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目が覚めるとルイ様の綺麗な顔が視界に入る。
「おはよう」
「おはようございます」
ルイ様はベッド横に椅子を持ってきて座っていて、手には本を持っていた。
「怖い夢は見なかった?」
「はい。あのあとは大丈夫でした」
「それは良かった。
じゃあ朝食にしようか。広間で待ってるね」
「あっ、ルイ様」
「ん?」
「ありがとうございます。きっとルイ様が居てくれたおかげで、怖い夢を見なかったんだと思うんです」
一昨日もみんなと寝た時は怖い夢は見なかったし、ルイ様が居てくれる安心感みたいなものは大きいと思う。
「私にそんな力があったとは。どういたしまして」
「すぐに支度して向かいますね」
「ゆっくりでいいよ。待ってる」
ルイ様は笑顔でそう言って部屋を出ていき、入れ替わりでお世話係さんが入ってくる。
「おはようございます。
ご主人様と一緒だったんですね」
「おはようございます。
昨夜、怖い夢を見て無意識に魔法を使いそうだった私を止めてくれたんです。それで今朝まで念の為一緒にいただけで、何もないですよ?」
「何も、とは?」
「……いえ、なんでもないです」
本当にわからなくて聞いているのかわからないから、なんとも言えない……。
「ただ私は、ご主人様がサラ様をパートナーに選んでくださるのであればいいなと思っています」
「はい?」
「恐らく皆そう思っています」
「いやいや、ルイ様はそんなこと全く考えていないと思いますよ?」
「そうでしょうか。私から見たところ、ご主人様はサラ様を好いているように思えます」
「それは普通に人として好きという感じなのでは?」
「そうなのでしょうか」
「お世話係さんは、なぜ私とルイ様がパートナーになることを望んでいるんですか?」
「ご主人様はご両親を亡くされてから、ずっと先立たれるばかりでしたし、そうなることを理解しているために誰とでも一定以上の距離を保っていたと思います。
けれどサラ様とはそれ以上に深い仲のように見えますし、サラ様の魔力量であれば、ルイ様も安心して一緒に居られるのではないかと思いまして」
前々から思っていたけど、私の魔力量ってそんなに多いんだろうか。私も感じられたらいいのに。
「パートナーうんぬんは一旦置いておくとして、私はルイ様より先に死なないように頑張りたいです」
「それは是非お願いしたいですね。私達には叶わないと思いますので。
それでは支度も済みましたし、食事に参りましょうか」
「はい」
そっか。魔物だってことで忘れてたけど、魔物にも寿命はあるよね。
ずっと変わらず居るものだと思っていた。
「どうしたの?」
「えっ?」
「なにか悩み事?」
ルイ様との食事中もその事が気になって、つい態度に出てしまっていたようだ。
「ルイ様はどれだけの人と魔物を見送ってきたんだろうと思って……」
「そんなことを考えていたの?」
「はい。あと、私はルイ様より長生きしたいなって思ってました」
「この先は君が居てくれると思うと、これまでたくさんの者を送ってきたのも悪くないなと思うよ」
「あっ、でも、頑張るけど、ルイ様より長生きできるかはわからないっていうか、魔力のこと全然知らないから安易に口に出来るだけですからね」
「ふふ。うん。君なら大丈夫だよ」
「本当ですか?」
「うん、本当」
でもそうなると、次は私がルイ様みたいにひとりでいろんな人を見送っていかないといけないのかな。
「……やっぱり、ひとり残されるのも嫌です」
「じゃあ私が君より長生きしてあげる」
「それじゃあどっちもずっと逝けないですよ」
「それもいいかもしれないね」
「ずっと私といて飽きませんかね?」
「私は大丈夫だと思うけど。君は?」
「大丈夫です!なんならずっと一緒にいたいです」
「なんだか告白みたいだね?」
そう言われて、確かにそんなことを言ってしまったと思って焦る。
ずっと一緒にいたいっていうのは嘘ではないけど、そういうつもりはなかった。
「……あっ、いや、そんなつもりはない……って言うのも失礼か……えっと……」
「ごめんごめん。少しからかっただけ。
君がそう言ってくれるのは嬉しいけど、一緒に居たいと思う人を見つけたら、私の元を離れてもいいからね」
まるでそれが当たり前かのような口ぶり。
ルイ様は私のことを考えてそう言ってくれてるのか、正直なところ私のことが邪魔なのかはわからない。でもそんなふうに言われるのは寂しい。
「……はい」
いい返しが思い浮かばなくて、頷くしかなかった。
そんな私の気持ちを察したのか、ルイ様は優しい声で続ける。
「追い出したくて言ったんじゃないよ?ただ君に選択肢を残しておいてあげたかったんだ。
もちろんずっとここに居てくれてもいい」
「……ルイ様は」
「うん」
「今までにこの人と一緒に居たいと思った人はいましたか?」
「君が聞きたいであろう意味で言うと、いなかったかな」
「それはやっぱり寿命とかが関係してるんですか?」
「うーん。それもあるとは思うけど、ただ誰もそういう意味では好きにならなかったってだけ。
前にも言ったけど、そもそもそういうの、よく分かってないんだ」
別に一緒に居ると言ったって、必ずしもパートナーである必要はない。けど、自分の気持ちに気づきつつあるから、そうもいかなくなるんだろうな……。
「ごめんなさい、変なこと聞いて」
「構わないよ。
気になったことはなんでも聞いてくれたらいいから」
「おはよう」
「おはようございます」
ルイ様はベッド横に椅子を持ってきて座っていて、手には本を持っていた。
「怖い夢は見なかった?」
「はい。あのあとは大丈夫でした」
「それは良かった。
じゃあ朝食にしようか。広間で待ってるね」
「あっ、ルイ様」
「ん?」
「ありがとうございます。きっとルイ様が居てくれたおかげで、怖い夢を見なかったんだと思うんです」
一昨日もみんなと寝た時は怖い夢は見なかったし、ルイ様が居てくれる安心感みたいなものは大きいと思う。
「私にそんな力があったとは。どういたしまして」
「すぐに支度して向かいますね」
「ゆっくりでいいよ。待ってる」
ルイ様は笑顔でそう言って部屋を出ていき、入れ替わりでお世話係さんが入ってくる。
「おはようございます。
ご主人様と一緒だったんですね」
「おはようございます。
昨夜、怖い夢を見て無意識に魔法を使いそうだった私を止めてくれたんです。それで今朝まで念の為一緒にいただけで、何もないですよ?」
「何も、とは?」
「……いえ、なんでもないです」
本当にわからなくて聞いているのかわからないから、なんとも言えない……。
「ただ私は、ご主人様がサラ様をパートナーに選んでくださるのであればいいなと思っています」
「はい?」
「恐らく皆そう思っています」
「いやいや、ルイ様はそんなこと全く考えていないと思いますよ?」
「そうでしょうか。私から見たところ、ご主人様はサラ様を好いているように思えます」
「それは普通に人として好きという感じなのでは?」
「そうなのでしょうか」
「お世話係さんは、なぜ私とルイ様がパートナーになることを望んでいるんですか?」
「ご主人様はご両親を亡くされてから、ずっと先立たれるばかりでしたし、そうなることを理解しているために誰とでも一定以上の距離を保っていたと思います。
けれどサラ様とはそれ以上に深い仲のように見えますし、サラ様の魔力量であれば、ルイ様も安心して一緒に居られるのではないかと思いまして」
前々から思っていたけど、私の魔力量ってそんなに多いんだろうか。私も感じられたらいいのに。
「パートナーうんぬんは一旦置いておくとして、私はルイ様より先に死なないように頑張りたいです」
「それは是非お願いしたいですね。私達には叶わないと思いますので。
それでは支度も済みましたし、食事に参りましょうか」
「はい」
そっか。魔物だってことで忘れてたけど、魔物にも寿命はあるよね。
ずっと変わらず居るものだと思っていた。
「どうしたの?」
「えっ?」
「なにか悩み事?」
ルイ様との食事中もその事が気になって、つい態度に出てしまっていたようだ。
「ルイ様はどれだけの人と魔物を見送ってきたんだろうと思って……」
「そんなことを考えていたの?」
「はい。あと、私はルイ様より長生きしたいなって思ってました」
「この先は君が居てくれると思うと、これまでたくさんの者を送ってきたのも悪くないなと思うよ」
「あっ、でも、頑張るけど、ルイ様より長生きできるかはわからないっていうか、魔力のこと全然知らないから安易に口に出来るだけですからね」
「ふふ。うん。君なら大丈夫だよ」
「本当ですか?」
「うん、本当」
でもそうなると、次は私がルイ様みたいにひとりでいろんな人を見送っていかないといけないのかな。
「……やっぱり、ひとり残されるのも嫌です」
「じゃあ私が君より長生きしてあげる」
「それじゃあどっちもずっと逝けないですよ」
「それもいいかもしれないね」
「ずっと私といて飽きませんかね?」
「私は大丈夫だと思うけど。君は?」
「大丈夫です!なんならずっと一緒にいたいです」
「なんだか告白みたいだね?」
そう言われて、確かにそんなことを言ってしまったと思って焦る。
ずっと一緒にいたいっていうのは嘘ではないけど、そういうつもりはなかった。
「……あっ、いや、そんなつもりはない……って言うのも失礼か……えっと……」
「ごめんごめん。少しからかっただけ。
君がそう言ってくれるのは嬉しいけど、一緒に居たいと思う人を見つけたら、私の元を離れてもいいからね」
まるでそれが当たり前かのような口ぶり。
ルイ様は私のことを考えてそう言ってくれてるのか、正直なところ私のことが邪魔なのかはわからない。でもそんなふうに言われるのは寂しい。
「……はい」
いい返しが思い浮かばなくて、頷くしかなかった。
そんな私の気持ちを察したのか、ルイ様は優しい声で続ける。
「追い出したくて言ったんじゃないよ?ただ君に選択肢を残しておいてあげたかったんだ。
もちろんずっとここに居てくれてもいい」
「……ルイ様は」
「うん」
「今までにこの人と一緒に居たいと思った人はいましたか?」
「君が聞きたいであろう意味で言うと、いなかったかな」
「それはやっぱり寿命とかが関係してるんですか?」
「うーん。それもあるとは思うけど、ただ誰もそういう意味では好きにならなかったってだけ。
前にも言ったけど、そもそもそういうの、よく分かってないんだ」
別に一緒に居ると言ったって、必ずしもパートナーである必要はない。けど、自分の気持ちに気づきつつあるから、そうもいかなくなるんだろうな……。
「ごめんなさい、変なこと聞いて」
「構わないよ。
気になったことはなんでも聞いてくれたらいいから」
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