1 / 5
1.あるメイドの忠義
私は今修道院へ向かう馬車に、ヨハンナ様と一緒に揺られていた。
ヨハンナ・マルティン侯爵令嬢。
白銀の美しい髪、深紫のアメジストのような瞳。陶磁器のように白くなめらかな美しい肌は服を着ていても照り輝くような私がもっとも敬愛する美しいお嬢様。
しかし、愚かなヨハンナ様の婚約者であるパーシヴァル公爵令息に3日前に婚約を破棄された。
婚約を破棄されて真珠のように美しい涙を流されたお嬢様は失意の中でご帰宅されてこうおっしゃいました。
「私は初恋を失いました。この先、誰かを愛することはもう二度とありません。これからは神への信仰に身を捧げて生きて行こうと思います」
破棄の原因は明らかにパーシヴァル様の浮気でした。それなのに、お嬢様は彼を許し身を引かれました。
もちろん美しいお嬢様が婚約破棄されても新たなる婚約志願者は後をたたないのは間違いありませんでした。
それなのにヨハンナ様は、婚約破棄を言い渡したパーシヴァル公爵令息への想いを貫くと修道院での人生を望まれました。
「ヨハンナ様……何故あの方を許されたのですか?」
思わず口をついて出た言葉に、その美しい顔(かんばせ)が切ない胸を締め付けるような笑みに変わる。
「私はパーシヴァル様を心よりお慕いしておりました。その想いは山よりも高く谷よりも深いのです。だからこそ私はあの方のためにも身を引く必要がございましたの。それとアンナ、私はもう侯爵令嬢ではありません。ただのヨハンナです」
なぜ?美しい優しいお嬢様がこのような仕打ちを受けるのです?
いえ、お嬢様が望んだことではありますが、私はそれでも許せません。
「アンナ、泣かないで。そして私について来てくれてありがとう。あなたの人生まで巻き添えにして本当にごめんなさい」
そう思慮深い金言に私は身を震わせる。
「お嬢様、私は貴方のためならなんでも捨てることに躊躇いたしません」
「ありがとうアンナ」
私はお嬢様のか細い体を抱きしめた。その体が小刻みに震えていらっしゃいました。
馬車の窓から真っ赤な夕陽が見えた。
血のような赤と黄昏の紫の空。
この美しいお嬢様を独り占めしている今この世界で、そのまま時が止まれば良いのにと本気で思っていた。
ヨハンナ・マルティン侯爵令嬢。
白銀の美しい髪、深紫のアメジストのような瞳。陶磁器のように白くなめらかな美しい肌は服を着ていても照り輝くような私がもっとも敬愛する美しいお嬢様。
しかし、愚かなヨハンナ様の婚約者であるパーシヴァル公爵令息に3日前に婚約を破棄された。
婚約を破棄されて真珠のように美しい涙を流されたお嬢様は失意の中でご帰宅されてこうおっしゃいました。
「私は初恋を失いました。この先、誰かを愛することはもう二度とありません。これからは神への信仰に身を捧げて生きて行こうと思います」
破棄の原因は明らかにパーシヴァル様の浮気でした。それなのに、お嬢様は彼を許し身を引かれました。
もちろん美しいお嬢様が婚約破棄されても新たなる婚約志願者は後をたたないのは間違いありませんでした。
それなのにヨハンナ様は、婚約破棄を言い渡したパーシヴァル公爵令息への想いを貫くと修道院での人生を望まれました。
「ヨハンナ様……何故あの方を許されたのですか?」
思わず口をついて出た言葉に、その美しい顔(かんばせ)が切ない胸を締め付けるような笑みに変わる。
「私はパーシヴァル様を心よりお慕いしておりました。その想いは山よりも高く谷よりも深いのです。だからこそ私はあの方のためにも身を引く必要がございましたの。それとアンナ、私はもう侯爵令嬢ではありません。ただのヨハンナです」
なぜ?美しい優しいお嬢様がこのような仕打ちを受けるのです?
いえ、お嬢様が望んだことではありますが、私はそれでも許せません。
「アンナ、泣かないで。そして私について来てくれてありがとう。あなたの人生まで巻き添えにして本当にごめんなさい」
そう思慮深い金言に私は身を震わせる。
「お嬢様、私は貴方のためならなんでも捨てることに躊躇いたしません」
「ありがとうアンナ」
私はお嬢様のか細い体を抱きしめた。その体が小刻みに震えていらっしゃいました。
馬車の窓から真っ赤な夕陽が見えた。
血のような赤と黄昏の紫の空。
この美しいお嬢様を独り占めしている今この世界で、そのまま時が止まれば良いのにと本気で思っていた。
あなたにおすすめの小説
婚約破棄されたのに、王太子殿下がバルコニーの下にいます
ちよこ
恋愛
「リリス・フォン・アイゼンシュタイン。君との婚約を破棄する」
王子による公開断罪。
悪役令嬢として破滅ルートを迎えたリリスは、ようやく自由を手に入れた……はずだった。
だが翌朝、屋敷のバルコニーの下に立っていたのは、断罪したはずの王太子。
花束を抱え、「おはよう」と微笑む彼は、毎朝訪れるようになり——
「リリス、僕は君の全てが好きなんだ。」
そう語る彼は、狂愛をリリスに注ぎはじめる。
婚約破棄×悪役令嬢×ヤンデレ王子による、
テンプレから逸脱しまくるダークサイド・ラブコメディ!
行き場を失った恋の終わらせ方
当麻月菜
恋愛
「君との婚約を白紙に戻してほしい」
自分の全てだったアイザックから別れを切り出されたエステルは、どうしてもこの恋を終わらすことができなかった。
避け続ける彼を求めて、復縁を願って、あの日聞けなかった答えを得るために、エステルは王城の夜会に出席する。
しかしやっと再会できた、そこには見たくない現実が待っていて……
恋の終わりを見届ける貴族青年と、行き場を失った恋の中をさ迷う令嬢の終わりと始まりの物語。
※他のサイトにも重複投稿しています。
二度目の婚約者には、もう何も期待しません!……そう思っていたのに、待っていたのは年下領主からの溺愛でした。
当麻月菜
恋愛
フェルベラ・ウィステリアは12歳の時に親が決めた婚約者ロジャードに相応しい女性になるため、これまで必死に努力を重ねてきた。
しかし婚約者であるロジャードはあっさり妹に心変わりした。
最後に人間性を疑うような捨て台詞を吐かれたフェルベラは、プツンと何かが切れてロジャードを回し蹴りしをかまして、6年という長い婚約期間に終止符を打った。
それから三ヶ月後。島流し扱いでフェルベラは岩山ばかりの僻地ルグ領の領主の元に嫁ぐ。愛人として。
婚約者に心変わりをされ、若い身空で愛人になるなんて不幸だと泣き崩れるかと思いきや、フェルベラの心は穏やかだった。
だって二度目の婚約者には、もう何も期待していないから。全然平気。
これからの人生は好きにさせてもらおう。そう決めてルグ領の領主に出会った瞬間、期待は良い意味で裏切られた。
婚約者を友人に奪われて~婚約破棄後の公爵令嬢~
tartan321
恋愛
成績優秀な公爵令嬢ソフィアは、婚約相手である王子のカリエスの面倒を見ていた。
ある日、級友であるリリーがソフィアの元を訪れて……。
いっそあなたに憎まれたい
石河 翠
恋愛
主人公が愛した男には、すでに身分違いの平民の恋人がいた。
貴族の娘であり、正妻であるはずの彼女は、誰も来ない離れの窓から幸せそうな彼らを覗き見ることしかできない。
愛されることもなく、夫婦の営みすらない白い結婚。
三年が過ぎ、義両親からは石女(うまずめ)の烙印を押され、とうとう離縁されることになる。
そして彼女は結婚生活最後の日に、ひとりの神父と過ごすことを選ぶ。
誰にも言えなかった胸の内を、ひっそりと「彼」に明かすために。
これは婚約破棄もできず、悪役令嬢にもドアマットヒロインにもなれなかった、ひとりの愚かな女のお話。
この作品は小説家になろうにも投稿しております。
扉絵は、汐の音様に描いていただきました。ありがとうございます。
せっかくですもの、特別な一日を過ごしましょう。いっそ愛を失ってしまえば、女性は誰よりも優しくなれるのですよ。ご存知ありませんでしたか、閣下?
石河 翠
恋愛
夫と折り合いが悪く、嫁ぎ先で冷遇されたあげく離婚することになったイヴ。
彼女はせっかくだからと、屋敷で夫と過ごす最後の日を特別な一日にすることに決める。何かにつけてぶつかりあっていたが、最後くらいは夫の望み通りに振る舞ってみることにしたのだ。
夫の愛人のことを軽蔑していたが、男の操縦方法については学ぶところがあったのだと気がつく彼女。
一方、突然彼女を好ましく感じ始めた夫は、離婚届の提出を取り止めるよう提案するが……。
愛することを止めたがゆえに、夫のわがままにも優しく接することができるようになった妻と、そんな妻の気持ちを最後まで理解できなかった愚かな夫のお話。
この作品は他サイトにも投稿しております。
扉絵は写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID25290252)をお借りしております。
お飾り王妃の愛と献身
石河 翠
恋愛
エスターは、お飾りの王妃だ。初夜どころか結婚式もない、王国存続の生贄のような結婚は、父親である宰相によって調えられた。国王は身分の低い平民に溺れ、公務を放棄している。
けれどエスターは白い結婚を隠しもせずに、王の代わりに執務を続けている。彼女にとって大切なものは国であり、夫の愛情など必要としていなかったのだ。
ところがある日、暗愚だが無害だった国王の独断により、隣国への侵攻が始まる。それをきっかけに国内では革命が起き……。
国のために恋を捨て、人生を捧げてきたヒロインと、王妃を密かに愛し、彼女を手に入れるために国を変えることを決意した一途なヒーローの恋物語。
ハッピーエンドです。
この作品は他サイトにも投稿しております。
表紙絵は写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID:24963620)をお借りしております。
貴方もヒロインのところに行くのね? [完]
風龍佳乃
恋愛
元気で活発だったマデリーンは
アカデミーに入学すると生活が一変し
てしまった
友人となったサブリナはマデリーンと
仲良くなった男性を次々と奪っていき
そしてマデリーンに愛を告白した
バーレンまでもがサブリナと一緒に居た
マデリーンは過去に決別して
隣国へと旅立ち新しい生活を送る。
そして帰国したマデリーンは
目を引く美しい蝶になっていた