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05:言葉にできない気持ち
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「あ、ギムレット様」
途端に恭しく頭を下げる御者に、間違いなくこの娼館の重鎮であると拙者は察した。いつでも隠を生きていたので基本的に人間観察はよくする方である。
ただ、だからと言って得意とは言い難くはある。
この辺りはオタクあるあるかなと思っているのだが、オタク特有の先入観が邪魔をして正しい判断が出来ていない独りよがりになっていることは多々あった。
とはいえ、とりあえず全く知らない人については様子を伺う必要がある。拙者はこっそりギムレット殿を観察する。
「ふーん。なるほど。君達ふたりが王都を賑わせたふたりだね。僕はこの娼館や、この辺りの地区を仕切っている元締めのギムレットだよ。よろしくね」
アルカイックスマイルとはまさにこのことというような、冷たい笑みを浮かべたギムレット殿に、恥ずかしい話、怖すぎて漏らしかけた気がいたしますが、拙者は今全裸なので万が一漏らしたら大惨事である。
それに今の拙者は絶世の美少年なので、万が一漏らしたらまずい。あまり考えたくないが王子様聖水的な変な需要を満たしてしまうので大変今の状況的によろしくない。
なんとか平静を装い答えた。
「お初にお目にかかる。拙者は、ルシオン、元若殿でござる」
答えてから気付いた。あまりの緊張に完全に侍口調で答えてしまった。元若殿ってなんでござる、そこは流石に王子で良かっただろうとセルフ突っ込みを心でしたが、とりあえず気付いてないふりをして微笑みを浮かべた。
前世はニチャァって感じの粘性の強い笑顔になっていたが、美形補正でニチャァっとしても爽やかに変化しているあたり、やはり『ただしイケメンに限る』は事実だったと再確認した。
「……王子様は随分珍妙な口調で話すんだね。まぁいいや。なんにせよ君の水揚げは既にこの娼館始まって以来の最高値で決まっているから、たとえ関係がないと分かっていても元恋人と一緒にいるのは望ましくないんだよね」
拙者には冷たいながらも笑みを浮かべているが、ビッチ氏をそれはそれは冷たい目で見つめるギムレット殿。先ほどの内容からビッチ氏がこの娼館でうまくいっていないことはわかっていた。
先ほどまでとは打って変わって黙り込んでしまうビッチ氏。
多分だが、拙者より先に来ただろう彼はよく見ればピーチピンクで艶のあった髪はパサついて、綺麗だった唇もかさついていて、あまり良い環境に居ないことが見てとれた。
「正直、王子様はね人気があるんだ。まだ処女でなんなら童貞で美しいし儚げで、今後どうとでも花開くだろうから需要がある。それと比べちゃうと魅了が使えないルヴィチ、君はただのちょっと見目が可愛いだけの阿婆擦れでしかないんだよね。くだんの件で誰にでも股を開くって有名になっちゃったし、そうなると娼館にはただ欲求を満たしに来る人達もいるけど、うちでは夢を買いたい人が多いものでね。ここしばらくは娼館内での雑務をさせてたけど、王子様がきたからには君を別の娼館へ下げ渡す必要も視野に入れる必要がでてきたよね」
「……分かってる」
娼館の商品である拙者たちに対して、ギムレット殿が向けるそれは正しいだろう。けれどビッチ氏のことを考えたらやるせない気持ちになる。
全てを悟ったようなビッチ氏の言葉、拙者には分かった。それは前世にとても覚えのあるものだったから。誰かと比較されて貶められる苦痛、しかも自身において変えることが今更できないことへの絶望的で攻撃的な言葉を聞いた時の生々しい感覚が蘇った。
前世は、オタ活以外の現場ではとにかく見下される側だった。あからさまな嫌悪で比較された記憶が蘇る。
『貴方には興味ないからさぁ』
『しゃべらないでいいから、どっかいってくれない??』
そうして、今肩を震わせて真っ黒な絶望の中で必死に何が最良か考えているだろうビッチ氏について想像した途端、前世の自身と重なり泣き出したい気持ちになった。
うさんくさい神様の言葉を信用するならば、ビッチ氏により拙者は15歳から3年間魅了魔法で操られて、それが原因で最愛の人との婚約を自身で破棄して現在性奴隷まで堕とされてしまった。
本来なら、拙者はビッチ氏を憎むのかもしれないが、何故かそういう気持ちにはならなかった。ざまぁ小説が大好きだった妹からしたら拙者は幸福な甘ちゃんなのかもしれない。けれど、前世の人格が蘇った今、拙者は前世の拙者が味わった責め苦を味わわされている人をほっとくことができなかった。
例えばそれが間違いなく自身の不利益になることであっても、体は自然に動いていた。
「ギムレット殿。拙者は魔法でビッチ氏、もといルヴィチ殿に操られていただけなので恋人ではござらん。なので魅了魔法を封じられていれば実際操られている時にも実害が出ていないのでその、ふたりになっても問題ないはずでござる。だから、そのもし許されるならばビッチ氏を拙者の世話係などとしていただけないだろうか。性奴隷の身分でそのようなことを言うのはおこがましいかもしれぬがなんとか……」
「……王子様はお人よしなんだね。ははは。そういう綺麗な精神含めてあの方は君が気に入っているようだ。本当反吐がでる」
これはまずい。逆鱗に触れたかもしれない。
そう思ったがギムレット殿はアルカイックスマイルを浮かべて射貫くような目で拙者を見つめた。
「けれど、その部分を今壊したら水揚げの際に面倒になるから今はその麗しい矜持を踏みにじらないであげる。まぁ時がきたら壊してやるけどさぁ」
「ひぃいいい!!」
あまりの恐怖に歯の根がカタカタする。
「ルヴッチ、良かったね。王子様のご厚意でしばらくは君は面倒見係としてここに置いといてあげるよ」
吐き捨てるように言うとギムレット殿は興味なさげにその場を立ち去って行った。
途端に恭しく頭を下げる御者に、間違いなくこの娼館の重鎮であると拙者は察した。いつでも隠を生きていたので基本的に人間観察はよくする方である。
ただ、だからと言って得意とは言い難くはある。
この辺りはオタクあるあるかなと思っているのだが、オタク特有の先入観が邪魔をして正しい判断が出来ていない独りよがりになっていることは多々あった。
とはいえ、とりあえず全く知らない人については様子を伺う必要がある。拙者はこっそりギムレット殿を観察する。
「ふーん。なるほど。君達ふたりが王都を賑わせたふたりだね。僕はこの娼館や、この辺りの地区を仕切っている元締めのギムレットだよ。よろしくね」
アルカイックスマイルとはまさにこのことというような、冷たい笑みを浮かべたギムレット殿に、恥ずかしい話、怖すぎて漏らしかけた気がいたしますが、拙者は今全裸なので万が一漏らしたら大惨事である。
それに今の拙者は絶世の美少年なので、万が一漏らしたらまずい。あまり考えたくないが王子様聖水的な変な需要を満たしてしまうので大変今の状況的によろしくない。
なんとか平静を装い答えた。
「お初にお目にかかる。拙者は、ルシオン、元若殿でござる」
答えてから気付いた。あまりの緊張に完全に侍口調で答えてしまった。元若殿ってなんでござる、そこは流石に王子で良かっただろうとセルフ突っ込みを心でしたが、とりあえず気付いてないふりをして微笑みを浮かべた。
前世はニチャァって感じの粘性の強い笑顔になっていたが、美形補正でニチャァっとしても爽やかに変化しているあたり、やはり『ただしイケメンに限る』は事実だったと再確認した。
「……王子様は随分珍妙な口調で話すんだね。まぁいいや。なんにせよ君の水揚げは既にこの娼館始まって以来の最高値で決まっているから、たとえ関係がないと分かっていても元恋人と一緒にいるのは望ましくないんだよね」
拙者には冷たいながらも笑みを浮かべているが、ビッチ氏をそれはそれは冷たい目で見つめるギムレット殿。先ほどの内容からビッチ氏がこの娼館でうまくいっていないことはわかっていた。
先ほどまでとは打って変わって黙り込んでしまうビッチ氏。
多分だが、拙者より先に来ただろう彼はよく見ればピーチピンクで艶のあった髪はパサついて、綺麗だった唇もかさついていて、あまり良い環境に居ないことが見てとれた。
「正直、王子様はね人気があるんだ。まだ処女でなんなら童貞で美しいし儚げで、今後どうとでも花開くだろうから需要がある。それと比べちゃうと魅了が使えないルヴィチ、君はただのちょっと見目が可愛いだけの阿婆擦れでしかないんだよね。くだんの件で誰にでも股を開くって有名になっちゃったし、そうなると娼館にはただ欲求を満たしに来る人達もいるけど、うちでは夢を買いたい人が多いものでね。ここしばらくは娼館内での雑務をさせてたけど、王子様がきたからには君を別の娼館へ下げ渡す必要も視野に入れる必要がでてきたよね」
「……分かってる」
娼館の商品である拙者たちに対して、ギムレット殿が向けるそれは正しいだろう。けれどビッチ氏のことを考えたらやるせない気持ちになる。
全てを悟ったようなビッチ氏の言葉、拙者には分かった。それは前世にとても覚えのあるものだったから。誰かと比較されて貶められる苦痛、しかも自身において変えることが今更できないことへの絶望的で攻撃的な言葉を聞いた時の生々しい感覚が蘇った。
前世は、オタ活以外の現場ではとにかく見下される側だった。あからさまな嫌悪で比較された記憶が蘇る。
『貴方には興味ないからさぁ』
『しゃべらないでいいから、どっかいってくれない??』
そうして、今肩を震わせて真っ黒な絶望の中で必死に何が最良か考えているだろうビッチ氏について想像した途端、前世の自身と重なり泣き出したい気持ちになった。
うさんくさい神様の言葉を信用するならば、ビッチ氏により拙者は15歳から3年間魅了魔法で操られて、それが原因で最愛の人との婚約を自身で破棄して現在性奴隷まで堕とされてしまった。
本来なら、拙者はビッチ氏を憎むのかもしれないが、何故かそういう気持ちにはならなかった。ざまぁ小説が大好きだった妹からしたら拙者は幸福な甘ちゃんなのかもしれない。けれど、前世の人格が蘇った今、拙者は前世の拙者が味わった責め苦を味わわされている人をほっとくことができなかった。
例えばそれが間違いなく自身の不利益になることであっても、体は自然に動いていた。
「ギムレット殿。拙者は魔法でビッチ氏、もといルヴィチ殿に操られていただけなので恋人ではござらん。なので魅了魔法を封じられていれば実際操られている時にも実害が出ていないのでその、ふたりになっても問題ないはずでござる。だから、そのもし許されるならばビッチ氏を拙者の世話係などとしていただけないだろうか。性奴隷の身分でそのようなことを言うのはおこがましいかもしれぬがなんとか……」
「……王子様はお人よしなんだね。ははは。そういう綺麗な精神含めてあの方は君が気に入っているようだ。本当反吐がでる」
これはまずい。逆鱗に触れたかもしれない。
そう思ったがギムレット殿はアルカイックスマイルを浮かべて射貫くような目で拙者を見つめた。
「けれど、その部分を今壊したら水揚げの際に面倒になるから今はその麗しい矜持を踏みにじらないであげる。まぁ時がきたら壊してやるけどさぁ」
「ひぃいいい!!」
あまりの恐怖に歯の根がカタカタする。
「ルヴッチ、良かったね。王子様のご厚意でしばらくは君は面倒見係としてここに置いといてあげるよ」
吐き捨てるように言うとギムレット殿は興味なさげにその場を立ち去って行った。
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