不死の村人(しなずのむらびと)

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1: 〈呪いの子〉

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現世が紅色に沈む黄昏時、村は燃える。

狼煙の様な黒煙が街を覆った。

村男達の死体の山に油をまき火を放つペストマスクの集団

女、子供関係なく斬り、撃ち、燃やした。

甲高く笑う不気味な声が耳に染みつく。


血の生臭さと硝煙の匂いだけが立ち込める。足元には昨日まで笑顔を見せてくれた友人の亡骸だけが転がっていた。

ポツポツ と降り出した雨は血液を滲ませ、掻き消す。

少女を守る為に我が身を盾とした少年は静かに息を引き取った。

もう、この世に未練は無い、少女は一人手首を切った。


      ― 1 ―


私は自分が誰でここが何処なのかを知らない。

冷たい石壁で囲まれた檻の隅で少女はパサパサの古いパンを齧った。少女の名はルピシア、名と言うのも酒に酔った監守の悪意によって忌嫌われる〈冒涜の始祖〉の名をつけられた。少女はそんな事知る訳もなくその名を名乗る。

産みの親は私の事を『呪いの子』と呼び奴隷商に売り飛ばした。檻馬車の中から見えた安堵の表情は今でも記憶に残っている。

薄暗い檻の中、沢山の奴隷うれのこり達は誰も私に話かけようとしない。

私が『異常』で、彼等が『正常』そんな事に気付くのに三日も要さなかった。

そんな、『異常』を含む檻の中に今日もまた一人、奴隷が増えた。

ボロ雑巾みたいなスカーフを羽織った男、檻に入れられてから三時間死んだ様に眠っている。

私達売れ残りは商品価値無しとみなされ炭鉱採掘を命じられているがもうそろ時間になる。

「オイ奴隷共、採掘の時間だ!!出て来やがれ!」。

監守の催促に重い足をあげる奴隷達、そこから生気は感じられない。足に繋がれた鎖を引きずる音がする。

皆が房を離れる中、眠る男とルピシアだけが残った。

「ねぇ……」。

返事は無い。

「ねぇねぇ…」。

されど返事は無い。

「ねぇ起きて」.

人に自ら話掛けるのは何ヶ月、いや何年振りだろう。忘れた勘を取り戻すのには時間がいる。

「ん……あれ……ここ、何処だ」。

男は目を覚ます。自らが置かれた状況が理解できていない様だ。身なりからして攫われたのだろう……そんな事を考えた。

「ここは奴隷の檻、私達は奴隷。炭鉱の採掘に行くからあなたも来て。」


「ん……そうか……じゃぁ頑張ってくれ…」。

大きなあくびを一つ適当に流す、まだ眠そうだ。

「あなたも来て連帯責任になってしまう。」

「はっ……俺がそんな事手伝って何のメリットが……あると」。

「食事が抜かれちゃう」。

次の刹那、男は大きな目を見開き跳ね起きた。

「そいつぁ大事件だ、案内しろよ、炭鉱」。

「うん、分かった」。

男とルピシアは房を抜けた。

ツギハギだらけの右腕、首から項にかけて包帯がかかり、血色の悪い表情、生きてるのが不思議な位、傷だらけだ。

「で───今更で悪いんだが、なんで俺こんな所いんの?」。

「知らないよ、そんな事、えっと……」。

「グリム、グリム・エルトダウン、浮浪の旅人」。

「何それ」。

「ん、まぁ、要は無職って事だ、お前は?」。

「私はルピシア……ということになってる」。

「何だそりゃ」。

不思議な物言いだと感じたがグリムは別に深く追求しようとはしなかった。

人と会話するのはいつぶりだろう、何だか不思議な気分だ。

「グリム君は怖く無いの?私の事」。

「はぁ?急に何だよ」。

「普通私と話す人はこの姿に怯えるから」。

スラリと伸びた金髪に隠れた長い耳、紅色の瞳、鋭く尖った八重歯、人とは異なる姿をした少女

ルピシアの顔をじっと見つめ、はっと鼻で笑った。

「大剣抱えたウルフマンにロケットモヒカンのトゲトゲ肩パットがそこら中に歩いてんのに何処を怖がれと、お前みたいなの何処にでもいるぜ、確か獣人って言うんだろ?気にすんなよ」。

きっと話の本質はそこには無い、でもその言葉は彼女に掛けられた初めての優しい言葉だった。



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