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私のお師匠様
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「お師匠様! いい加減ご飯を食べに出てきてください、実験や研究はその後でも出来ましょう!」
ドアを勢いよく開けたせいでミシッと音がしましたが知りません。お夕飯の時間はとっくに過ぎている上に毎度のことだからと先に食べ、ついでにお風呂も終わらせました。そんな時間になっても研究室と化したお部屋から出てこないお師匠様が悪いです。
「うるさいなぁ、今良いところなんだ。それの区切りがついたら行くから」
「そう言って来た試しがないですよね?」
全く、とため息をついてもケラケラ笑いながら実験器具や何やら書いてある紙から目は離れていません。危険な薬品を使っている可能性もあるので、無理に奪おうと出来ないのが悔しいです。
これで巷では、それこそ様々な意味を含めて有名な魔術師なのにもったいないです。主に中身のことで。見た目は童顔で女性の平均身長と同じくらい、というのがコンプレックスらしいですが、小柄な私からすると十分高いし可愛らしいです。羨ましいです。女の敵です。
「仕方ないなぁ、可愛い弟子が迎えにきたんじゃあ止めるしかない」
さっきの呼びかけに対しても答えなかったのはどこの誰ですか。言葉が喉まで出かかってやめました。多分あの時の師匠は、呼ばれたことすら覚えてないでしょうから。
カチャカチャと片付け始めたのを横目に部屋の中を見渡します。あちらこちらに本棚に収まりきらなかった本と、間に紙が所々挟まれたバベルの塔がいくつか出来上がっています。
……書庫から取り出してそのままになっているのでしょうね。これは今の研究がひと段落したら片付けなければ。
「ああ、片付けるならそこの一角以外にしてくれよ? あと紙は燃やして処分してくれ」
「……考えてることを読まないでもらえませんかねえ」
「お前が分かりやすいだけだ」
いつの間にか隣にきてぽんぽんと頭を叩かれた、と思ったらぐしゃぐしゃに撫で回されました。折角梳かしたというのに、またやり直しですか……。この悪魔め。憎みますよ。
ジトーっと睨んで意思表示してもどこ吹く風。今日の夕飯は何だと聞いてくる始末です。それにきちんと答える私も私だと思いますが。
そもそも私自身、どうしていつもお師匠様の面倒を見てしまうのでしょう。そろそろ独り立ち出来る腕前だと自他共に認められている上、先日お師匠様からも太鼓判を押してもらいました。
一瞬浮かんだ考えにいやいやないないと思います。いくら何でもそこまでお師匠様は馬鹿じゃない、はず。
『最悪にして災厄の魔術師』でも、世界を滅ぼすレベルの魔法開発なんてしないでしょう。そんなもの創ったら本人もお陀仏ですからね、うんうん。
とうの本人は暢気に冷めたご飯を食べ始めました。相変わらず辛くて不味い、の一言付きで。
ドアを勢いよく開けたせいでミシッと音がしましたが知りません。お夕飯の時間はとっくに過ぎている上に毎度のことだからと先に食べ、ついでにお風呂も終わらせました。そんな時間になっても研究室と化したお部屋から出てこないお師匠様が悪いです。
「うるさいなぁ、今良いところなんだ。それの区切りがついたら行くから」
「そう言って来た試しがないですよね?」
全く、とため息をついてもケラケラ笑いながら実験器具や何やら書いてある紙から目は離れていません。危険な薬品を使っている可能性もあるので、無理に奪おうと出来ないのが悔しいです。
これで巷では、それこそ様々な意味を含めて有名な魔術師なのにもったいないです。主に中身のことで。見た目は童顔で女性の平均身長と同じくらい、というのがコンプレックスらしいですが、小柄な私からすると十分高いし可愛らしいです。羨ましいです。女の敵です。
「仕方ないなぁ、可愛い弟子が迎えにきたんじゃあ止めるしかない」
さっきの呼びかけに対しても答えなかったのはどこの誰ですか。言葉が喉まで出かかってやめました。多分あの時の師匠は、呼ばれたことすら覚えてないでしょうから。
カチャカチャと片付け始めたのを横目に部屋の中を見渡します。あちらこちらに本棚に収まりきらなかった本と、間に紙が所々挟まれたバベルの塔がいくつか出来上がっています。
……書庫から取り出してそのままになっているのでしょうね。これは今の研究がひと段落したら片付けなければ。
「ああ、片付けるならそこの一角以外にしてくれよ? あと紙は燃やして処分してくれ」
「……考えてることを読まないでもらえませんかねえ」
「お前が分かりやすいだけだ」
いつの間にか隣にきてぽんぽんと頭を叩かれた、と思ったらぐしゃぐしゃに撫で回されました。折角梳かしたというのに、またやり直しですか……。この悪魔め。憎みますよ。
ジトーっと睨んで意思表示してもどこ吹く風。今日の夕飯は何だと聞いてくる始末です。それにきちんと答える私も私だと思いますが。
そもそも私自身、どうしていつもお師匠様の面倒を見てしまうのでしょう。そろそろ独り立ち出来る腕前だと自他共に認められている上、先日お師匠様からも太鼓判を押してもらいました。
一瞬浮かんだ考えにいやいやないないと思います。いくら何でもそこまでお師匠様は馬鹿じゃない、はず。
『最悪にして災厄の魔術師』でも、世界を滅ぼすレベルの魔法開発なんてしないでしょう。そんなもの創ったら本人もお陀仏ですからね、うんうん。
とうの本人は暢気に冷めたご飯を食べ始めました。相変わらず辛くて不味い、の一言付きで。
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