったけど、ブラックリリーとの約束した時間まではまだまだあったので、ラビに聞いて妖精書庫の本を読んでも良いかと訪ねたのだ。

 さっき許可をもらったって言ったと思うけど、そういう事である。

 初めて妖精書庫に来た時から気にはなっていた。ただ色々とあったので、こうして読む機会がなく、今になってようやくと言った感じだ。ここは静かで、読書にも適した場所だと思う。

 どういう原理で構成されているのかは分からないけど、空間系統の魔法が関わってそうかな? 空間を作り出すという魔法を、既に使える人が居る訳だし、こういう空間があってもおかしくない。

 それに魔法については謎がまだ多いから。
 魔法って一言で言ってもかなりの種類や数がある。魔法少女毎に使える魔法が様々であるというのがその証拠だ。勿論、ダブる事もあるが、それはそれで同じ魔法を使える子を別の場所に派遣できるというメリットが有る。

 中でも回復系統の魔法はたくさんあっても困らないしね。人数が居る分、手が色んな所に届くから。

「うーん」

 一冊の本を読むのにかなり時間がかかる。それだけの情報が、この本一冊一冊に詰まっている。これを、あの短時間で三分の一読み終わらせたラビはやっぱ、おかしい。貶している訳ではなく、逆である。

 妖精世界の成り立ちとか、魔力についてとか、魔法についてとか……様々だ。

「気分転換しよ」

 わたしにはラビのような速読力なんてないので、休憩とか挟まないときついものがある。そもそも、ラビの読む速度は異常だ。今も信じられない速度で読んでるっぽい。
 魔法を使ってるのか、本たちが何冊も浮かんでラビを囲っているような光景だ。

「前にも思ったけど……」

 ここは本当に綺麗だ。居心地も良いし、循環している魔力も新鮮な感じがする。何というか、落ち着けると言うか癒やされると言うか……ここに居るだけでストレス解消とかもできそうな気がしてる。

 これ、空から太陽の光みたいなのが差し込んでるけど、外に出れるのかね? この書庫自体もかなり広くて、移動するのにも結構一苦労だ。更に上へ上へと、続いている。
 流れる小川も本物で、触ると冷たい感触がある。掬い上げることも出来るし、飛ばすことも出来る。当然、濡れるが。

「妖精世界の復活。わたしに出来ることはあるかな?」

 魔力を集めているなら、わたしのこの異常なほど多い魔力が活用出来るかも知れない。

「それに、ラビの故郷でもあるしね」

 復活を望んでないと言えば嘘になる、とラビが言ってたのを思い出す。ただ、復活したとしても誰も居ない世界。ラビしか居ない世界になる訳で、そんな世界に一人だけというのは、余計に辛いだろう。

 ただ状況は変わってる。ララと呼ばれるラビと同じ妖精が居たということ。とは言え、それでも世界に二人だけというのも何か寂しいかもしれない。
 まあ、ブラックリリーの目的はそこではなく、故郷を戻してあげたいという物だったから、妖精世界の復活とはちょっと違うかな? 復活も元に戻すもどっちも同じだけど。

 復活させてララを妖精世界に戻したいとは言ってないしね。

「えっと時間は……」

 この空間に居ると時間が過ぎているって感覚がしないんだよね。
 スマホ型のデバイスを取り出して、待機画面を表示させる。時間は……結構経ってるな。そろそろ、ブラックリリーに会う準備をしないとかな。

 準備と言っても特にすることは変身するくらいだけど。

「ラビ、そろそろ」
「え? あ、もうそんな時間なのね、ちょっとまってて」
「ん」

 別の場所で本を読んでいたラビに声をかけると、そう返ってきたので待っている間にスマホ型デバイスを取り出す。

「――ラ・リュヌ・エ・レトワル!」
『SYSTEM CALL "CHANGE" KEYWORD,OK――LA LUNE ET L'ETOILE――』

 変身のキーワードを紡けば、いつものように浮遊感が襲ってくる。そして体中に魔力が走っていくのを感じた所で、わたしはリュネール・エトワールへと変身を終える。

『SYSTEM CALL "CHANGE" SUCCESS!!――GO!』

 そしていつも通りの変身完了を知らせる音声が流れた所で、丁度ラビが戻ってくる。

「それじゃ、行きましょ」
「ん」

 定位置となった肩にラビが乗った所で、わたしたちは妖精書庫を後にするのだった。


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