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2: 鼓動
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この世界のあるゆる事象は全てが突発的で予知する事なんか出来やしない。
明日の朝食がベーコンマフィンだとか授業中に貧血を起こして倒れるとか、きっと今日の僕は考えてもみなかっただろう。
きっと昨日の僕もそうだ、今日の僕が腹を貫かれて今にも死にそう……なんて考えやしない。
❖ ❖ ❖ ❖ ❖
古代精霊学、主に妖精の幼体の研究を学ぶ第二生の日暮 ナギサは授業に必要だと教授に頼まれた実験道具を朝早くに運んでいた。
こんな日も登りきらない朝、夜泊まりしているもの以外ほぼ無人とも言える校舎。一変にやってしまおうと少し無理がある量のダンボールを抱えて歩いた。
天高き天井を見上げた。まだ少し肌寒くダンボールの重みでうっ血した右手のひらを見つめながらため息を一つ
― 暖かい、ココアが飲みたいな ―
ナギサは嘆いた。
― 1 ―
本堂ですらほぼ無人、それに加えて古代精霊学なんていうマニアな学科は昼間でも人は少ない。
そんな朝早くに人とぶつかる。男はクロムと名乗りオルフェン教授に用があるとのこと。
男は荷物を半分持つ代わりに教授の元まで案内してくれという。特に断る理由も無く僕は彼の提案に乗ることにした。
「とても大きな学校だね、迷ってしまったよ」。
「そうですね、今でも時々自分がどこにいるのか分からなくなる時があります」。
(入り口にパンフレットが置いてあった筈なんだけどな…)
「クロムさんは教授に何の御用事で? 」
「ちょっと世間話をしにね、彼とはちょっとした知り合いなんだ」。
へぇ…こんな時間に。
「ヒグラシ少年はその名前……日の国が出生かな?」。
「はい精霊学に前々から興味があって遥々この国に来ました」。
「ほう、精霊学とはまたマニアックな学問だね、何か惹かれるものでもあったのかい?……っと、ゆっくり話を聞きたいものだがお迎えが来たようだ」。
目の前にはオルフェン教授の姿があった。研究室から外に出る所を見るのは初めてだ。
「すまないな、日暮君彼は私の客なんだ。」
「日暮少年、荷物は何処までだったかな?」
気づけばナギサの目的地である実験場の前にいた。
「あ、この教室です。ありがとうございました。」
「僕の方も助かったよありがとう、君とはまたゆっくりと話がしたいよ」。
「はい、又いつかお時間がよろしければ」。
お辞儀を交わし二人はその場を離れた。
一帯こんな時間にどんな用なのだろう、ナギサには一物の疑問だけが残った。
❖ ❖ ❖ ❖ ❖ ❖
「何の話をしてた?」。
「日暮少年かい?別になんのたわいの無い世間話さ、良い少年だね彼」。
「そうだな、良い少年だよ彼は…」。
何か含みのあるオルフェンの言い方が引っかかった。
「彼になにか?」。
「あぁ……彼は【御伽の悲劇】の生き残りさ。」
【御伽の悲劇】その名前をここで聞くとは思ってもみなかった。
「へぇ……彼が…俄然興味が湧いてきたよ彼に」口に笑みを浮かべた。
幾許かの間を置きオルフェンは鉄製のアタッシュケースを机の上に置いた。
「君達はこれを回収に来たのだろう、彼に余計なちょっかいを加えるのは辞めてもらえないか」。
「はっはっは、別に何もしませんよオルフェンさん」。
「君には仮があるから悪くは言いたくないが説得力が皆無だぞ…」。
「またまたぁ、ひどいなぁオルフェンさん、世界一口が固い男だよ僕は」。
口の固い等という素振りを一切見せないクロムの姿にオルフェンは深々とため息をついた。
眉をしかめながらもオルフェンはアタッシュケースの鍵を開く。
「へぇ、これが……― 古代の神臓器 ―」。
そこには自ら鼓動を成す翠色の結晶が置いてあった。
明日の朝食がベーコンマフィンだとか授業中に貧血を起こして倒れるとか、きっと今日の僕は考えてもみなかっただろう。
きっと昨日の僕もそうだ、今日の僕が腹を貫かれて今にも死にそう……なんて考えやしない。
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古代精霊学、主に妖精の幼体の研究を学ぶ第二生の日暮 ナギサは授業に必要だと教授に頼まれた実験道具を朝早くに運んでいた。
こんな日も登りきらない朝、夜泊まりしているもの以外ほぼ無人とも言える校舎。一変にやってしまおうと少し無理がある量のダンボールを抱えて歩いた。
天高き天井を見上げた。まだ少し肌寒くダンボールの重みでうっ血した右手のひらを見つめながらため息を一つ
― 暖かい、ココアが飲みたいな ―
ナギサは嘆いた。
― 1 ―
本堂ですらほぼ無人、それに加えて古代精霊学なんていうマニアな学科は昼間でも人は少ない。
そんな朝早くに人とぶつかる。男はクロムと名乗りオルフェン教授に用があるとのこと。
男は荷物を半分持つ代わりに教授の元まで案内してくれという。特に断る理由も無く僕は彼の提案に乗ることにした。
「とても大きな学校だね、迷ってしまったよ」。
「そうですね、今でも時々自分がどこにいるのか分からなくなる時があります」。
(入り口にパンフレットが置いてあった筈なんだけどな…)
「クロムさんは教授に何の御用事で? 」
「ちょっと世間話をしにね、彼とはちょっとした知り合いなんだ」。
へぇ…こんな時間に。
「ヒグラシ少年はその名前……日の国が出生かな?」。
「はい精霊学に前々から興味があって遥々この国に来ました」。
「ほう、精霊学とはまたマニアックな学問だね、何か惹かれるものでもあったのかい?……っと、ゆっくり話を聞きたいものだがお迎えが来たようだ」。
目の前にはオルフェン教授の姿があった。研究室から外に出る所を見るのは初めてだ。
「すまないな、日暮君彼は私の客なんだ。」
「日暮少年、荷物は何処までだったかな?」
気づけばナギサの目的地である実験場の前にいた。
「あ、この教室です。ありがとうございました。」
「僕の方も助かったよありがとう、君とはまたゆっくりと話がしたいよ」。
「はい、又いつかお時間がよろしければ」。
お辞儀を交わし二人はその場を離れた。
一帯こんな時間にどんな用なのだろう、ナギサには一物の疑問だけが残った。
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「何の話をしてた?」。
「日暮少年かい?別になんのたわいの無い世間話さ、良い少年だね彼」。
「そうだな、良い少年だよ彼は…」。
何か含みのあるオルフェンの言い方が引っかかった。
「彼になにか?」。
「あぁ……彼は【御伽の悲劇】の生き残りさ。」
【御伽の悲劇】その名前をここで聞くとは思ってもみなかった。
「へぇ……彼が…俄然興味が湧いてきたよ彼に」口に笑みを浮かべた。
幾許かの間を置きオルフェンは鉄製のアタッシュケースを机の上に置いた。
「君達はこれを回収に来たのだろう、彼に余計なちょっかいを加えるのは辞めてもらえないか」。
「はっはっは、別に何もしませんよオルフェンさん」。
「君には仮があるから悪くは言いたくないが説得力が皆無だぞ…」。
「またまたぁ、ひどいなぁオルフェンさん、世界一口が固い男だよ僕は」。
口の固い等という素振りを一切見せないクロムの姿にオルフェンは深々とため息をついた。
眉をしかめながらもオルフェンはアタッシュケースの鍵を開く。
「へぇ、これが……― 古代の神臓器 ―」。
そこには自ら鼓動を成す翠色の結晶が置いてあった。
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