コジ君と私

ブンブン

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コジ君と私

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コジ君と私』
コジ君と暮らした時間、楽しく遊んだ時間、過ごせた時間、私達に取って一生(いっしょう)の宝物(たからもの)・・・

「ミサキ,おはよう。」あっコジ君おはよう、ピコちゃんは未だ(まだ)寝ているの?「ピコはまだ子供だからね。
寝かせてあげようよ」それもそうだね。そういや今日はやけにオメカシしているね、どこか行くの?「今日は隣町のウサギ協会(きょうかい)の皆と久しぶりに会うからね。」良いなぁ「何なら、一緒に行く?」
ミサキは少し考えたふりをして断りました。今日は少し用事あるから無理だよ「そっかぁ少し残念、ならピコと一緒に行って来るよ」
うん兄妹仲良く行ってらっしゃい。」
そして、その日の夕方、コジ君とピコちゃんはウサギ協会(きょうかい)の皆と会う為、出掛けて行きました。一方
ミサキは明日がコジ君の誕生日と分かっていたので、内緒(ないしょ)でお誕生日プレゼントを買いに来ていたのです。
「コジ君には何あげようかなぁ、あっこれに決めた!」ミサキは何か良い物を見つけた様です。
そして、次の日、「おはよう。コジ君昨日は楽しかった?」「うん!とても楽しかったよ。」
ミサキは何をしていたの?」「あっその事だけど、コジ君、お誕生日おめでとう。今日皆で誕生パーティを開くからね。」
「本当?ありがとう」「うん!」「ピコも出し物考える!」
そして、誕生パーティの始まりです。「コジ君お誕生日おめでとう。」「これ私からのプレゼントだよ。」そう言って小さな靴を渡しました。「わぁ、ありがとう!大事にするよ。」「コジ君は今日で六歳になったね?」「うん!
ミサキと出会って六年だよ。」
「これからも仲良くしようね」
「うん!」「あぁ、ずるい。ピコも!」「勿論(もちろん)ピコちゃんも仲良しだよ」それを聞いて、とても喜んでいます。「あっそうだ、お兄ちゃんピコからは宝物の大きなお花あげる」
そう言って大きなたんぽぽの花をプレゼントしました。「綺麗なお花だね、ありがとう。次はいよいよお待ちかねのママが作った誕生日ケーキの登場です。「わぁい。早く食べよう!」ピコちゃんは大はしゃぎで顔を近づけています。「まだ、駄目。お歌を歌ってからでしょ?」ミサキがピコちゃんを遠ざけています。「ごめんなさぁい」
『ハッピバースデーコジ君♪ハッピバースデーコジ君♪』
その日はミサキ達にとって、とても幸せで心に残る楽しい一日になりました・・・・・
信じていたから・・・この幸せがいつまでも続いてくれる事を・・どこかで・・
しかし、それから数日後の事です。思いも掛けない事が起きたのです。
いつもの様に朝ミサキが目を覚ますと、ピコちゃんが大慌てで遣って(やって)来たのです。
「どうしたの?コジ君はまだ寝ているの?」「うん、お兄ちゃん今日の朝早くから熱出して、ずっと寝込んでいるの。」「えっ本当に?」それを聞いたミサキは急いでコジ君の隣に来ました。「大丈夫?」「う~ん、目がだるいよ。」コジ君の小さな目は大きく腫れ上がって(はれあがって)、とても辛そうです。この様子を見て「急いで病院行こう!」そう言うと、隣町の動物病院にやって来ました。「先生、コジ君が・・コジ君が・・診てあげてください。」そして、診察の結果コジ君はとても重い『ウサギ病』に掛かっていて直ぐに手術を受けたのです。術後は痛々しい姿でしたが、徐々に回復して、またあの明るい笑顔のコジ君が戻って来ました。「コジ君、退院おめでとう」
「お兄ちゃん、またおもちゃで遊んでね!」「うん皆心配掛けてごめんね。もう元気だよ」
またあの楽しい日々が戻って来た様(よう)に思えていました。でも、ミサキには分かっていました。以前に比べて
元気が無くなって来ているコジ君の様子に・・・
そして、とても寒い朝の事、コジ君はもうほとんど元気はありませんでした。でも最後の力でミサキの膝の上に座ると、こう言ったのです。
「ミサキ、今までありがとう・・僕ミサキとの思い出忘れないよ。楽しかった事、嬉しかった事、怒られた事、一緒に遊んだ事や、お風呂に入った事。全部僕に取って大切で、幸せな宝物だよ。」「うん・・」ミサキは静かにコジ君を抱きしめています。
ねぇ、覚えている?僕が初めてミサキのお家に来た日の事。ミサキのベッドの上で飛び跳ねて怒られたよね?あの時はとても怖いなって思ったよ。でも、誰よりも僕を大切にしてくれた・・」「うん・・覚えているよ。あの時は大きな声で怒ってゴメンね?私もコジ君との思い出、沢山ありすぎて、どれも良い思い出ばかりで・・・ただ今言えるのはコジ君が大好きだよ。これからもずっとずっと大好きだよ。」そう言って更にギュッと抱きしめます。
「お兄ちゃん、どうしたの?」ピコちゃんが不思議そうにその様子を見ています。すると、
「ピコ、おいで。あのね、そろそろお兄ちゃんはお星様になってしまう。だから、これからはミサキの力になって
あげて、お兄ちゃんが居なくなっても、わがまま言っちゃ駄目だよ?ピコは、本当は誰よりも心優しい子だから。」そんな二羽(にわ)のウサギを優しく包み込む様にミサキは抱きしめています。
「ミサキ本当に今までありがとう・・・」

そして、コジ君は静かにミサキの腕の中で目を閉じたのです。静かに、永遠(えいえん)に開く事なく・・・
「いやっコジ君起きて・・・お願い・・私まだまだお話し、したいよ・・お願い・・起きて・・・
ミサキの大きな目から涙が耐える(たえる)事無くあふれ出て来ます。その涙は頬(ほお)を流れると、自然と開く事の無いコジ君の小さな目に溜まって行きます・・・
「コジ君、知っていた?あのね、動物好きな私の為に六年前ママが未だ赤ちゃんだった君を連れて来てくれたの。
産まれたてのコジ君はとても小さかったよ。それに・・・」
ミサキはコジ君の大きな耳にいつまでも聞こえる様に、ずっとずっと話し続けていました。
一緒に過ごせた日の思い出を。いっぱい、いっぱい話し続けました。
勿論(もちろん)・・その目が開かなくても・・
次の日、ミサキは綺麗なお花畑に小さなお墓を作ると埋めて(うめて)あげました。
「コジ君、ここなら綺麗だよ、お花さん達がいつもそばに居てくれるから安心だね。」
そう言って手を合わせて帰ろうとした時の事です。「ミサキ・・」コジ君の声が聞こえます。「どこ?どこにいるの?」そう言って辺りをキョロキョロして、最後に空を見上げた時、そこには白い雲の様な翼(つばさ)に覆われた
コジ君の姿かありました。「あっコジ君!」
「本当に今までありがとう。今度こそお別れだよ、でも僕はこの空の中からミサキとピコをいつまでも見守っているからね。」
「うん。私絶対忘れないから!コジ君、今まで本当にありがとう。」
気が付けばコジ君の姿はもうどこにもありませんでした。でも、ミサキはこの時、自然と心が晴れた気分に成っていました。だってコジ君は、いつもあの空のどこかで私達を見てくれているのだから・・・・
それから数年が経ち、ミサキもすっかり大きく成り、沢山の動物と仲良く暮らしています。犬、猫、小鳥など・・皆とても仲の良いお友達です。でも、あの頃の事は決して忘れていません。いつまでも大切な宝箱に閉まっています。そして、
ミサキは今日も空を見上げます。コジ君とお話しする為に・・・・

最後に、ピコちゃんとミサキがその後どうなったかはまた今度のお話しで。
おしまい








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