婚約破棄した王子様の初恋相手の綺麗なお姉さんの正体はヤンデレの叔父でした

ひよこ麺

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1.洗濯ものの気持ちを知った王子様と突然のプロポーズ

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(正直、何故僕のところに報告にしたのか分からないな……それに今は大切な話し合い、いや最後通告の最中だ)

「わかった。一旦、こちらの話が完了するまで待ってほしい」

「し、しかし……」

何故か従者が困っていたが大切な話の最中なので一旦出て行ってもらった。

その後に席に戻り、再び婚約者の方を見て思わず唖然とした。

何故か彼女の表情が先ほどまでと異なり妙に嬉々として見えたのだ。

「イクシオン様は……やっぱり……ルートで分岐なのね……ふふっ」

しかも、意味の分からないことをブツブツ口走っていた。

とりあえず僕はこの異常者と話をつけてとっとと婚約者という関係をやめたいと強く思ったので立ち上がって告げる。

「この話は、伯爵も知っている。だから、近日中に君の自宅へ書面も届くだろう。これ以降は当人同士で話し合うつもりはないのでいくら覆したいと望んでももう無駄だ」

そう必要なことだけ告げて僕は、そのままお茶会の席を後にする。その去り際に伯爵令嬢が、

「イクシオン様と結ばれるんだし、もうキープはいらないわね」

と妙に冷えた声で言ったのが聞こえたが、頭がおかしい狂人の戯言など聞くに堪えなかったのでそのまま、先ほどの従者に急いで促されるまま自室に戻る。

すると、自室の前に誰かが立っているのが分かった。

その人物はとても長身、体は筋骨隆々で男らしい。僕は割と華奢な体型なので羨ましい。

さらに、髪の色は元は淡い色なのだろうが長年太陽に晒されていたためか痛みパサついて赤みがかっているが、それがより逞しい感じを演出している。

後ろ姿だけでも、彼が勇ましい武人であると分かるが、全く見覚えがなかったのでとりあえず話しかける。

「そちらの方、そこは僕の部屋なのですがどうかされましたか??」

そう話しかけると彼はこちらを振り返った。その顔は美形に間違いない。凛々しくキリっとした目鼻立ちをしていることがわかったから。しかしそれ以上に気になる部分があった。

左目の部分に彼は黒い眼帯をしていたのだ。

今まで、物語の中の海賊の船長くらいしか見たことのない容貌に思わず見入っていると、逞しい武人がいきなり僕の方に駆け寄りなぜかそのまま抱擁してきた。

「な!!」

「可愛いルクス。やっと戻れた。これで可愛い君とした約束を守ることが出来るよ」

ムキムキの筋肉が付いた胸にいきなり抱き込まれてしまう。

その胸の硬さに潰されて息が出来ずに死にそうになる僕を尻目にムキムキの武人は続ける。

「ルクス、こんなに華奢で……。ちゃんと食事はしているのかい??元々食も細かったしとても叔父くんは君を心配していたんだよ」

と言われて、その言葉からどうやらこの人が先ほど帰還した叔父上であると直感した。

「叔父上ですか??」

「ははは、ルクス、叔父上なんて堅苦しい。親しみやすいように叔父くんと呼んでおくれ」

「叔父くんですか??」

ちょっと色々意味がわからないのだが、完全に筋肉ホールドされているのであまり深くツッコミを入れられない。そんな僕の様子に気付いているのか謎のまま叔父上はさらに続ける。

「そうだよ。私はずっと可愛いルクスとの約束を守るために頑張ってきたんだ。だから私の望みも叶えておくれ」

そう言って思いきり胸筋に洗濯板でゴシゴシされる洗濯もののように僕はゴリゴリされた。

ゴリゴリされる過程でほのかに香ったサンダルウッドの香り。初恋相手と同じ香りで好きな香りだけれど今は僕が洗濯もののような感じになってしまっているため、なんだから洗剤の香りに染まっていく洗濯ものの気分を味わっているようで複雑だった。

「その……叔父くん上……あの」

「ルクス、それではさかなク〇さんみたいだ。叔父くんでその後に敬称はいらない」

「誰です、その人……とりあえず、その苦しいです」

「すまない、うっかり極東の国の海を支配する魚類の王の名を口にしてしまった。そして、力加減を間違えちゃったね、可愛いルクスは小鳥さんのように繊細だから大切に扱わないといけないね」

そう言うと少し力が弱まったので離してくれるかと思ったが、何故かそのまま僕は俗にいうお姫様抱っこをされてどこかへ連れ去られそうになった。

「いや、ちょっと待ってください。僕をどこへ連れて行く気ですか??」

「国王陛下のところだよ。君と幼い頃に交わした約束を守るために行かないといけないからね」

叔父上の笑顔を見つめながら、そう言えばさっきから叔父上は僕とした約束を守るためと何度も言っているけれど、僕は叔父上に幼い頃に会った記憶はない。

10年前以降は隣国との戦争を治めるべく辺境地で戦い続けていた叔父上と、王都で王子教育は受けていたが割とぬくぬく育ってきた僕では接点がないはずなのだ。

「その……叔父くん、約束って……えっ!???」

謎の約束について聞こうと思ったが僕をお姫様抱っこにした叔父上は、人間とは思えない速度で走り出したためそのスピードによってかかるGにより何も言えないまま、ものの数秒で父上の執務室前にやってきてしまった。

ちなみに僕の部屋からふたつほど練が離れているはずなので、執務室にはいつもなら5分程度はかかることをここに補足しておこう。

そのまま、叔父上は僕をお姫様抱っこしたまま執務室へ入ってしまった。

「イクシオン、大義であった」

叔父上を見るなり父上は笑顔で言った。お姫様抱っこされている息子には全く触れてこない。

「はい、全ては陛下との契約のためにやり遂げました」

笑顔で答えた叔父上に、僕は小さな声で聞いた。

「叔父くん、契約ってなんですか??」

その言葉に、聞こえたらしく父上が静かに答えた。

「10年前に起こった戦争を終結させたならなんでもひとつ褒美を与えるというものだ」

「なるほど……」

戦争を終結させた救国の英雄になった叔父はどんな地位や名誉を望むのかと考えたが、その望みはとんでもないものだった。

「はい、そのためにこの10年戦に明け暮れました。国王陛下、いえ、兄上。私の望みはただひとつ、ルクスを私の花嫁として迎えたいのです」
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