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最終章『妖精世界』
Act.28:ゲート②
しおりを挟む「この辺りかな」
取り敢えず、色々? あったけど今は四人で裏庭の方にやってきている。何をしているのかと言えば、まあ、見ての通り、これからゲートの魔法を使う準備をしている所だ。
使う準備というか、ゲートは設置型の魔法らしく、一度発動すると消さない限りその場に残るというものだ。更に言うと、一度設置すると、移動させることが出来ないので適当な場所では使えない訳だ。
移動させたい場合は、一度発動させた魔法を解除し、再び魔法を使うしかないみたい。知っての通りゲートは距離にもよるが、かなりの魔力を消費するとララも言っているし、ラビも言ってた。
それを移動させるだけにまた使うのは確かに面倒というか大変というか……。
でだ。
裏庭とは言え、そこそこの広さはあるのでそのスペースのどの辺りに設置するかを考えている所だ。発動出来ないかもしれないとは言え、発動するかもしれないとも言えるので場所は決めとかないとね。
家から近い場所は中庭と変わらないので、そこはやめておきたい。あまり端っこすぎるのも、あれなので、まあ、程良い感じの位置……中央くらいだろうか?
「家に近すぎず、端っこにも近すぎない。結構良い位置じゃないかな」
「ん」
「ここにするの?」
「ここで良いかな」
場所が決まり、ララはわたしが魔力を注ぎ込んだりしていた魔法の瓶を何処からか未だにわからないけど、取り出して、庭の置く。
多分、魔法か何かで収納しているんだと思うけど……どんな魔法かは分からないな。ファンタジーに良くある小説の異空間に収納できるとかそういうやつだろうか?
まあ、何でも良いけど、やっぱり魔法は便利というか不思議な力だなって思う。妖精世界ではそんな魔法を当たり前に使って暮らしていたと言うし、もしかすると地球よりも文明は高いのかもしれない。
科学ではなく、魔法を使った乗り物とかもあったみたいだし……。
科学技術がなくても、魔法技術でどうにかなるのであればそれは地球より遥かに文明が高くなっていても、可笑しくはない。何せ、地球には今では魔法少女だけだけど魔法が存在するが、元々はそんなのは無かったのだから。
妖精世界……二つの姿を持つ者たち。
と言っても、メインは人型の方らしいけどね。でもって、耳がエルフとまでは行かないが少し尖っているし、背中には半透明な羽もあるので、明らかに人間ではないのは分かる。
いや、向こうの世界ではその姿が当たり前なので向こうからしたら地球人も可笑しく見えるかもね。それに、妖精世界の場合は人間ではなく妖精と呼ばれているっぽいし。
滅んでしまう前はさぞ、凄かっただろうなと思う。
「よし、これで行けるはず……」
「ララ、大丈夫?」
「香菜、心配してくれるのかい?」
「それはそうだよ……」
「ふふ、嬉しいね。でもまあ、大丈夫なはずさ。仮に失敗しても不発に終わるだけだから、何ともないよ」
思い返されるのは、妖精世界が滅んだ経緯。
ラビから聞いた事ではあるけど、複製する魔法の発動に失敗し、どういう訳か二つの世界を引き寄せてしまった。その反動で妖精世界は滅んだ。そして妖精世界にあった魔力が地球になだれ込んできた。
その影響で地球には存在しなかった魔力が充満。植物たちがそれらを吸い込み、何らかの変化が発生し酸素以外にも魔力を作り出すようになった。まあ、植物も動物も環境に適応するために進化するからね……生命にも割と謎は多いものだ。
今回の魔法は、妖精世界とこの場所を繋ぐ魔法。言葉だけで言えば簡単だが、知っての通り妖精世界はこの世界とは別の世界。そんな世界とこの世界を繋ぐのだから、魔法自体の規模はそれなりに大きいものとなる。
消費する魔力もそれに倣って膨大、とララもラビも言っている。魔法の瓶に貯めた魔力でも足りるかわからないし、わたしが魔力を譲渡した場合でもどうなるか不明。
「妖精世界、か」
雲一つない快晴の大空を見ながら呟く。快晴と言っても、季節が季節なので寒いのだが……今こうして話している時だって口から白い息が出てるし。
「どうしましたか、司」
「ラビ。いや、妖精世界の事を考えてた」
「私たちの世界ですか」
「ん。前に言ってた。地球とそう変わらないって」
「そうですね。建築技術とかは地球ほど高くないですけど、あまり変わりませんね。雰囲気とかは。魔力で動く、地球で言えば車のようなものもありましたしね」
「そうなんだ……」
魔力を動力とした車……ちょっとロマンがあるね。
まあ、そんな話も、地球では出来ているんだけどね。魔石というものがあるからそれを使えば、可能ではないかという事。地球の車の技術はかなり高いと思うから、既にそこまで到達している車に魔石という新たな要素を入れるのは難しい所ではある。
それに、今は対魔物が最優先。
魔導砲やら、魔導銃やら色んな案はあるけど、実現するのはだいぶ先になるだろうなあ。
「もし、妖精世界の魔法の技術があったら地球も、魔物に対抗できてたと思う?」
「何か話題変わりましたね。そうですね……魔法については妖精世界の方が進んでいましたし、魔石の活用方法もありました。なので、もしそれらの技術があったら、地球は科学と魔法の入り乱れた高度な魔法科学文明に成長していたかもしれませんね」
「高度魔法科学文明、か。何かかっこいいね」
「ふふ、そうですね」
魔法科学文明か……どんな世界なんだろう? ちょっと考えるだけでも結構楽しいねこれは。
「あくまで、魔法と科学を共存させて進化した場合の話ではありますけどね」
「ん。そうだね」
仮に最初から魔法が存在してた場合、地球はここまで成長できただろうか。魔法の方にばかり研究し、もしかすると妖精世界と同じになっていたかもしれない。
誰かが共存という道を進み、それが浸透すれば或いは。
「準備出来たよ。今から使うけど、良いかい?」
そんな事を考えていると、一通りの準備は出来たようでララがわたしたちに教えてくれる。特に特別な準備はなく、魔法の瓶だけが置かれているだけみたいだ。
まあ、魔法を使うだけだしね……他に何が必要なのかという話である。魔力があれば魔法は使える……妖精はそれが普通のようだが地球としては魔法少女の状態でしか現状使えない。
魔法少女の人が変身せずに、魔法を使えるのか試した事も多くあったみたいだけど、使えなかったみたいだ。
それはさておき、妖精はそんな訳で変身なんてせずに魔法を使える。ラビが過去を見るための魔法を使う時だって、特に特別な作業はしてなかったし。
「ん」
ララの言葉にわたしは頷く。すると、ララもララで頷き返す。その後、香菜とラビとも頷き合った所で、ララは前を向き手を前に差し出す。もう片方の手は魔法の瓶の方に触れてる。
良く分からないが、手を伝って魔力を受け取ってるのかな? わたしが魔力譲渡する際に、触れるみたいに。わたしの場合は特に、身体に触れていれば、何処であろうとも譲渡できるが……。
まあ、今回譲渡する側は魔法の瓶っていう、道具だから一緒に出来ないか。人とかであれば、ララも同じように何処に触れても譲渡できるし受け取る事も出来るのかもしれない。
「――ゲート」
一つ、深呼吸をした後、ララは一つのキーワードを紡ぐ。ララが手を差し出した所に、光が、魔力と思われるきらきらしたものが集まって行く。
魔法の瓶の方を見れば、魔力量を表しているゲージが徐々に減少しつつある。つまり、ララの魔力では足りなかったという事だろう。わたしは魔法の瓶の近くまで移動する。
後から気づいたのだが、別にララに譲渡しなくても魔法の瓶を使っているのだから、こちらにわたしが注げば良いのでは、と。
ゲージはまだ七割近く残っているが、それでもまだ減少しているのでまだ足りないのだろう。しばらくして、ゲージが五割を切ったところで、ゲージの動きが止まる。
同時に、ララの前に白く光る、四角形状の何かが作り出される。
「上手く行った?」
「多分、成功していると思いますが……」
しかし、ララの魔力+この魔法の瓶の五割……中々の消費だな。ララの魔力量は分からないけど、少なくはないと思ってる。
そしてわたしの魔力の半分を入れて三割進むくらいの容量のある魔法の瓶の五割の量。そうなると、ゲートの魔法はわたしならもしかして使えてたのだろうか? いやまあ、星とか月とかと関係ないから、そもそも使えないだろうけど。
「何と行けたようだよ。かなり疲れた」
「大丈夫、ララ」
「大丈夫……多分成功したから繋がってるはず。今すぐ行きたい所だけど、少し休むね」
「ん。そうした方が良い」
見ただけでも結構疲労しているのが分かるし。
しかし、繋がったか……あの四角形というか長方形? の門のような物の先は妖精世界って事だろう。遂に世界と世界を繋いだ……まだ分からないが。
詳細は、ララが戻ってきてから、かな。
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