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本編
事は思った以上に
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この国初めての攻撃系統に適性のある女性というのは、思っていたよりも価値があるらしくてそれを利用したい人が多い、ということ。国人は身分に関係のない仕事とはいえ、実際は気にしないと回らない業務が多いこと。王宮の様子や国人の仕事など、様々な状態を憂いている上層部は、私をダシにして一網打尽にする計画があること。その際、私がどうなるか分からないこと。
ざっくりと説明されたことをまとめれば、こんな感じのものだ。噂話程度のものから上層部では決定事項とされていることまで幅広く教えてもらえた反面、何が正しくて間違っているかは教えてくれたトラクル夫妻にも真偽はつかないとも。
「もちろん、これら全てが噂程度のことなら私達も無視していたでしょう。重要性と機密性、更にいうなら王宮内勤務。貴方がた平民の立場からすれば、月に入る給料も離しがたいことは承知しているわ。……それでも、内容が内容です。噂でも知っていた方が良いこともあります」
まして今回の話が本当だとすれば、国人になった場合の最悪な未来は存命の危機。良くて他の人以上に利用される立場と業務量の多さ。
良い方ならともかく、最悪の最悪が自分の命とか笑えない。それは確かに知っていないと大変なことになっていただろう。可能性の低い高いに関わらず。
「貴方は、私達が大事にしている子の大切な友人で──私達家族を救ってくれた方。なのに上の事情で、このままなら消えてしまうかもしれないなんて嫌なのよ」
何よりマリが悲しむ姿を、もう見たくない。そんな気持ちが聞こえた気がしたけど、この二人なら思ってそう。
それに私も死にたくはない。人生捨てたものじゃないって思えたのに、死ぬなんてまっぴらごめんだもの。
……もしかして前に進路を聞かれた時、先生知ってたのかな。知ってそうだな。だから聞いてきた、のだとしたらちょっと許しがたい。
私が一人頭の中でぐるぐる考えていると、夫人の言葉をトラクル爵が引き継いだ。
「全てはラナ嬢が決めることでもあるが、このまま国人になれば、おそらく通常より遥かに働かされるだろう。軍人として、その希少性からして。その上、貴族からのあしらい方を知らぬ平民とあれば何が起きるか分からんものだ。王宮外で起きたことに関して、国は責任を取れないからな。
たとえ腕に覚えがあるとしても、魔力で男女差を埋めたとしても、闇討ちされたらそれで終わりだ。即刻とは言わないまでも、国から──国人になることから、離れた方が良い」
その言葉がどこまで正しいのか、いや、そもそもどこまでの情報が正しくて間違っているのか分からないのに、じゃあなりませんとは言えない。だからこそ言葉に困る。
将来、私は国のために働くのだろうと思った。それは儀式を受けたあの頃、漠然とだけどそう感じたことでもある。まさかそれが、考えていたこと以上に危ない道になっているなんて思わなかった。
まして、それ以外の道がある今なんて想像も出来なかった。ドーレのように身分ある立場ならともかく、私にはそんなしがらみなんてない人間でもあるわけだし。
「……考える時間は、あるのでしょうか」
精一杯考えた結果、そんなありきたりな、先延ばしにすることしか聞けなかった。おまけに回答は分からない、と、なんとも心もとない答えでもあった。
ざっくりと説明されたことをまとめれば、こんな感じのものだ。噂話程度のものから上層部では決定事項とされていることまで幅広く教えてもらえた反面、何が正しくて間違っているかは教えてくれたトラクル夫妻にも真偽はつかないとも。
「もちろん、これら全てが噂程度のことなら私達も無視していたでしょう。重要性と機密性、更にいうなら王宮内勤務。貴方がた平民の立場からすれば、月に入る給料も離しがたいことは承知しているわ。……それでも、内容が内容です。噂でも知っていた方が良いこともあります」
まして今回の話が本当だとすれば、国人になった場合の最悪な未来は存命の危機。良くて他の人以上に利用される立場と業務量の多さ。
良い方ならともかく、最悪の最悪が自分の命とか笑えない。それは確かに知っていないと大変なことになっていただろう。可能性の低い高いに関わらず。
「貴方は、私達が大事にしている子の大切な友人で──私達家族を救ってくれた方。なのに上の事情で、このままなら消えてしまうかもしれないなんて嫌なのよ」
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それに私も死にたくはない。人生捨てたものじゃないって思えたのに、死ぬなんてまっぴらごめんだもの。
……もしかして前に進路を聞かれた時、先生知ってたのかな。知ってそうだな。だから聞いてきた、のだとしたらちょっと許しがたい。
私が一人頭の中でぐるぐる考えていると、夫人の言葉をトラクル爵が引き継いだ。
「全てはラナ嬢が決めることでもあるが、このまま国人になれば、おそらく通常より遥かに働かされるだろう。軍人として、その希少性からして。その上、貴族からのあしらい方を知らぬ平民とあれば何が起きるか分からんものだ。王宮外で起きたことに関して、国は責任を取れないからな。
たとえ腕に覚えがあるとしても、魔力で男女差を埋めたとしても、闇討ちされたらそれで終わりだ。即刻とは言わないまでも、国から──国人になることから、離れた方が良い」
その言葉がどこまで正しいのか、いや、そもそもどこまでの情報が正しくて間違っているのか分からないのに、じゃあなりませんとは言えない。だからこそ言葉に困る。
将来、私は国のために働くのだろうと思った。それは儀式を受けたあの頃、漠然とだけどそう感じたことでもある。まさかそれが、考えていたこと以上に危ない道になっているなんて思わなかった。
まして、それ以外の道がある今なんて想像も出来なかった。ドーレのように身分ある立場ならともかく、私にはそんなしがらみなんてない人間でもあるわけだし。
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