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最終章『妖精世界』
Act.09:予定調整と金色の少女
しおりを挟む「これで良しっと」
CONNECTのアプリを立ち上げ、とあるメッセージを送信しておく。相手は雪菜と蒼の二人である。というかそもそも、登録しているのが雪菜と蒼と真白の三人だけである。
そこ、可哀想な顔で見ない。まあ、登録する相手が居ないっていうのは事実だけども。今までだって別に登録とかしてなかったし、あくまでこのスマホは変身デバイスだしね。
ブラックリリーと別れる前に、ホワイトリリーとブルーサファイアが何故か会いたがっていたと、伝えた所、大丈夫という答えが返ってきた。本当に大丈夫なのか? って聞いてけど、大丈夫みたい。
普通に考えて拒否するものだと思っていたけど。
ブラックリリーについては、男の証言で一応容姿とか見た目は魔法省内でも伝えられているはずなので、二人に会うのはリスクがあるんじゃないかって思ってる。
ホワイトリリーに関しては、この茨城地域唯一のSクラス魔法少女だし、支部長である茜との繋がりも強いはずだ。ホワイトリリーの情報源は茜だと思うし。
一番偉い人と関わりがあるなら、そりゃあ、色んな情報を持っているよね。
ブラックリリーの見た目は、その証言の物と一致している。だからこそ、魔法省に行った時も少々怪訝そうな目を向けられていたのだ。だけど、確信がないから無闇に接触しようとはしてなかった。
そこについては、申し訳ないけど良かったと思ってる。もうしばらくは、ブラックリリーは自由に動けるからね。ただ、何処から情報とかが漏れるかはわからない。
それによって、確信を得た魔法省が魔法少女を出動させてブラックリリーを捕まえるかもしれない。
素直に応じれば、そこまで酷い扱いにはならないと思うが……そもそも、トップが茜だからなあ。
話が逸れたが、そういう訳で個人的にはブラックリリーが二人と会うのは、危険だと思うんだけど……。それに対して、ブラックリリーは『変に探し回られるよりは、直接こっちから会った方が良いでしょ』と言うものだった。
『それに、下手に向こうも動かないでしょうし』
まあ、ブラックリリーの言い分には確かに一理ある。彼女の容姿が似ているってだけで、捕まえたりする事はできないだろうし、要は警察のように証拠がなきゃ逮捕できないという感じだ。
因みに、魔法少女については魔法省に一任されている。下手に警察とかに任せると余計な被害が出かねないためである。なので、悪事を働いた魔法少女が居た場合は、魔法省が捕まえて事情聴取などをするらしい。
詳しい所までは分からないけどね。
「ん」
わたしの送信したメッセージに既読がついたので、向こうも読んだ事がわかる。
日程については、今度の土日というようにしてる。わたしはともかく、雪菜も蒼も学校があるはずなので平日は駄目だろう。ブラックリリーは分からないけど、学生のはず……ともかく、それも踏まえて今度の土日という事にした。
土日と二つ挙げている理由は、単にどっちが都合が良いかを確認するためだ。ブラックリリーも土日ならどっちも大丈夫という答えをもらっているし、わたしの場合は何時でも大丈夫だ。
なので、これらは雪菜と蒼の都合の確認でもある。どっちも駄目であれば、また別の日に変えるつもり。その時は、またブラックリリーと話さないといけないけど。
『私はどちらでも大丈夫です。出来れば午後が良いですが』
『個人的には午後かな? 日にちはどっちでも大丈夫』
雪菜、蒼の返信が届く。
二人共、土日ならどっちでも大丈夫のようだ。そして午後のほうが良い……と。まあ、午前中は人によっては寝てるかもしれないし、忙しいかもしれないから納得である。
ブラックリリーも特に何も言ってなかったので、大丈夫かな。わたしも、午前だろうが午後だろうが夜だろうが時間はあるので何時でも大丈夫である。
そうなると、土日のどっちかの午後が一番かな。
「うーん。土曜日かな」
日曜日はゆっくりしたいだろうし、土曜日の午後かな。後は時間だけど……まあ、15時位が丁度良いかな。明日もブラックリリーと会う予定があるので、その方向で決めておこう。
「メッセージのやり取りは終わったのかしら?」
ラビがそう聞いてきたので、一応仮ではあるけど決定したという事を伝える。
「ん。一応。後は明日、またブラックリリーと会って確認して終わり。今度の土曜日の15時位」
「丁度良いわね」
「ん」
12時はお昼なのでまず論外。13時は、お昼食べてる人も居るはずだし、食休みと言うか休憩もあるだろうし、ここも除外。14時は、大丈夫だと思うけど、念の為除外して15時を選んでる。
二人にも15時は大丈夫なのか聞いてみた感じだと、問題なさそうだった。後はブラックリリーかな。多分、何時でも大丈夫と言ってたし問題ないだろうが……。
「それなら、司」
「?」
ラビがわたしの名前を呼ぶ。いや呼ぶこと自体は、可笑しくはないけど……何だろうと思い首を傾げる。
「付いてきてくれるかしら」
「ん」
そう言ってラビが取り出したのは、妖精書庫へ入るために使う金色の鍵だった。空中に差し込むと、自動的にくるりと回り鍵が開く音と同時に視界が光りに包まれる。
光が収まれば、もうそこは妖精書庫の中である。
「ラビ?」
「こっちよ」
「ん」
後で話すから今は付いてこい、というような雰囲気をラビから感じたのでそのまま、後を追いかける。
「ここで良いかしらね。ごめんなさい、座って良いわよ」
「ん」
ラビの後を追いかけ、付いたのは大きな丸テーブルが置いてあり、それを囲うように椅子が複数設置されている場所だった。何ていうか、円卓会議みたいな感じだ。
椅子が複数あるけど、わたししか座らないから物凄い寂しいと言うか、シュールである。取り敢えず、ラビの言う通り適当な場所に座ると、ラビはわたしの目の前にやってくる。
「ラビ?」
「うん、気になるのは分かるわ。あなたはここに呼んだ理由は……そうね、そろそろ隠すのは良くないと思ってね」
「?」
「ララの事もあるし……これから妖精世界に行くというのもある。これ以上は隠せないわね」
「ラビ? 何のこと?」
いきなりでちょっと頭が追いつかないが、ラビが何かをわたしに教えてくれるということかな? ラビについては、前から気になってたし、何者なのかも気になってた。けど、無理に聞くことはなかった。
「ララの言ってたゲートという魔法は、設置型で自由に行き来することが出来るわ。それの発動に成功し、妖精世界に行けばいずれはバレるだろうから。それにこれ以上、隠すのはあなたにも申し訳ないと思ったから」
「嫌なら良いんだよ?」
「ふふ。やっぱり、あなたは優しいわね。でも、決めたから……」
ラビがわたしを見るその目は、真剣というかもう何かを決意したような感じだった。
「エクスチェンジ」
「え?」
ラビはそう言って、テーブルの上から床に降りた所で、何かしらの魔法を発動させる。ラビの身体が白い光に包まれ、それが段々と高くなりわたしと同じくらいまでになった所で、止まる。
その白い光は、数秒ほどそのまま光り続け、その後、徐々に消えていった。そして、さっきまでラビが居た場所には見覚えのない、少女が一人立っていた。
「ラビ……なの?」
「この姿では初めてですね」
「ラビ、なんだね」
全く違う感じなのに、何となくこの子はラビだと直感が告げる。わたしがそう言うと、少女は軽く笑い、そして口を開いた。
「――改めまして。私の名前はラビリア・ド・アルシーヴ・フェリークと申します。以後お見知り置きを……というのはちょっと変ですね、ふふ」
そう言ってくすりと笑うのは、金髪碧眼で背中の真ん中辺りまで髪を伸ばし、頭にはティアラのようなものを載せている、何処か雰囲気の違う一人の少女だった。
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