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23:変なヤツと過去の話(ビッチ氏視点)
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「体を重ねるなら、お互いをもっと理解するべきだ、まず自己紹介から……」
「自己紹介??それって意味があるの??」
そう言った瞬間、男は何故か真正面から俺を見つめた。眼鏡で隠されていた金色の瞳が俺を捉えた。
いままでこの男に全く興味がなかったのでちゃんと見ていなかったから気付かなかったが、冴えないと思っていた男の顔は存外整っていて、短髪黒髪も含めてなんとも静観な顔立ちをしていた。
ルッシーや、カルナック小公爵達と比べたら見劣りはするが、彼等が美しい薔薇で、この男には竜胆のような見つけたらうっかり見入ってしまうような妙な色気があり、根本から違うタイプの魅力にある人間だった。
「あるさ。俺は肌を重ねる相手に対して情がないと嫌だからな」
「……俺の話聞いてた??俺は淫魔の血があるからそういう行為をしないとお腹がすいてしんじゃうんだよ」
「もちろん、聞いていたし知っている。けれどいくら俺が職務忠実な騎士だとしても、情のないヤツとするのは嫌だからな。それにまだ空腹で切羽詰まってはいないだろう??なら、自己紹介をして少しでも親交を深めたいとおもったんだが……」
(あ、こいつ俺が一番苦手なタイプかも……)
正直、淫魔とのセックスなんて男からしたら事故だと思った方が良い事案だ。一時の極上の快楽の代償に精気を吸われてしばらくはまともでいられなくなるのだから。
けれど、極まれに俺に対してそれ以外のものを望んでくる相手がいる。こいつみたいに親交を深めたいなんて言ってくる奴がそれにあたる。
恋愛とか重い関係はごめんだ。簡単ですぐに切れるようなそういう関係でいい。
「言っとくけど、俺はセックスと恋愛は別で考える人だから」
「なるほど。じゃあどんな恋愛がしたいんだ??」
終始、笑顔なのに意地の悪い気がする表情を浮かべた男は酷くしつこい。こんなことならくだらない提案なんかしなければよかったと思いもしたが、俺だってこういうしつこいヤツに当たったのは初めてではないから少し意地の悪いことをすることにした。
「俺は、自分を世界で一番大切なお姫様みたいに扱ってくれる王子様みたいな人を恋人にしたいんだよ。ガラス細工やお砂糖のお人形を相手にするみたいに丁寧に壊れないようにしてくれて思いやってくれて、どんなことがあっても俺のワガママを聞いてくれて、後絶対に守ってくれるそういう恋人じゃないと嫌なの。だから、君そう言うの無理……」
「なるほど。ワガママなお姫様を満足させられる男なら構わないということだな」
そう言ってはじめて綺麗な笑顔を浮かべた男を、表情を取り繕うことも忘れて俺は信じられないものを見るような目で見てしまった。
「えっ、お前何言って……」
「お前じゃない。俺は、トーイ・イアコフ・ボアネルゲス。一応、伯爵家の息子だ。よろしく」
無骨な手を差し出されて、思わず面食らうが、仕方なくその手を取り握手をした。
「……よろしく」
「よし、じゃあ、まずお互いのことを理解し合おう。そのためにも……」
そう言って勝手に俺のベットに腰かけた図々しい男は、俺に隣に腰かけるように促してくる。
「……ありえないんだけど」
とても、落ち着かない気持ちになる俺を後目に、トーイはなんでもないようなことを嬉しそうに俺に話して、そうしてその日は特に体の関係になることもなくふたりして同じベッドで眠ってしまったのだった。
**********************************************************************************
目の前で小さな頃の俺が泣いている。その様子を俯瞰してみているからこれが夢だってすぐにわかった。薄汚い服を着た小さな俺が泣いても誰もが見てみぬふりをするのが男爵家では当たり前だった。
俺の母親は元々は伯爵令息だったのだと聞いている。とても奔放で天真爛漫で多くの人を引き付ける魅力を持っていた、だから大きな問題を起こして社交界を去る羽目になったのだと。
具体的には、その当時の学園で高位貴族の子息を複数侍らせて、その婚約者たちの不興を買ったということらしい。
ただ、蓋を開けたならば、母親は『魅了』のスキルを持っていて、自身がこの国の頂点にあるべきだと本気で信じて、ついには王家の人間にまでそのスキルを使用したらしい。
結果、この国では『魅了』は罪には問われないが、魔法から覚めた嘗ての取り巻きはみないなくなり、唯一残ったのがその当時伯爵家の嫡男だった父だけだった。
しかし、その父も母を娶るために嫡男の地位を捨てなければいけなかった。そうして辺境の地へ追いやられて本来弟が受け継ぐ予定だった男爵位だけを貰うことになってしまった。
けれど、それでも父は母を愛していたし、母もどんなことがあっても愛してくれる父だけを次第に愛するようになったのだそうだ。
ただ、父と母との間に生まれた兄ふたりは全く魔力を持ち合わせてはいなかった。
この国の貴族はほとんど魔力至上主義者だ。魔力がなければまともな貴族として扱われない。自分たちは過ちをおかしたので過酷な生活も受け入れるが、子供たちにはせめてもう少し裕福な暮らしをさせたい。
そう考えた時、母は魔性にその身を売ってしまった。そう、俺の父親である淫魔に……。結果、俺は母譲りの『魅了』にさらに淫魔である父の魔力も加わり高魔力を保有して生まれた。
けれど、そのせいで、俺の魔力が強すぎたせいで母は俺を産んですぐに産後の肥立ちが悪くて亡くなり、後には高い魔力を持つ自分の息子ではない俺が残されたことで、父は壊れてしまった。
「自己紹介??それって意味があるの??」
そう言った瞬間、男は何故か真正面から俺を見つめた。眼鏡で隠されていた金色の瞳が俺を捉えた。
いままでこの男に全く興味がなかったのでちゃんと見ていなかったから気付かなかったが、冴えないと思っていた男の顔は存外整っていて、短髪黒髪も含めてなんとも静観な顔立ちをしていた。
ルッシーや、カルナック小公爵達と比べたら見劣りはするが、彼等が美しい薔薇で、この男には竜胆のような見つけたらうっかり見入ってしまうような妙な色気があり、根本から違うタイプの魅力にある人間だった。
「あるさ。俺は肌を重ねる相手に対して情がないと嫌だからな」
「……俺の話聞いてた??俺は淫魔の血があるからそういう行為をしないとお腹がすいてしんじゃうんだよ」
「もちろん、聞いていたし知っている。けれどいくら俺が職務忠実な騎士だとしても、情のないヤツとするのは嫌だからな。それにまだ空腹で切羽詰まってはいないだろう??なら、自己紹介をして少しでも親交を深めたいとおもったんだが……」
(あ、こいつ俺が一番苦手なタイプかも……)
正直、淫魔とのセックスなんて男からしたら事故だと思った方が良い事案だ。一時の極上の快楽の代償に精気を吸われてしばらくはまともでいられなくなるのだから。
けれど、極まれに俺に対してそれ以外のものを望んでくる相手がいる。こいつみたいに親交を深めたいなんて言ってくる奴がそれにあたる。
恋愛とか重い関係はごめんだ。簡単ですぐに切れるようなそういう関係でいい。
「言っとくけど、俺はセックスと恋愛は別で考える人だから」
「なるほど。じゃあどんな恋愛がしたいんだ??」
終始、笑顔なのに意地の悪い気がする表情を浮かべた男は酷くしつこい。こんなことならくだらない提案なんかしなければよかったと思いもしたが、俺だってこういうしつこいヤツに当たったのは初めてではないから少し意地の悪いことをすることにした。
「俺は、自分を世界で一番大切なお姫様みたいに扱ってくれる王子様みたいな人を恋人にしたいんだよ。ガラス細工やお砂糖のお人形を相手にするみたいに丁寧に壊れないようにしてくれて思いやってくれて、どんなことがあっても俺のワガママを聞いてくれて、後絶対に守ってくれるそういう恋人じゃないと嫌なの。だから、君そう言うの無理……」
「なるほど。ワガママなお姫様を満足させられる男なら構わないということだな」
そう言ってはじめて綺麗な笑顔を浮かべた男を、表情を取り繕うことも忘れて俺は信じられないものを見るような目で見てしまった。
「えっ、お前何言って……」
「お前じゃない。俺は、トーイ・イアコフ・ボアネルゲス。一応、伯爵家の息子だ。よろしく」
無骨な手を差し出されて、思わず面食らうが、仕方なくその手を取り握手をした。
「……よろしく」
「よし、じゃあ、まずお互いのことを理解し合おう。そのためにも……」
そう言って勝手に俺のベットに腰かけた図々しい男は、俺に隣に腰かけるように促してくる。
「……ありえないんだけど」
とても、落ち着かない気持ちになる俺を後目に、トーイはなんでもないようなことを嬉しそうに俺に話して、そうしてその日は特に体の関係になることもなくふたりして同じベッドで眠ってしまったのだった。
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目の前で小さな頃の俺が泣いている。その様子を俯瞰してみているからこれが夢だってすぐにわかった。薄汚い服を着た小さな俺が泣いても誰もが見てみぬふりをするのが男爵家では当たり前だった。
俺の母親は元々は伯爵令息だったのだと聞いている。とても奔放で天真爛漫で多くの人を引き付ける魅力を持っていた、だから大きな問題を起こして社交界を去る羽目になったのだと。
具体的には、その当時の学園で高位貴族の子息を複数侍らせて、その婚約者たちの不興を買ったということらしい。
ただ、蓋を開けたならば、母親は『魅了』のスキルを持っていて、自身がこの国の頂点にあるべきだと本気で信じて、ついには王家の人間にまでそのスキルを使用したらしい。
結果、この国では『魅了』は罪には問われないが、魔法から覚めた嘗ての取り巻きはみないなくなり、唯一残ったのがその当時伯爵家の嫡男だった父だけだった。
しかし、その父も母を娶るために嫡男の地位を捨てなければいけなかった。そうして辺境の地へ追いやられて本来弟が受け継ぐ予定だった男爵位だけを貰うことになってしまった。
けれど、それでも父は母を愛していたし、母もどんなことがあっても愛してくれる父だけを次第に愛するようになったのだそうだ。
ただ、父と母との間に生まれた兄ふたりは全く魔力を持ち合わせてはいなかった。
この国の貴族はほとんど魔力至上主義者だ。魔力がなければまともな貴族として扱われない。自分たちは過ちをおかしたので過酷な生活も受け入れるが、子供たちにはせめてもう少し裕福な暮らしをさせたい。
そう考えた時、母は魔性にその身を売ってしまった。そう、俺の父親である淫魔に……。結果、俺は母譲りの『魅了』にさらに淫魔である父の魔力も加わり高魔力を保有して生まれた。
けれど、そのせいで、俺の魔力が強すぎたせいで母は俺を産んですぐに産後の肥立ちが悪くて亡くなり、後には高い魔力を持つ自分の息子ではない俺が残されたことで、父は壊れてしまった。
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