お師匠様は自由すぎる

星野 夜空

文字の大きさ
1 / 1

私のお師匠様

しおりを挟む
「お師匠様! いい加減ご飯を食べに出てきてください、実験や研究はその後でも出来ましょう!」

 ドアを勢いよく開けたせいでミシッと音がしましたが知りません。お夕飯の時間はとっくに過ぎている上に毎度のことだからと先に食べ、ついでにお風呂も終わらせました。そんな時間になっても研究室と化したお部屋から出てこないお師匠様が悪いです。

「うるさいなぁ、今良いところなんだ。それの区切りがついたら行くから」
「そう言って来た試しがないですよね?」

 全く、とため息をついてもケラケラ笑いながら実験器具や何やら書いてある紙から目は離れていません。危険な薬品を使っている可能性もあるので、無理に奪おうと出来ないのが悔しいです。
 これで巷では、それこそ様々な意味を含めて有名な魔術師なのにもったいないです。主に中身のことで。見た目は童顔で女性の平均身長と同じくらい、というのがコンプレックスらしいですが、小柄な私からすると十分高いし可愛らしいです。羨ましいです。女の敵です。

「仕方ないなぁ、可愛い弟子が迎えにきたんじゃあ止めるしかない」

 さっきの呼びかけに対しても答えなかったのはどこの誰ですか。言葉が喉まで出かかってやめました。多分あの時の師匠は、呼ばれたことすら覚えてないでしょうから。
 カチャカチャと片付け始めたのを横目に部屋の中を見渡します。あちらこちらに本棚に収まりきらなかった本と、間に紙が所々挟まれたバベルの塔がいくつか出来上がっています。
……書庫から取り出してそのままになっているのでしょうね。これは今の研究がひと段落したら片付けなければ。

「ああ、片付けるならそこの一角以外にしてくれよ? あと紙は燃やして処分してくれ」
「……考えてることを読まないでもらえませんかねえ」
「お前が分かりやすいだけだ」

 いつの間にか隣にきてぽんぽんと頭を叩かれた、と思ったらぐしゃぐしゃに撫で回されました。折角梳かしたというのに、またやり直しですか……。この悪魔め。憎みますよ。
 ジトーっと睨んで意思表示してもどこ吹く風。今日の夕飯は何だと聞いてくる始末です。それにきちんと答える私も私だと思いますが。
 そもそも私自身、どうしていつもお師匠様の面倒を見てしまうのでしょう。そろそろ独り立ち出来る腕前だと自他共に認められている上、先日お師匠様からも太鼓判を押してもらいました。
 一瞬浮かんだ考えにいやいやないないと思います。いくら何でもそこまでお師匠様は馬鹿じゃない、はず。
『最悪にして災厄の魔術師』でも、世界を滅ぼすレベルの魔法開発なんてしないでしょう。そんなもの創ったら本人もお陀仏ですからね、うんうん。
 とうの本人は暢気に冷めたご飯を食べ始めました。相変わらず辛くて不味い、の一言付きで。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

身体交換

廣瀬純七
SF
大富豪の老人の男性と若い女性が身体を交換する話

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

離婚した妻の旅先

tartan321
恋愛
タイトル通りです。

乙女ゲームは始まらない

まる
ファンタジー
きっとターゲットが王族、高位貴族なら物語ははじまらないのではないのかなと。 基本的にヒロインの子が心の中の独り言を垂れ流してるかんじで言葉使いは乱れていますのでご注意ください。 世界観もなにもふんわりふわふわですのである程度はそういうものとして軽く流しながら読んでいただければ良いなと。 ちょっとだめだなと感じたらそっと閉じてくださいませm(_ _)m

可愛らしい人

はるきりょう
恋愛
「でも、ライアン様には、エレナ様がいらっしゃるのでは?」 「ああ、エレナね。よく勘違いされるんだけど、エレナとは婚約者でも何でもないんだ。ただの幼馴染み」 「それにあいつはひとりで生きていけるから」 女性ながらに剣術を学ぶエレナは可愛げがないという理由で、ほとんど婚約者同然の幼馴染から捨てられる。 けれど、 「エレナ嬢」 「なんでしょうか?」 「今日の夜会のパートナーはお決まりですか?」  その言葉でパートナー同伴の夜会に招待されていたことを思い出した。いつものとおりライアンと一緒に行くと思っていたので参加の返事を出していたのだ。 「……いいえ」  当日の欠席は著しく評価を下げる。今後、家庭教師として仕事をしていきたいと考えるのであれば、父親か兄に頼んででも行った方がいいだろう。 「よければ僕と一緒に行きませんか?」

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

処理中です...