TS魔法少女リュネール・エトワール! ~星月の魔法少女は気の赴くままに行動する~

月夜るな

文字の大きさ
103 / 137
最終章『妖精世界』

Act.17:ブラックリリーの真意

しおりを挟む

「送信っと」

 今日もまたブラックリリーと会って話をして、家へと戻ってきている。
 今、何をしたのかと言えば、今度の土曜日の情報を二人に送信しただけである。今度の土曜日の15時頃と予定を立てていたので、それをブラックリリーに話した所、彼女も問題ないという事で日程が確定したのだ。
 それをホワイトリリーとブルーサファイアに伝えるためにCONNECTでメッセージを送った感じだ。

 これで、ほぼ決定したという事になるだろう。

「それにしても」

 ブラックリリーに渡された一枚の地図を見る。
 明日はここに来て欲しいと言われた。この場所は、特にお店とかの場所でもなければビルや、裏通りとかそう言う所でもない場所だ。

 ネットのマップを見ても同じで、一つの家がある場所だった。そんな家を集合場所にするという事は……ここは多分、恐らくブラックリリーの家なんじゃないかと思ってる。
 赤の他人の家の前っていうのは、考えられないし……そうなると、何故自分の家を場所にしたのか? まだ彼女の家だっていうのは決まってないが。

『分かりました』
『了解』

 そんな事を考えていると、二人から返信が来る。
 大丈夫だっていうのは前もって知っていたので、このメッセージは確認用というべきか。取り合えず、予定に変更はなく、二人も問題ない事を確認出来たので、この予定は決定となる。

 ただ集合場所っていうのが、魔法省のビルの屋上なんだよね。
 え、そんな場所使って良いの? と思ったんだけど、どうやらホワイトリリーが茜にお願いしたら、気を遣ってくれたのか、使ってOKとなったらしい。

 ホワイトリリーとブルーサファイアの二人が屋上を選んだ理由は分からないが、受付通って建物内に入ると以前のわたしのように目立つだろうし、それも踏まえてるのかな?
 当日は受付から入らなくても、直接屋上に行って大丈夫だそうだ。普通は屋上から入るとか、あり得ない話だが、魔法少女の身体能力は中々えぐいので、余裕で行けるだろう。

 それに、すぐ近くに丁度良い感じの建物があるからそこに登ってから、飛び移ることも可能だろう。

 ただ多分、わたしの場合は一回のジャンプで行けそうな気はする。というか、あの辺にあるビルなら全部一回で飛べるし。他の魔法少女は分からないけど、身体能力はラビが干渉してもしてなくても、同じくらいっぽいし余裕で行けるのかもしれない。

 まあ、ホワイトリリーとブルーサファイアの場合は魔法省内から普通にエレベーターと階段を使って登れるだろうけど。

 ブラックリリーについては、あの子テレポートというチートな魔法を使えるので、それで一瞬だろう。他にも空間を作って足場にして登るという事も出来るだろうし。

 そうなるとわたしだけ、何とも言えない手段だな……いやまあ、別に気にしてないけど。

「どうかしましたか? あ、司。そんな体勢で居ると見えますよ」
「ん……」

 あ、そうだった。
 今のわたしはスカートを履いているから、こんな体勢してると見える。何がとは言わないが。体勢を直して、スカートを手で押さえて整える。

「髪もちょっとぼさぼさになってますね。私がやりましょうか」
「別に……ん、よろしく」

 自分で出来るから断ろうと思ったらラビが何か悲しげな顔を見せたので、ついついOKを出してしまった。すると、ラビの顔が一転してパアッと明るくなった。そんなやりたかったの?
 いつの間にか手に持ってた櫛を使って、わたしの長い髪を整え始める。自分でやっていたときは何とも感じなかったけど、他人にやってもらうと何かくすぐったさがある。

「ん」
「やっぱりサラサラしてますね。手入れも慣れたみたいですし」
「あれだけみっちり言われたら、嫌でも慣れる」
「あははは。真白は、思ったよりスパルタでしたね」

 そうなのだ。
 真白の指導というか、教えというか……結構スパルタだった。日常の中でも常に真白が居たし、時には隠れていて、わたしが何かミスするとスッと出てきて注意してくるし……うん、気が抜けなかったよ。

 でもまあ、わたしを思っての事だったし、これを選んだのもわたしだったので何とか頑張ったけど。そうしているうちに、もう慣れた。慣れって怖いよね……知らぬうちに身についてるし。

「ちょっとくすぐったい」
「それは我慢してください」

 くすぐったいけど、別に嫌な感じではない。というか、他人にやってもらうと言うのが何処か心地良さがあって、ついついウトウトしてしまう。

「って、何やってるの」
「いえ、髪型変えたらどんな感じかなと思いましてついつい、好奇心が勝ってしまいまして」
「……」

 そう言いながら手で髪型を作るラビ。
 仕方がないな……ツインテールにしたり、ポニーテールにしたりとか色んな髪型を試しているようだ。というか、ラビってお姫様だよね? 何でそんなに上手なの?

 だってほら、王女とかってメイドさんにやってもらうようなイメージが強いし……偏見だけど。

「王女とは言え、私はどちらかと言うと変わってる方の王族ですからね。確かに大体はやってもらっていましたが自分でも出来るようにしてましたよ」
「自分で言っちゃうんだ」
「まあ、本当の事ですしね」

 確かに王族が自分で色々するのは変わっているのだろう。
 と言っても、そういった王国とか王様とかの話なんて地球ではないし、大体がライトノベルとかでの知識でしかない。後は昔あった絶対王政の事くらいか?

「うーん」
「どうかした?」

 髪を梳かしながら、何かに悩んでいるようなラビの声に首を傾げる。

「いえ、司の髪型、色々試してますけどどれもしっくり来ないですね」
「ん」
「何というかこれじゃない感というか……」
「ふーん?」
「どの髪型も似合ってるとは思いますけど、一番はやっぱりストレートですねえ」
「そう? まあ、ストレートが一番楽だし」

 髪型変えるのが面倒だし、考えるのもちょっと面倒。一番簡単なのはそのままのストレートだろう。まあ、長い髪なので時々邪魔と感じる事はあるけど、個人的にはストレートが一番好きである。
 魔法少女に変身したとしても、髪は結ばれずストレートのままだしね。そもそも、とんがり帽子なんだよなあ……とんがり帽子を被ってる状態で髪を結ぶのはありなのだろうか。

「自分の好みですからね、髪型なんて」
「ん」
「っと、終わりました」

 途中、髪型で遊ばれたが、ちゃんと梳いてくれていたので、さっきのボサボサした感じはなくなっている。自分でやる事も慣れたから出来るけど、たまに他人にやってもらうのも案外良いのかもしれないな。

「ありがとう、ラビ」
「いえいえ!」

 それで話を戻すけど、ブラックリリーがこの場所を選んだ理由が分からない。仮にここが彼女の家だとすると、わたしに正体をバラすつもりなのだろうか。

「どうかしましたか? ああ、彼女の事ですね」
「ん」
「何故、明日はこの場所にしたんでしょうね……」
「分からない」

 明日ここに行けば全て分かるだろうけど……ふと、ブラックリリーがわたしに友達になって欲しいと言っていた時の事を思い返す。あの時の彼女は何処かいつもとは違う感じだったな。
 今までの喋り方とかでついていたイメージが、崩壊したよ。いや、別に駄目という訳ではなく、あまりの変わり様にちょっと驚いていた。

 友達という存在に憧れていたとも言ってた。
 ……過去何か、あったんだろうか? ブラックリリーのリアル事情は分からないけど、もし何かあるのであれば……相談して欲しいな。折角友達になったんだから。

 烏滸がましいかもしれないけど、わたしとしてはブラックリリーも守るべき対象の一人だ。だからこそ、何かあるのであれば話して欲しいなとは思ってる。
 と言っても、こちらから無理に聞き出すような事はしないし、するつもりもないけど。

「明日行けば、分かりますか」
「だね」

 理由は分からないけど、彼女がこの場所を指定したのであればわたしはそれに従おう。別に拒否する必要もないしね……ここからは少し遠くなるけど、魔法少女になっていればあまり変わらない。

 気にはなるけど、明日本人から聞くまではこの疑問とかは仕舞っておこう。



しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。

タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。 しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。 ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。 激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。

召喚されたら無能力だと追放されたが、俺の力はヘルプ機能とチュートリアルモードだった。世界の全てを事前に予習してイージーモードで活躍します

あけちともあき
ファンタジー
異世界召喚されたコトマエ・マナビ。 異世界パルメディアは、大魔法文明時代。 だが、その時代は崩壊寸前だった。 なのに人類同志は争いをやめず、異世界召喚した特殊能力を持つ人間同士を戦わせて覇を競っている。 マナビは魔力も闘気もゼロということで無能と断じられ、彼を召喚したハーフエルフ巫女のルミイとともに追放される。 追放先は、魔法文明人の娯楽にして公開処刑装置、滅びの塔。 ここで命運尽きるかと思われたが、マナビの能力、ヘルプ機能とチュートリアルシステムが発動する。 世界のすべてを事前に調べ、起こる出来事を予習する。 無理ゲーだって軽々くぐり抜け、デスゲームもヌルゲーに変わる。 化け物だって天変地異だって、事前の予習でサクサククリア。 そして自分を舐めてきた相手を、さんざん煽り倒す。 当座の目的は、ハーフエルフ巫女のルミイを実家に帰すこと。 ディストピアから、ポストアポカリプスへと崩壊していくこの世界で、マナビとルミイのどこか呑気な旅が続く。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

異世界帰りの少年は現実世界で冒険者になる

家高菜
ファンタジー
ある日突然、異世界に勇者として召喚された平凡な中学生の小鳥遊優人。 召喚者は優人を含めた5人の勇者に魔王討伐を依頼してきて、優人たちは魔王討伐を引き受ける。 多くの人々の助けを借り4年の月日を経て魔王討伐を成し遂げた優人たちは、なんとか元の世界に帰還を果たした。 しかし優人が帰還した世界には元々は無かったはずのダンジョンと、ダンジョンを探索するのを生業とする冒険者という職業が存在していた。 何故かダンジョンを探索する冒険者を育成する『冒険者育成学園』に入学することになった優人は、新たな仲間と共に冒険に身を投じるのであった。

処理中です...