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36.義弟は兄に歪んだ想いを抱いていた(志鶯視点)
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『志鶯』
自分の記憶の一番最初に浮かぶのは自分の名前を呼んでくれた時の柔らかく美しいその人の横顔。
(兄さん……)
オレは兄さんが一方的に好きだ。どうしてそうなったのかはわからない。
けれど、物心ついた時には兄さんに対して恋愛感情で好きだと自覚した。
ただ、それを明かすことは出来なかった。兄さんは異性が恋愛対象だから。
兄さんは知らないだろうけど兄さんが居ない日にこっそり兄さんの部屋に入って兄さんの香りがするベッドに寝転んだり、兄さんの下着をこっそり盗んだりしていた。悪いことだとわかっていたけどどうしてもやめられなかった。
しかし、家庭環境的に兄さんにとってオレは憎い存在だったことはだいぶ後に知ることになった。
両親はオレのことは可愛がったがほっとくといつも兄さんは蚊帳の外にされていた。
だから、兄さんが悲しいのが嫌で兄さんを家族の輪に誘ったけれど、いつも複雑な笑みを浮かべられたのを覚えている。
後に、オレが居る時は両親はあまりあからさまには兄さんに悪いことはしなかった 。だから、オレが兄さんを家族の輪に入れたなら兄さんも家族にとけこめると信じていた。それが兄さんを傷つけているとも気付かずに……。
そして、兄さんが家族にどう扱われていたかという恐ろしい事実は、ある日、突然眼前に晒された。兄さんが一族から絶縁されたと父に言われたのだ。
「どうして、兄さんが家から追い出されないといけないんだ!!」
そう叫んだ時、父はいつものように兄さんと同じ形をした瞳を優しく細めて言った。
「志鶯、私はお前にこの家を継いで欲しいんだよ。それに志鶴、あの出来損ないは我が家を継ぐにはふさわしくないんだ」
父はいつも、兄さんに高望みしていたのは知っていた。けれど、オレはそれは跡取りとして兄さんに期待しているのだと思っていたが違かったらしい。
「そんなはずない、兄さんはオレよりずっと賢い人だったはずだ。それなのに……」
そう口にした時の父の目は見たことがないほど冷たいもので言葉に詰まる。
そんなオレに父は続けた。
「なんにせよ、もうあいつは居ない。跡取りはお前だけなんだよ」
再び優しく微笑んだ父の変貌に寒い物を感じながらもそれ以上は何も言えなかった。
兄さんが家を出て3度目の季節が過ぎた。父に隠れてオレは兄さんを興信所を使い探し出した。
すると、ある地方都市の会社に兄さんが勤めていることを知った。
兄さんに会いたいと思って何度か会社の外で待ち伏せをしたが兄は会社から出てくることがなかった。
最初は勘づかれたかとも思ったが、すぐにそれが違うと知った。
世間知らずの兄さんはブラック企業で働いていたのだ。
博士号まで取得した優秀な兄さんが悪いやつにボロボロにされている。
それが許せず、証拠を集めて企業を訴えてやろうと考えた。
証拠を集めもうついに全てが明るみに出来ると思った時、兄さんが会社から忽然と姿を消した。
その日は兄さんの誕生日で、オレは証拠とケーキや料理を準備して見つけ出した兄さんの家で待っていたのに兄さんは永遠に消えてしまったのだ。
それから、オレは荒んだ。
自身の仕事でもミスが増えたし、同じタイミングで父のオレに対する態度があからさまに変わった。
まるで抜け殻にでもなったみたいに仕事にも家族にも関心を示さなくなった。
そうして、急に隠居すると言い残して会社も何もかもオレに押し付けて消えてしまった。
しかし、その会社の状況が最悪で、兄さんを探す余裕もないほど追い詰められていった。
ある日、ボロボロになりながら兄さんの残したスマホの中身を見て涙に暮れていた時、突然光がオレを包んだ。
『志鶯』
そう懐かしい兄さんのような優しい声に呼ばれた気がした。
「兄さん……!!」
その光の先に兄さんが居る。そう思ったら怖くなかった。
オレの予測通り兄さんはそこに居た。今度こそ兄さんを手に入れたい。
「何がなんでも兄さんに再会してみせる!!」
力強くオレは決意したが、この後とんでもない事態になるなんてまだ知る由もなかった。
自分の記憶の一番最初に浮かぶのは自分の名前を呼んでくれた時の柔らかく美しいその人の横顔。
(兄さん……)
オレは兄さんが一方的に好きだ。どうしてそうなったのかはわからない。
けれど、物心ついた時には兄さんに対して恋愛感情で好きだと自覚した。
ただ、それを明かすことは出来なかった。兄さんは異性が恋愛対象だから。
兄さんは知らないだろうけど兄さんが居ない日にこっそり兄さんの部屋に入って兄さんの香りがするベッドに寝転んだり、兄さんの下着をこっそり盗んだりしていた。悪いことだとわかっていたけどどうしてもやめられなかった。
しかし、家庭環境的に兄さんにとってオレは憎い存在だったことはだいぶ後に知ることになった。
両親はオレのことは可愛がったがほっとくといつも兄さんは蚊帳の外にされていた。
だから、兄さんが悲しいのが嫌で兄さんを家族の輪に誘ったけれど、いつも複雑な笑みを浮かべられたのを覚えている。
後に、オレが居る時は両親はあまりあからさまには兄さんに悪いことはしなかった 。だから、オレが兄さんを家族の輪に入れたなら兄さんも家族にとけこめると信じていた。それが兄さんを傷つけているとも気付かずに……。
そして、兄さんが家族にどう扱われていたかという恐ろしい事実は、ある日、突然眼前に晒された。兄さんが一族から絶縁されたと父に言われたのだ。
「どうして、兄さんが家から追い出されないといけないんだ!!」
そう叫んだ時、父はいつものように兄さんと同じ形をした瞳を優しく細めて言った。
「志鶯、私はお前にこの家を継いで欲しいんだよ。それに志鶴、あの出来損ないは我が家を継ぐにはふさわしくないんだ」
父はいつも、兄さんに高望みしていたのは知っていた。けれど、オレはそれは跡取りとして兄さんに期待しているのだと思っていたが違かったらしい。
「そんなはずない、兄さんはオレよりずっと賢い人だったはずだ。それなのに……」
そう口にした時の父の目は見たことがないほど冷たいもので言葉に詰まる。
そんなオレに父は続けた。
「なんにせよ、もうあいつは居ない。跡取りはお前だけなんだよ」
再び優しく微笑んだ父の変貌に寒い物を感じながらもそれ以上は何も言えなかった。
兄さんが家を出て3度目の季節が過ぎた。父に隠れてオレは兄さんを興信所を使い探し出した。
すると、ある地方都市の会社に兄さんが勤めていることを知った。
兄さんに会いたいと思って何度か会社の外で待ち伏せをしたが兄は会社から出てくることがなかった。
最初は勘づかれたかとも思ったが、すぐにそれが違うと知った。
世間知らずの兄さんはブラック企業で働いていたのだ。
博士号まで取得した優秀な兄さんが悪いやつにボロボロにされている。
それが許せず、証拠を集めて企業を訴えてやろうと考えた。
証拠を集めもうついに全てが明るみに出来ると思った時、兄さんが会社から忽然と姿を消した。
その日は兄さんの誕生日で、オレは証拠とケーキや料理を準備して見つけ出した兄さんの家で待っていたのに兄さんは永遠に消えてしまったのだ。
それから、オレは荒んだ。
自身の仕事でもミスが増えたし、同じタイミングで父のオレに対する態度があからさまに変わった。
まるで抜け殻にでもなったみたいに仕事にも家族にも関心を示さなくなった。
そうして、急に隠居すると言い残して会社も何もかもオレに押し付けて消えてしまった。
しかし、その会社の状況が最悪で、兄さんを探す余裕もないほど追い詰められていった。
ある日、ボロボロになりながら兄さんの残したスマホの中身を見て涙に暮れていた時、突然光がオレを包んだ。
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そう懐かしい兄さんのような優しい声に呼ばれた気がした。
「兄さん……!!」
その光の先に兄さんが居る。そう思ったら怖くなかった。
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