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40:恐ろしい計画と魔法(レイモンド視点)
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隠し部屋に連れて来られてしばらく時間が経ったが、迎えが来る気配がない。
そこに来て、私はフッと思うことがあった。何故私は、影の男を信用しきっていたのか。そもそも、影の男の私は声しか知らない、人は亡くなった時に声から忘れるというほどに不確かなソレをなんで信じすぎてしまったのか。
(何故か、頭の中でこの男は信じられると強く信じてしまった……)
普段ならあり得ないその行動と、それを行った自分。何か目に見えないものに操られたようなゾッとするような気持ちに襲われた。
「……まさか、これは『精神操作系』のスキル??」
もし、自分が『精神操作系』にかけられてあの男を信頼したとしたら、そんなスキルは恐ろしい。人ひとりの精神を、思考を簡単に操れる力など禁忌に等しい。
(けれど、この国では『精神操作系』のスキルに対しての規制はない……)
この国の魔力を持つ者はスキルと言われる魔法とは別で、個人が神から授かった特殊な技能を持っている。それをスキルと呼んだり、一部の過激な魔力至上主義者はギフトなどと呼ぶとも聞いている。
しかし、その中で我が国ではとりわけ『精神操作系』と呼ばれるスキルについては軽視しているきらいがある。
「『精神操作系』の魔法などは軟弱なものがかかるものだ」
陛下が、常日頃から異常なほどにそう語っていた話は有名だ。だから、『魅了』に掛かり私と婚約破棄をした息子であるルシオンに対して厳しい判断を下した。
ただ、よく考えたらそう言う発言が多くなったのはルシオンが生まれてからで、陛下が王太子自体にはそのような発言はされていなかったと父上から聞いたことがあるし、父上や魔法師団長殿は隣国ではルシオンがかけられた『魅了』のような精神操作系魔法は禁忌魔法でありもっとも厳重に管理されている。
そこまで考えて、実は何者かが我が国で『精神操作系』を取るに足らないものとして広めた可能性があるのではないかという仮説が立った。そうすることで本来強力なスキルである『精神操作系』に対して何らかの制限を掛けられないようにしていたとしたら。
そこまで考えた時、隠し部屋が開いた。
ここまでくれば最早、影の男への信頼はゼロに等しくなっていた。そのためヤツがきたならば折を見て逃げようと考えていたが、そこから顔をのぞかせたのは意外な人物だった。
「マグダラ男爵令息」
「小公爵様、お久しぶりでございます」
紛れもない、そこにはアルトが居た。ミハイルの従兄弟であり私からしても全く信用できない人物。彼は薄ら笑いを浮かべている。
「何故、君がここにいる??どう考えても君が私を助ける理由はないと思うのだけれど……」
「ふふふ。僕が、ミハイルの魔の手から貴方を救い出そうとしたとは思ってくれないのですか??」
妙に甘い響きで紡がれた言葉だが、ルシオン以外から吐かれるそういう響きの言葉は正直生理的嫌悪以外まったく抱かない。
「まさか。むしろ私から君に抱く感情が好意的であるはずがないことは分かっているだろう??」
「……こっち系の操作には掛かりにくいのか……。そうですね。小公爵様が愛する元婚約者であるルシオン様の予算を義母が横領し、さらに悪評を広めましたからね。我が家を小公爵様は虫唾が走るくらい嫌っていることは分かっております」
そう言って微笑みながら突然、私に触れようと手を伸ばしてきたので急いで払う。すると今まで笑っていた顔が冷たい表情に変わる。
「何のマネだ??」
「小公爵様派賢い御方なのでこちらもこざかしい細工はやめて真実をお教えしますか。貴方にはこれから一度滅んで再興するこの国の国王陛下になって頂く予定なのです」
想像もしていなかった言葉に思わず、目を見開く。意味が全く分からない。
「この国が滅ぶだと??」
「昨日我が国は、帝国へ宣戦布告いたしました。小公爵様もお分かりになる通り大変愚かな選択です。しかし、それを現国王と宰相は行ったのです」
あまりのことに完全に言葉を失う私に、アルトは続けた。
「シナリオは少し複雑ですが、愚かな王族と宰相がこの国を戦争へと導き、滅ぼしますが、唯一賢い貴族であるカルナック公爵家は帝国側について取り潰しを免れるでしょう。そうなった時に、帝国はそのままこの国を帝国の一部にもできますが、帝国から見て異物であるこの国、竜の血を持つものへの反感の強い地域を支配するのは骨が折れることになりますので、王族の血筋の者を王として属国として従える方が妥当だとは思いませんか??」
確信に満ちた声でそう告げるとアルトは、歌うように続けた。
「そうなれば、この国の新しい王には自然とカルナック公爵家が押されるでしょうね。だから、貴方が新しい国の国王となるのですよ」
「何を言っている。大体そんなこと父上は許さない」
父上は、王籍を離れて公爵位についたのだ。王になることなど望んでいない。
「貴方が王になるんですよ。現公爵様は戦争または戦後すぐ不幸な事故で亡くなってしまうので。そうしていよいよ貴方しか高貴な血は残らないと思われた時に、先代王が平民との間に作った子がいたこと、その子の子供が生きているということがわかったら……ふふふ。答えは分かりますね??」
「まさか……お前がその王家の血を唯一継いだ者として私と結婚して王国を支配するつもりということか??残念ながら、私はルシオン以外は全く愛していない」
「ははは、知ってますよ。だから、まずその愛する人を嫌いになってもらう必要があるんです。どんなに愛していても『魅了』に掛かり浮気をするような男である彼を貴方は愛せなくなる」
確信に満ちた表情でそう言ったのを見た時、脳にぼんやりと靄がはるような気持ち悪さが生まれる。
「……何をした??」
「ふふふ、この世界に『真実の愛』などない。どこまで抗えるか見物ですね」
そこに来て、私はフッと思うことがあった。何故私は、影の男を信用しきっていたのか。そもそも、影の男の私は声しか知らない、人は亡くなった時に声から忘れるというほどに不確かなソレをなんで信じすぎてしまったのか。
(何故か、頭の中でこの男は信じられると強く信じてしまった……)
普段ならあり得ないその行動と、それを行った自分。何か目に見えないものに操られたようなゾッとするような気持ちに襲われた。
「……まさか、これは『精神操作系』のスキル??」
もし、自分が『精神操作系』にかけられてあの男を信頼したとしたら、そんなスキルは恐ろしい。人ひとりの精神を、思考を簡単に操れる力など禁忌に等しい。
(けれど、この国では『精神操作系』のスキルに対しての規制はない……)
この国の魔力を持つ者はスキルと言われる魔法とは別で、個人が神から授かった特殊な技能を持っている。それをスキルと呼んだり、一部の過激な魔力至上主義者はギフトなどと呼ぶとも聞いている。
しかし、その中で我が国ではとりわけ『精神操作系』と呼ばれるスキルについては軽視しているきらいがある。
「『精神操作系』の魔法などは軟弱なものがかかるものだ」
陛下が、常日頃から異常なほどにそう語っていた話は有名だ。だから、『魅了』に掛かり私と婚約破棄をした息子であるルシオンに対して厳しい判断を下した。
ただ、よく考えたらそう言う発言が多くなったのはルシオンが生まれてからで、陛下が王太子自体にはそのような発言はされていなかったと父上から聞いたことがあるし、父上や魔法師団長殿は隣国ではルシオンがかけられた『魅了』のような精神操作系魔法は禁忌魔法でありもっとも厳重に管理されている。
そこまで考えて、実は何者かが我が国で『精神操作系』を取るに足らないものとして広めた可能性があるのではないかという仮説が立った。そうすることで本来強力なスキルである『精神操作系』に対して何らかの制限を掛けられないようにしていたとしたら。
そこまで考えた時、隠し部屋が開いた。
ここまでくれば最早、影の男への信頼はゼロに等しくなっていた。そのためヤツがきたならば折を見て逃げようと考えていたが、そこから顔をのぞかせたのは意外な人物だった。
「マグダラ男爵令息」
「小公爵様、お久しぶりでございます」
紛れもない、そこにはアルトが居た。ミハイルの従兄弟であり私からしても全く信用できない人物。彼は薄ら笑いを浮かべている。
「何故、君がここにいる??どう考えても君が私を助ける理由はないと思うのだけれど……」
「ふふふ。僕が、ミハイルの魔の手から貴方を救い出そうとしたとは思ってくれないのですか??」
妙に甘い響きで紡がれた言葉だが、ルシオン以外から吐かれるそういう響きの言葉は正直生理的嫌悪以外まったく抱かない。
「まさか。むしろ私から君に抱く感情が好意的であるはずがないことは分かっているだろう??」
「……こっち系の操作には掛かりにくいのか……。そうですね。小公爵様が愛する元婚約者であるルシオン様の予算を義母が横領し、さらに悪評を広めましたからね。我が家を小公爵様は虫唾が走るくらい嫌っていることは分かっております」
そう言って微笑みながら突然、私に触れようと手を伸ばしてきたので急いで払う。すると今まで笑っていた顔が冷たい表情に変わる。
「何のマネだ??」
「小公爵様派賢い御方なのでこちらもこざかしい細工はやめて真実をお教えしますか。貴方にはこれから一度滅んで再興するこの国の国王陛下になって頂く予定なのです」
想像もしていなかった言葉に思わず、目を見開く。意味が全く分からない。
「この国が滅ぶだと??」
「昨日我が国は、帝国へ宣戦布告いたしました。小公爵様もお分かりになる通り大変愚かな選択です。しかし、それを現国王と宰相は行ったのです」
あまりのことに完全に言葉を失う私に、アルトは続けた。
「シナリオは少し複雑ですが、愚かな王族と宰相がこの国を戦争へと導き、滅ぼしますが、唯一賢い貴族であるカルナック公爵家は帝国側について取り潰しを免れるでしょう。そうなった時に、帝国はそのままこの国を帝国の一部にもできますが、帝国から見て異物であるこの国、竜の血を持つものへの反感の強い地域を支配するのは骨が折れることになりますので、王族の血筋の者を王として属国として従える方が妥当だとは思いませんか??」
確信に満ちた声でそう告げるとアルトは、歌うように続けた。
「そうなれば、この国の新しい王には自然とカルナック公爵家が押されるでしょうね。だから、貴方が新しい国の国王となるのですよ」
「何を言っている。大体そんなこと父上は許さない」
父上は、王籍を離れて公爵位についたのだ。王になることなど望んでいない。
「貴方が王になるんですよ。現公爵様は戦争または戦後すぐ不幸な事故で亡くなってしまうので。そうしていよいよ貴方しか高貴な血は残らないと思われた時に、先代王が平民との間に作った子がいたこと、その子の子供が生きているということがわかったら……ふふふ。答えは分かりますね??」
「まさか……お前がその王家の血を唯一継いだ者として私と結婚して王国を支配するつもりということか??残念ながら、私はルシオン以外は全く愛していない」
「ははは、知ってますよ。だから、まずその愛する人を嫌いになってもらう必要があるんです。どんなに愛していても『魅了』に掛かり浮気をするような男である彼を貴方は愛せなくなる」
確信に満ちた表情でそう言ったのを見た時、脳にぼんやりと靄がはるような気持ち悪さが生まれる。
「……何をした??」
「ふふふ、この世界に『真実の愛』などない。どこまで抗えるか見物ですね」
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