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17.全ては失われた手足のため(リリア(公爵令嬢)視点)
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「まずいわね」
私の元を訪れた使者は相変わらず爬虫類のような冷たい目で私を見つめている。
それは、私の全てを監視するように確認するように見られていることが経験上わかっていた。
「そう、とても面倒くさい。あいつはやはり始末すべきか??その方が楽だが……」
「やめて、それだけは……」
私は懇願するように、その瞳を見つめる、どうしてもそれだけは、あの人だけは守りたかった。
「ならば、うまくやることだ。お前の使える駒を使え。我々が与えたそれを生かしきる、それがお前に課せられた使命だ」
「わかったわ。ところで、そろそろ薬が切れるわ。いつも通り手配をお願い」
「ああ、もちろん。では、また連絡する」
そう言うとそれは煙のように揺らめいて消えた。
「貴方のためなら……私の大切な番。貴方のためなら私は……」
それが誰かの幸せを壊すことになっても私は、その歩みを止めることは出来ない。
「全ては、失われた手足のため。神の怒りに触れて地べたを這う者となった我々と同胞のため」
「そのためなら、同胞のためなら命など笑って捨てろ」
小さな頃から子守唄のように聞いていた、私の全てを形成するもの。
けれど……
「好きだよ」
甘やかなその声で頬を赤らめて貴方は言ってくれた。
「愛している」
砂漠にオアシスを見つけたように私は貴方を、貴方のためなら……。
(きっと、もう穏やかさなどは味わうことはないのね、それでも……)
トントン
部屋の扉を叩く音がした。
きっと彼だろう。
「はい、どうぞお入りになってください」
そこには、この国の竜帝の甥っ子であり私の婚約者のシユ様が疲れた顔をして立っていた。
「リリア、伯父上には会えなかった。あのクソ猫狂いに邪魔された」
「まぁ、だめですよ。人の悪口を言っては。誰が聞いているともしれませんから」
「大丈夫。ちゃんとここには、防音魔法をかけたもん」
少しむくれたその顔は幼い。確か180歳だと聞いている。
人間からすればおじいちゃんだけれど竜人ではまだ未成年らしい。
「そうですか。さすがですわシユ様。結局この後も竜帝様にはずっとお会いできないのですか??」
「ううん。1週間後には約束できたよ、でもその間にあのクズを始末しないと……」
ルーエリン様に対してシユ様の怒りはもっともだ。彼はルーエリン様が番を傷つけて浮気をしてさらには冤罪まで着せたクズ男だと思っているから。
さらに言えば、彼は番を助けたヒーローだとすら思っている。
幼い彼からしたらそれはきっと胸が梳くような成功体験だったに違いない。
(真実を知ったら、彼はどんな顔をするのだろう……)
そんなことを考えて苦笑する。
「シユ様、いつもありがとうございます。貴方のことを愛しています」
「大丈夫だよ。リリア、全部僕に任せて」
頬を上気させて微笑む。甘い甘いその笑顔は私に残る僅かな強さを刺激する。
「ありがとうございます」
それを飲み込んでやり過ごす。私には歩みを止めることはできない。ならばやることはひとつ……。
全てのヴェリテを白昼にさらす可能性があるルーエリン様を消す、ただそれだけだ。
私の元を訪れた使者は相変わらず爬虫類のような冷たい目で私を見つめている。
それは、私の全てを監視するように確認するように見られていることが経験上わかっていた。
「そう、とても面倒くさい。あいつはやはり始末すべきか??その方が楽だが……」
「やめて、それだけは……」
私は懇願するように、その瞳を見つめる、どうしてもそれだけは、あの人だけは守りたかった。
「ならば、うまくやることだ。お前の使える駒を使え。我々が与えたそれを生かしきる、それがお前に課せられた使命だ」
「わかったわ。ところで、そろそろ薬が切れるわ。いつも通り手配をお願い」
「ああ、もちろん。では、また連絡する」
そう言うとそれは煙のように揺らめいて消えた。
「貴方のためなら……私の大切な番。貴方のためなら私は……」
それが誰かの幸せを壊すことになっても私は、その歩みを止めることは出来ない。
「全ては、失われた手足のため。神の怒りに触れて地べたを這う者となった我々と同胞のため」
「そのためなら、同胞のためなら命など笑って捨てろ」
小さな頃から子守唄のように聞いていた、私の全てを形成するもの。
けれど……
「好きだよ」
甘やかなその声で頬を赤らめて貴方は言ってくれた。
「愛している」
砂漠にオアシスを見つけたように私は貴方を、貴方のためなら……。
(きっと、もう穏やかさなどは味わうことはないのね、それでも……)
トントン
部屋の扉を叩く音がした。
きっと彼だろう。
「はい、どうぞお入りになってください」
そこには、この国の竜帝の甥っ子であり私の婚約者のシユ様が疲れた顔をして立っていた。
「リリア、伯父上には会えなかった。あのクソ猫狂いに邪魔された」
「まぁ、だめですよ。人の悪口を言っては。誰が聞いているともしれませんから」
「大丈夫。ちゃんとここには、防音魔法をかけたもん」
少しむくれたその顔は幼い。確か180歳だと聞いている。
人間からすればおじいちゃんだけれど竜人ではまだ未成年らしい。
「そうですか。さすがですわシユ様。結局この後も竜帝様にはずっとお会いできないのですか??」
「ううん。1週間後には約束できたよ、でもその間にあのクズを始末しないと……」
ルーエリン様に対してシユ様の怒りはもっともだ。彼はルーエリン様が番を傷つけて浮気をしてさらには冤罪まで着せたクズ男だと思っているから。
さらに言えば、彼は番を助けたヒーローだとすら思っている。
幼い彼からしたらそれはきっと胸が梳くような成功体験だったに違いない。
(真実を知ったら、彼はどんな顔をするのだろう……)
そんなことを考えて苦笑する。
「シユ様、いつもありがとうございます。貴方のことを愛しています」
「大丈夫だよ。リリア、全部僕に任せて」
頬を上気させて微笑む。甘い甘いその笑顔は私に残る僅かな強さを刺激する。
「ありがとうございます」
それを飲み込んでやり過ごす。私には歩みを止めることはできない。ならばやることはひとつ……。
全てのヴェリテを白昼にさらす可能性があるルーエリン様を消す、ただそれだけだ。
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