雨ニモマケヌ、野ニ咲ク花ノヨウニ〜魅了魔法で全てを失った元王子の拙者は前世推しに貢いで爆ぜたアイドルオタクだと思い出した

ひよこ麺

文字の大きさ
57 / 74

54:『強迫』は用法用量を守って正しくつかうべきだった(マグダラ男爵令息視点)

しおりを挟む
「尻の中に異物を挿れてるとか変態でしょう。ほら、こいつ性欲お化けでレイモンド様以外ともいっぱい浮気しまくってたんだよ、だから……」

『強迫』の魔法でレイモンド様は完全にアホ元王子の『浮気』という単語に対して敏感に反応するようになっている。だから僕は多めにその単語を使い印象を操作している。

この方法については、『強迫』によく似た魔法である『暗示』の使い手であるマティーニから教えてもらった。曰く、『不自然だと思うほどに、そのことを意識させるように仕向けることで魔法の成功率が上がる。ただ、ひとつだけ気を付けないといけないことがある……』

マティーニの言葉を思い出していた時、突然、黙っていたレイモンド様が完全に据わった目をしながら低い声で言った。

「……許さない」

(やった、これでアホ王子も終わりだ)

そもそも人様の屋敷の廊下で脱〇するようなヤツは、元王子以前に人間として問題があると思うので、僕が抱いている長年の恨みや辛みを抜きにしてもひどい目にあえばいいと思って、レイモンド様にさらに媚びを売る様に上目遣いで見つめる。

「そうです、こんな浮気野郎は見限って……」

これで完全にレイモンド様を落とせると、涙を浮かべながら胸を押し当てた時、いきなり激しい衝撃が体に走った。ありえないが何故かレイモンド様が、僕を思い切り吹っ飛ばしたのだ。

「グエッ」

弾き飛ばされて床に背中をしたたかに打って、思わずありえない声を上げてしまった。そんな僕を、全てを氷漬けにするような冷たい目でレイモンド様が見つめている。

「あ、あの、どうして……」

恐る恐る顔を上げた僕が見たのは、無表情でこちらを見つめているレイモンド様だった。その様子から間違いなく『強迫』は効いているはずだ。

しかし、次の言葉に凍り付くことになる。

「許さない、愛するルシオンを誑かしたのはお前か??」

(えっ、なんで??魔法はかかっているはずなのに……)

怨念すら感じるほどの凄みのある声で言われて、背筋が凍りついた。さらにレイモンド様は恐ろしい言葉を続けた。

「ルシオン、すまない。私がこんなところに閉じ込められる無様な失態を犯したせいで、こんなゴミクソハムシにズボンを脱がされたのかい??」

(いや、こいつは自分からズボンを脱いで廊下で脱〇しようとしていたのだが)

そう言いたかったが、さっきから『強迫』強化のために『浮気』の言葉を連続して言っていたのに、ここでいきなり廊下で脱〇するためにそいつはズボンを自主的に脱いだといっても逆に怪しいだろう。

(ならばここは……)

「……すまぬ、レイ。拙者が不甲斐ないばかりに……」

少し考えたのがまずかった。その隙にアホうん〇元王子がなんかどうとでも取れそうな解答を口にしてしまった。しかも、顔だけは物凄く儚げに見える変態元王子は少し涙目になりながらそんなことを答えたのだ。

その姿に自分の今までの行いなんか吹っ飛んで思わず叫ぶ。

「違う!!僕はこんな脱〇野郎なんて興味なんかない!!」

ただ、叫んだ瞬間、目に見えない力が僕を容赦なくフッ飛ばした。それにより部屋の壁に思い切りぶつかりそのまま墜落した服の襟を鬼のような形相のレイモンド様が乱暴に掴むと目の高さまで持ち上げられた。

間近で見て気付いたが、レイモンド様の目は完全に『強迫』による狂気を発症している。しかし、それが完全に裏目に出てしまっている。

「ルシオンはう〇こなんかしない、なぜならルシオンだからう〇こなんかしない、同じようにルシオンは浮気もしない、なぜならルシオンだから浮気しない」

完全に狂人でしかない小泉構文を披露しているレイモンド様に、背筋が冷たくなるのがわかる。今にも僕の息の根を止めそうなレイモンド様を見ながらマティーニの言葉が頭に再度浮かぶ。

『不自然だと思うほどに、そのことを意識させるように仕向けることで魔法の成功率が上がる。ただ、ひとつだけ気を付けないといけないことがある。『暗示』と違い『強迫』は相手の心の弱い部分に作用させないといけない魔法だ。だからこそ慎重に『弱み』を見極めないといけない。特に『弱み』とよく似ているが似て非なるものである『地雷』に使ってしまうと目も当てられない事態になる可能性があるので注意なさい』

正直、『地雷』の意味はよく分からなかったが今まではその人が嫌がっていることを、『強迫』することでうまくいっていたので、今回もそのはずだったのに、明らかに失敗している。

そして、嫌な事実に気付いた。もしかしてレイモンド様は浮気した恋人よりその浮気相手を憎むタイプなのではないかと、だとしたら矛先は僕に向いてしまっていないか?

(これはまずい、今からでも軌道修正を……)

「あの、レイ、拙者も排泄はするでござる。ただ、今回は排泄はしていない」

「嘘つくな!!お前しゃべるなんかを……グエッ!!」

脱〇の事実を亡きものにしようとした狡猾なクソ元王子に思わず買い言葉を言いかけた時、息ができなほどに首がしまった。

「ルシオンはう〇こなんかしない、なぜならルシオンだからう〇こなんかしない同じように…(以降繰り返し)」

小泉構文(2回目)botみたいなことを言いながら僕の首を容赦なく締めるレイモンド様。呼吸が出来なくなり口をハクハクと開くが気道が塞がり全く意味がない。遠のく意識の中でこんなやりとりが聞こえた。

「レイ、だめでござるよ。そんなに締めたら死んでしまう」

「こんなゴミクソハムシにも優しいんだねルシオン。ああ、その慈愛が憎い。私以外にそんなものは抱かないでおくれ……」

レイモンド様はヤバいヤンデレだと理解して自分の過ちを悟った時、意識が途絶えた。
しおりを挟む
感想 33

あなたにおすすめの小説

記憶を無くしたら家族に愛されました

レン
BL
リオンは第三王子で横暴で傲慢で侍女や執事が少しでも気に入らなかったら物を投げたり怒鳴ったりする。家族の前でも態度はあまり変わらない… 家族からも煩わしく思われたていて嫌われていた… そんなある日階段から落ちて意識をなくした…数日後目を覚ましたらリオンの様子がいつもと違くて…

ギルド職員は高ランク冒険者の執愛に気づかない

Ayari(橋本彩里)
BL
王都東支部の冒険者ギルド職員として働いているノアは、本部ギルドの嫌がらせに腹を立て飲みすぎ、酔った勢いで見知らぬ男性と夜をともにしてしまう。 かなり戸惑ったが、一夜限りだし相手もそう望んでいるだろうと挨拶もせずその場を後にした。 後日、一夜の相手が有名な高ランク冒険者パーティの一人、美貌の魔剣士ブラムウェルだと知る。 群れることを嫌い他者を寄せ付けないと噂されるブラムウェルだがノアには態度が違って…… 冷淡冒険者(ノア限定で世話焼き甘えた)とマイペースギルド職員、周囲の思惑や過去が交差する。 表紙は友人絵師kouma.作です♪

強制悪役劣等生、レベル99の超人達の激重愛に逃げられない

砂糖犬
BL
悪名高い乙女ゲームの悪役令息に生まれ変わった主人公。 自分の未来は自分で変えると強制力に抗う事に。 ただ平穏に暮らしたい、それだけだった。 とあるきっかけフラグのせいで、友情ルートは崩れ去っていく。 恋愛ルートを認めない弱々キャラにわからせ愛を仕掛ける攻略キャラクター達。 ヒロインは?悪役令嬢は?それどころではない。 落第が掛かっている大事な時に、主人公は及第点を取れるのか!? 最強の力を内に憑依する時、その力は目覚める。 12人の攻略キャラクター×強制力に苦しむ悪役劣等生

魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました

タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。 クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。 死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。 「ここは天国ではなく魔界です」 天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。 「至上様、私に接吻を」 「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」 何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?

ユキ・シオン

那月
BL
人間の姿をした、人間ではないもの。 成長過程で動物から人間に変わってしまう”擬人化種”の白猫青年と、16歳年上のオッサンとのお話。 出会ったのは猫カフェ。白猫従業員としての青年と客としてやってきたオッサン。 次に再会したのは青年が人間として通う大学。オッサンは保健室の先生だった。 青年が金のためにヤバいことをしていて、あるトラブルが起こる。 そこへ見計らったかのようにオッサンが飛び込んで救出したのをきっかけに2人の距離は縮まり…… ※表紙絵は自作。本編は進むにつれてどんどん動物園と化します(笑)

魔法使い、双子の悪魔を飼う

yondo
BL
「僕、魔法使いでよかった」 リュシーは宮廷専属の優秀な魔法使い。 人が寄りつけない程強い自身の力のせいで常に孤独なリュシーは、ある日何気なく街を歩いていた際に闇商人の話を聞いてしまう。貴重で価値ある''モノ''を高値で買い取る悪趣味な会が近くであるらしく気になったリュシーは其処で不思議な双子と出逢いを果たす。 本の見よう見まねで無償の愛を与え続けるリュシーに育てられた双子はいつしか胸の内に何とも言えない感情を抱く様になり... 独りぼっちだった魔法使いが出逢いを通して彼等と関係を紡いでいき幸せを知る微闇要素有りのBLファンタジー。 (※) 過激描写のある話に付けています。 *** 攻め視点 ※不定期更新です。 ※誤字脱字の報告助かるので嬉しいです。 ※何でもOKな方のみ拝読お願いします。 扉絵  YOHJI@yohji_fanart様 (無断転載×)

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない

了承
BL
卒業パーティー。 皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。 青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。 皇子が目を向けた、その瞬間——。 「この瞬間だと思った。」 すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。   IFストーリーあり 誤字あれば報告お願いします!

処理中です...