お師匠様は自由すぎる

星野 夜空

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お師匠様は渦中へ

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「いやはやしかし、お前が弟子を取るとはな」

 天変地異ものだと朗らかに笑う様子にイラッときて回し蹴りを入れる。悶絶してるが知ったことではないと先に道を歩いた。
 久々に俺の家へ逃げたいと言ったらこれだ、全く。同情の余地なし。そう思うのは俺だけだったようで、手加減してくれと叫ばれた。知らん。

「なあ、いい加減町に住んだらどうだ?」
「噂になって出ていけと言わされた奴のセリフじゃないな」

 ぐう、と押し黙る国王。変にウマがあった関係でここまでの気さくさとなったが、当時はそれが仇となった。一国の王が庇っていい範囲を逸脱していないかと疑問視されたらな。まあ、俺も俺で自分の非常識具合は分かってる。仕方ないと薄ら笑いして去ったのはもう遠い記憶の彼方だ。

「だが、あの子はそれで良しとしているのか?」
「元々戦争に駆り出されてた兵士だ、どこで何があるか分からん」
「なるほど、訳ありだと思ったがそういうことか。……面倒が嫌いなお前らしくないな」
「あぁ、まあな。俺自身どうかと思ったが……まだ、人の心はあったらしい」

 そうか。押し黙る国王へ手を差し伸べる。そろそろ距離的にも丁度いいだろう。黒い噂のある領主の家へ跳ぼうとすると待ったがかけられた。
 なんだ、と思うと何かを頼む目をされた。あぁ、またか。こいつは、国王を担うだけの黒さがある。光だけでは王なんて担えない。必ずどこかに闇があるものだ。どっかの国は暗部を飼ってるなんてことがあるくらいだからな。
 だから──言いたいことくらい分かる。

「悪評の一つや二つ、増えたくらいでどうということはない。お前を適当な部屋に送ったら表門からかき乱したらいいか?」
「……すまない。お前はそんなことに使われる奴じゃないと分かってるのだが」
「良いさ。それが俺だ」

 後ろ暗い奴らは何故か書庫に証拠をためておく。だから今回もそうだろうと書斎部屋らしいところへ跳べば、早速奴は探り始めた。念のため扉に防音の陣を描いておき、予定通り表門へ跳んだ。
 門番がざわめくものの、俺が例の魔術師と分かったのだろう。腫れ物扱いしつつ主人のいる部屋へ案内してくれた。うん、素直だ。そういう奴らは嫌いじゃない。

「ようこそ、我が屋敷へ魔術師殿。されど何故ここに、いかがな用で?」
「なに、ちょっとここを爆破したくなっただけだ」
「は⁉︎ いやいや、冗談はおよしください。一体何の用で?」
「なに、ここを爆発させたいのさ」

 こんな風に、と部屋の窓に一通りヒビを入れると顔色を悪くさせながらも気丈に振る舞う領主。うんうん、そういうの俺嫌いじゃない。
 だから壊したくなるんだ。

「まあ、だが俺も鬼じゃない。貯めに貯めた財宝を一部分もらえたら許してやろう」
「……魔術師殿、それは」
「俺の耳は地獄耳。悪いことは同類の耳に入る、てな」

 嘘だが。あいつから聞いただけだ。それでも効くということはそういうことだろう。おもむろに机へ寄ったかと思うと、こちらに向けて袋を投げてきた。ふむ、これが着服してた金か。それともこいつの財産の一部か。どっちにせよ俺はここまでだ。

「確かに。じゃあな」

 置き土産に窓を割って書斎部屋へ跳び戻れば、いい顔をした国王がいた。手には証拠品。こっちも万全なようだ。
 扉の陣を消し城へ戻れば、王はすぐさま影武者を呼んだ。今回の件についてカタをつけるつもりらしい。バタバタと動き出し始めた奴らを尻目に帰ろうとすれば、肩に手を置かれた。

「奴の家で何かが壊れる音がした。まさか庭を滅茶苦茶にしたなんてないよな?」
「失敬な。窓を割っただけだ」

 この国でガラスは貴重だ。だからこそポーションの器も木や鉄で出来ていることが多い。窓がガラスで出来た屋敷を壊すことは、それすなわち被害額が膨大に跳ね上がる。なんてことをしてくれたと思われても仕方ないだろう。

「そんな顔するな。これで何とかなるだろう」

 先ほど貰った袋を渡せば足りるか? と顔をされる。知らんが、俺の予想が正しければ宝石といったものになっているはずだ。内乱の多いこの国では、金より物が優先されることが多いからな。
 中を見れば良いだろうと促して見たが、無言で懐にしまったところなあたり、問題ないだろう。

「これでまた、一つ増えるな」
「なに、今更だ」

 すまない。の一言は聞かなかったことにした。
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