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42.償いのために(ルーファス(双子の兄)視点)※
※少しBLっぽい要素があります。苦手な方はご注意ください。
ウェイに出会って、僕は変わった。
ウェイは僕が理解できないことを丁寧に、根気強く教えてくれた。最初は回される書類の意味が全くわからなかったが、次第に理解して正確に仕事ができるようになっていった。
そうなれば楽しくなり、僕は仕事に打ち込むようになった。ウェイは仕事以外にも僕に常識を教えてくれた。そこで初めていままで自分が酷いことを言ってきた双子の弟が自分の代わりに色々なことを頑張ってくれていたという事実を知り、いたたまれない気持ちになった。
母上からは、弟は僕に尽くすのが当たり前でどんなにひどい言葉を言っても良い存在だと言われてきたが、ウェイから、
「もし、ルーファス様が、同じことを言われたら辛くなりませんか??」
と言われて初めて自身の残酷な行いに気づいてしまった。
「僕はなんてひどいことをしたんだ……」
「ルーファス様、気づいたのなら償いはしないといけません。真っすぐな心をお持ちのあなたならできるはずです」
ウェイの言葉がなければ、罪悪感で自ら命を絶とうとしたかもしれない。僕は弟へ償うためにも立派な王になりたいと願うようになった。
そんな僕に、ウェイは自身の話もしてくれるようになった。ウェイには、帝国で働いている妹がおりその妹と、いつか母国で自分たちの地位を取り戻すために危険な仕事も請け負っているのだと教えてくれた。
僕が仕事ができるように変わっても、ウェイ以外は僕の元を訪れることはなかった。むしろ僕とウェイはいつもふたりっきりで閉ざされた中で存在し続けた。
僕にとって母上以外で、近くに居てくれた初めての人であるウェイに対して特別な信頼を寄せ始めていた。それは必然だったと思う。
僕にはウェイ以外信じられる人がいなくて、ウェイには僕の側以外の居場所がなかった。孤独な心が次第にお互いを求めたのだ。
「ルーファス様、これを差し上げます」
ウェイがある日、不思議な袋を渡してきた。中を開くと鱗のような白いキラキラしたものが入っていた。
「これは……」
「我が一族は生涯を共にすると誓った相手にこの逆鱗を渡すしきたりになっているのです」
逆鱗が何かよくわからないが、純粋にウェイからそういってもらえて嬉しくて、僕はそれを大切に肌身は出さず持つようになった。
そんな時に、事件が起きた。
元々は、王城に、ダプネー公爵がおじい様によく似た男を連れてきたことからはじまった。ダプネー公爵曰く、妹とその男が入れ替えられていることを主張し、王家が乗っ取られようとしていると熱弁したのだ。
本来入れ替えられた疑惑が湧いたのは妹だけだったが、僕が優秀だったはずが急に愚かになったと民衆にまで噂が出回っていたため、僕も入れ替わったのではないかと言われるようになってしまったのだ。
自体を重く見た王国では現在、異国で親子鑑定を行うための装置を取り寄せようとしているようだが、その前に事件が起こってしまった。
僕とウェイが仕事のために、王城の庭に出た時、王家に対して不信感を持っていた民衆の一団が僕たちに襲い掛かったのだ。
「王族のふりをするウジ虫が!!」
「王家の血筋でもないくせに!!」
「帝国から嫁いだ王妃が浮気してできた子なのだろう??王国から出ていけ!!」
もし、妹なら守ってくれる護衛がいたかもしれない。しかし、僕とウェイはふたりっきりだ。ウェイは僕を庇うように民衆に立ち向かった。
「逃げてください、ルーファス様!!」
ウェイは強い。それはわかっていた。しかし、いくら強くてもあんな多くの民衆に勝てるはずがない。
「……い、いやだ」
涙が頬を伝う。ウェイだけが僕と向き合ってくれた、僕を人間にしてくれた。そんな人と別れるのはいやだった。しかし、いつも優しいウェイが鋭い声で言った。
「だめです、貴方は生きてください。償いのためにも、そして、私自身のためにも」
そう儚く微笑んだウェイは見たことのない体術で民衆が傷つかないようにしながら倒していくのがわかった。僕は泣きながら、一度王城の中に入り民衆が憲兵達に囚われるまで大人しくしていた。
しかし、憲兵が去った後もウェイの姿が見当たらず必死に探したところ、なぜかウェイも民衆として牢に囚われていることが分かった。
(……助けないと)
僕は胸ポケットの大切な逆鱗に触れながら、ウェイの居る場所まで忍び込んだ。
「ウェイ、大丈夫だから。僕が必ず救い出すから」
そう言ったが、ウェイはボロボロで、見ているだけで胸が引き裂かれるような痛みを覚えた。
「……ルーファス様、私のことは置き去りにして構いません。それよりなにより生き延びてください」
「いやだ!!ウェイも一緒に逃げよう。今まで、ウェイに出会うまで僕は人間じゃなかった。すべてを弟に任せて得た名声の上でまるで自分が優れているんだみたいな顔を平気でしたいたなんて……、ウェイに出会って色々なことを学ばなければ、わからなかった。弟はもう死んでしまって謝ることができないとわかっているけれど、もしもう一度会えるなら許されなくてもしっかり謝りたいよ。それを教えてくれたウェイをほっとくことなんてできない!!」
涙と鼻水を流しながらそう叫ぶ。けれど、僕はいまだになんの力もない愚かなままだ。だから、本当にウェイが救えるかわからない。それでも、大切な人を助けたい。
そう願った時、空から突然声が聞こえた。
「お兄様、今どちらにいますか??」
その声は間違うはずもない弟の声だった。僕はそれがただの空耳かもしれないと思ったが、なぜかその問に答えないといけないと思って気づいたら叫んでいた。
「ここは、王城の別棟にある市民用の地下牢だ」
「わかりました、お兄様、今から助けに行きます。土下座する準備をしていてくださいね」
思いもよらない言葉に驚くが、この後、僕はそれ以上に驚くことになったのだった。
ウェイに出会って、僕は変わった。
ウェイは僕が理解できないことを丁寧に、根気強く教えてくれた。最初は回される書類の意味が全くわからなかったが、次第に理解して正確に仕事ができるようになっていった。
そうなれば楽しくなり、僕は仕事に打ち込むようになった。ウェイは仕事以外にも僕に常識を教えてくれた。そこで初めていままで自分が酷いことを言ってきた双子の弟が自分の代わりに色々なことを頑張ってくれていたという事実を知り、いたたまれない気持ちになった。
母上からは、弟は僕に尽くすのが当たり前でどんなにひどい言葉を言っても良い存在だと言われてきたが、ウェイから、
「もし、ルーファス様が、同じことを言われたら辛くなりませんか??」
と言われて初めて自身の残酷な行いに気づいてしまった。
「僕はなんてひどいことをしたんだ……」
「ルーファス様、気づいたのなら償いはしないといけません。真っすぐな心をお持ちのあなたならできるはずです」
ウェイの言葉がなければ、罪悪感で自ら命を絶とうとしたかもしれない。僕は弟へ償うためにも立派な王になりたいと願うようになった。
そんな僕に、ウェイは自身の話もしてくれるようになった。ウェイには、帝国で働いている妹がおりその妹と、いつか母国で自分たちの地位を取り戻すために危険な仕事も請け負っているのだと教えてくれた。
僕が仕事ができるように変わっても、ウェイ以外は僕の元を訪れることはなかった。むしろ僕とウェイはいつもふたりっきりで閉ざされた中で存在し続けた。
僕にとって母上以外で、近くに居てくれた初めての人であるウェイに対して特別な信頼を寄せ始めていた。それは必然だったと思う。
僕にはウェイ以外信じられる人がいなくて、ウェイには僕の側以外の居場所がなかった。孤独な心が次第にお互いを求めたのだ。
「ルーファス様、これを差し上げます」
ウェイがある日、不思議な袋を渡してきた。中を開くと鱗のような白いキラキラしたものが入っていた。
「これは……」
「我が一族は生涯を共にすると誓った相手にこの逆鱗を渡すしきたりになっているのです」
逆鱗が何かよくわからないが、純粋にウェイからそういってもらえて嬉しくて、僕はそれを大切に肌身は出さず持つようになった。
そんな時に、事件が起きた。
元々は、王城に、ダプネー公爵がおじい様によく似た男を連れてきたことからはじまった。ダプネー公爵曰く、妹とその男が入れ替えられていることを主張し、王家が乗っ取られようとしていると熱弁したのだ。
本来入れ替えられた疑惑が湧いたのは妹だけだったが、僕が優秀だったはずが急に愚かになったと民衆にまで噂が出回っていたため、僕も入れ替わったのではないかと言われるようになってしまったのだ。
自体を重く見た王国では現在、異国で親子鑑定を行うための装置を取り寄せようとしているようだが、その前に事件が起こってしまった。
僕とウェイが仕事のために、王城の庭に出た時、王家に対して不信感を持っていた民衆の一団が僕たちに襲い掛かったのだ。
「王族のふりをするウジ虫が!!」
「王家の血筋でもないくせに!!」
「帝国から嫁いだ王妃が浮気してできた子なのだろう??王国から出ていけ!!」
もし、妹なら守ってくれる護衛がいたかもしれない。しかし、僕とウェイはふたりっきりだ。ウェイは僕を庇うように民衆に立ち向かった。
「逃げてください、ルーファス様!!」
ウェイは強い。それはわかっていた。しかし、いくら強くてもあんな多くの民衆に勝てるはずがない。
「……い、いやだ」
涙が頬を伝う。ウェイだけが僕と向き合ってくれた、僕を人間にしてくれた。そんな人と別れるのはいやだった。しかし、いつも優しいウェイが鋭い声で言った。
「だめです、貴方は生きてください。償いのためにも、そして、私自身のためにも」
そう儚く微笑んだウェイは見たことのない体術で民衆が傷つかないようにしながら倒していくのがわかった。僕は泣きながら、一度王城の中に入り民衆が憲兵達に囚われるまで大人しくしていた。
しかし、憲兵が去った後もウェイの姿が見当たらず必死に探したところ、なぜかウェイも民衆として牢に囚われていることが分かった。
(……助けないと)
僕は胸ポケットの大切な逆鱗に触れながら、ウェイの居る場所まで忍び込んだ。
「ウェイ、大丈夫だから。僕が必ず救い出すから」
そう言ったが、ウェイはボロボロで、見ているだけで胸が引き裂かれるような痛みを覚えた。
「……ルーファス様、私のことは置き去りにして構いません。それよりなにより生き延びてください」
「いやだ!!ウェイも一緒に逃げよう。今まで、ウェイに出会うまで僕は人間じゃなかった。すべてを弟に任せて得た名声の上でまるで自分が優れているんだみたいな顔を平気でしたいたなんて……、ウェイに出会って色々なことを学ばなければ、わからなかった。弟はもう死んでしまって謝ることができないとわかっているけれど、もしもう一度会えるなら許されなくてもしっかり謝りたいよ。それを教えてくれたウェイをほっとくことなんてできない!!」
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