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閑話:崩れ落ちた日常01(ヴィンター視点)
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目を覚ましたら、いつもと同じ朝が来ると信じていた。
僕にとって朝はいつだって明るく幸福な気持ちになるものだった。少し機嫌が悪い日や、体調が良くない日はあったかもしれないけれど、僕にとって朝とはいつだってすがすがしいものだった。
それなのに、その日の朝は違った。今でもはっきり覚えている。
いつも綺麗で穏やかな母上と厳しいところもあるけれど僕を誰よりも愛してくれているはずの父上。いつものように目が覚めたら朝食をふたりで取るはずだったのに……。
「ヴィンター殿下、本日の朝食会は中止でございます。お部屋の方でお食事をお取りください」
そう言ったのは見覚えのない、使用人だった。いつも、僕に専属でついている使用人ではなかったので違和感を覚えた。
「どうして朝食会がなくなったの??こんなこと生まれてこのかた一度もない。それにお前は誰??」
僕は見覚えのない男にそう言い放つが男は表情筋が死んでいるのかというくらい無表情に答えた。
「私は今日、貴方に仕えるために派遣されたものです」
「名前は??仕える主に普通名乗るよね??」
あまりに礼儀のない男に不機嫌に返すが、暖簾に腕押しというのか男は淡々と答えた。
「失礼いたしました。私はジョンでございます」
「そう、じゃあジョン、どうして朝食会がないのか説明してよ。母上と父上はどうしたの??」
僕の大切な両親が、急な理由がなければ大切な習慣を変えるはずはない。それにこの国は『暗黒の森』に囲まれているから他国からの進行もないし、魔物が入り込むようなことも王都は父上、竜の血を引くものが結界を張っているからありえない。
つまり、有事なんて無縁なのだ。
「正妃様が亡くなりました」
「……叔父上の母上。そう」
正妃と呼ばれるその人は、先王と不貞を行い叔父上を授かった人。父上と結婚していながら酷い裏切り行為だと思っている。
だからこそ、罪の報いとしてずっと塔に幽閉されて息子である叔父上にも会えないでいるのだと母上が話してくれた。
けれど、だから何だと言うのが正直な話だった。
僕にとって、叔父上は父上の弟だから親類だけれど、正妃様は赤の他人だし、その人のせいで母上はずっと側妃でいないといけないのだからあまり良い印象はなかった。
「そのため、本日国王陛下も側妃様も喪に服されるのです」
「でも喪に服すからって朝食を一緒に取らない理由にはならないよね??」
苛々してそうジョンに言った。
説明になっているようでまるで答えになっていないのだ。僕はその態度にイライラして目の前のテーブルを指でトントンと乱暴に叩いていた。
そう言えば、今までの使用人はこんな風に僕を苛立たせたりしなかった。そう考えるとこのジョンは下級使用人なのかもしれない。そんなことを考えたら余計に不機嫌になる。
「ジョンはさ、誰の命令でここにきたの??さっきからこっちが聞いてること全然答えないし、王族にどうしてそんな態度をとれるんだ??」
「……のようだ」
苛立った声で行った時、ジョンが何か小さく呟いたが聞き取れなかった。
「なんだよ!!はっきり言えよ!!」
怒鳴るように声を上げた時、突然部屋の扉が開いた。
「ヴィンター殿下」
そこに立っていたのは、見覚えのない貴族だった。貴族であることはその着ている服や態度で分かるがいままで、僕に挨拶に来たことがある人物ではなかった。
「お前は誰だ??」
その言葉に、男は嫌な笑みを浮かべて答えた。
「貴方に大切な弟を奪われた者ですよ」
そう言って笑ったその顔は、微笑んでいるのに憎しみが溢れているのが分かった。
「弟??」
「……それより、貴方をここから出すつもりはないので大人しく朝食でも食べていてもらえませんか??」
「無礼な!!僕は王族で……」
「ああ、そうですね。今はまだね」
糸のように目を細めて笑った男は、先ほどの無礼なジョンに何か指示をだすとそのまま部屋を立ち去ってしまった。
「……なんなんだ」
僕にとって朝はいつだって明るく幸福な気持ちになるものだった。少し機嫌が悪い日や、体調が良くない日はあったかもしれないけれど、僕にとって朝とはいつだってすがすがしいものだった。
それなのに、その日の朝は違った。今でもはっきり覚えている。
いつも綺麗で穏やかな母上と厳しいところもあるけれど僕を誰よりも愛してくれているはずの父上。いつものように目が覚めたら朝食をふたりで取るはずだったのに……。
「ヴィンター殿下、本日の朝食会は中止でございます。お部屋の方でお食事をお取りください」
そう言ったのは見覚えのない、使用人だった。いつも、僕に専属でついている使用人ではなかったので違和感を覚えた。
「どうして朝食会がなくなったの??こんなこと生まれてこのかた一度もない。それにお前は誰??」
僕は見覚えのない男にそう言い放つが男は表情筋が死んでいるのかというくらい無表情に答えた。
「私は今日、貴方に仕えるために派遣されたものです」
「名前は??仕える主に普通名乗るよね??」
あまりに礼儀のない男に不機嫌に返すが、暖簾に腕押しというのか男は淡々と答えた。
「失礼いたしました。私はジョンでございます」
「そう、じゃあジョン、どうして朝食会がないのか説明してよ。母上と父上はどうしたの??」
僕の大切な両親が、急な理由がなければ大切な習慣を変えるはずはない。それにこの国は『暗黒の森』に囲まれているから他国からの進行もないし、魔物が入り込むようなことも王都は父上、竜の血を引くものが結界を張っているからありえない。
つまり、有事なんて無縁なのだ。
「正妃様が亡くなりました」
「……叔父上の母上。そう」
正妃と呼ばれるその人は、先王と不貞を行い叔父上を授かった人。父上と結婚していながら酷い裏切り行為だと思っている。
だからこそ、罪の報いとしてずっと塔に幽閉されて息子である叔父上にも会えないでいるのだと母上が話してくれた。
けれど、だから何だと言うのが正直な話だった。
僕にとって、叔父上は父上の弟だから親類だけれど、正妃様は赤の他人だし、その人のせいで母上はずっと側妃でいないといけないのだからあまり良い印象はなかった。
「そのため、本日国王陛下も側妃様も喪に服されるのです」
「でも喪に服すからって朝食を一緒に取らない理由にはならないよね??」
苛々してそうジョンに言った。
説明になっているようでまるで答えになっていないのだ。僕はその態度にイライラして目の前のテーブルを指でトントンと乱暴に叩いていた。
そう言えば、今までの使用人はこんな風に僕を苛立たせたりしなかった。そう考えるとこのジョンは下級使用人なのかもしれない。そんなことを考えたら余計に不機嫌になる。
「ジョンはさ、誰の命令でここにきたの??さっきからこっちが聞いてること全然答えないし、王族にどうしてそんな態度をとれるんだ??」
「……のようだ」
苛立った声で行った時、ジョンが何か小さく呟いたが聞き取れなかった。
「なんだよ!!はっきり言えよ!!」
怒鳴るように声を上げた時、突然部屋の扉が開いた。
「ヴィンター殿下」
そこに立っていたのは、見覚えのない貴族だった。貴族であることはその着ている服や態度で分かるがいままで、僕に挨拶に来たことがある人物ではなかった。
「お前は誰だ??」
その言葉に、男は嫌な笑みを浮かべて答えた。
「貴方に大切な弟を奪われた者ですよ」
そう言って笑ったその顔は、微笑んでいるのに憎しみが溢れているのが分かった。
「弟??」
「……それより、貴方をここから出すつもりはないので大人しく朝食でも食べていてもらえませんか??」
「無礼な!!僕は王族で……」
「ああ、そうですね。今はまだね」
糸のように目を細めて笑った男は、先ほどの無礼なジョンに何か指示をだすとそのまま部屋を立ち去ってしまった。
「……なんなんだ」
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