野獣を魅了する奇跡の魔法アイテム「なにそれ旨いの?」

トランジスタ

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白い野獣

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「痛っ!」

 俺の右手の甲に鮮血の赤い線が描かれた。危なかった。もう少し反応が遅れていたら肉が裂けていたところだった。

 目の前には全身を白い毛に覆われた野獣が牙をむいている。ここは俺が根城にしている宿の一室だ。夕日が沈んで間もない室内はうす暗い。しかし、まさかこんな形で不意打ちを食らうとは思ってもみなかった。仕事依頼をこなして宿にたどり着き、ほっとした一瞬の気の緩みを突かれた格好だ。

 野獣の目はらんらんと輝いて、俺に第二撃を食らわせようと隙をうかがっている。俺は武器を構えて野獣を威圧した。

“キティーティーザー”

 俺の得物の名だ。長い柄の先に鎖が繋がれていて、その先端には重りがついている。いわゆるモーニングスターと呼ばれる種類の武器だ。

「悪いが、一撃で決めてやる」

 俺は重りを振り回して遠心力を高めた。だが、野獣の目はその動きをしっかりと追っている。恐ろしい動体視力だ。こいつの力をあなどるのは危険かもしれない。

 慎重に野獣の動きを見極めながらじりじりと迫っていく。一歩前進。まだヤツの動きに変化はない。
 頭だ。この重りをヤツの頭にぶち込めば勝負は決する。
 もう一歩前進。ヤツの背中が弓のようにしなって、とびかかる態勢を取った。

(来るか!)

 もはや言葉には出せない。口を動かすだけでも、それが隙となりかねない。武器を握る俺の手にも力が入った。

(今だ!)

 俺は重りをヤツの頭へ向かって投げつけた。

(バシッ)

 次の瞬間、重りはヤツの強力な爪で叩き落された。

「ば、ばかな……」

 俺は後ずさりすると、隣の部屋へ駆け込んだ。

 こうなれば、あれを使うしかない。先日、俺は魔導士から魅了の魔法を封じたアイテムを購入していた。魔導士イナーバはこの街では知らぬ者がいないほどの実力者だ。他の魔導士が作成するアイテムに比べれば割高だが、彼女が作るアイテムの信頼性ははるかに高い。
 俺はためらうことなくアイテムの封を開いた。ヤツも俺を追ってこの部屋までやってきた。

「これでも食らえ!」

 気合とともにアイテムを野獣にお見舞いする。

「よし! かかった!」

 野獣はアイテムに封じられた魔法にかかり、すっかりおとなしくなっている。なんとか命拾いした。

 それにしても、なんて威力なんだ。

 おそるべし、イナーバ!
 おそるべし、CIA〇ちゅーる
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