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第28話 風に揺れる波
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僕は美しすぎるその光景に、言葉も発さず、完全に魅入られていた。
この光景が見られて本当に良かった。旅に出て良かった。そう思えた。
王家直轄領に入ったその日の夕方。
ようやく二つ目の町に近づいたその時、僕の視界に唐突に表れたのは輝く黄金色だった。
これは……稲?それとも麦?
「この視界を埋め尽くす、黄金色の作物をメリアは知っていますか?」
手綱を握るメリアに聞いてみる。
「ああ、これは小麦ですね」
小麦自体があるのは知ってたけど、この国で栽培してたのか。
「国内でもほそぼそとやってた農家を姫様が見出しましてね。姫様自ら頼み込んで、移住と農地拡大の支援をしたんですよ。今ではここら一体の畑は彼らが管理しているんですよ」
また王女様か!
「ちょうど今は収穫前の時期ですね。収穫し終わったら水を張って『イネ』を育てるんですよ。『ニモーサク』ってやつです」
にもーさく?
!!
二毛作か!
いや、待て待て待て。
聞き逃せない単語が出たぞ。
稲!?稲って言ったよね?
「め、め、メリア!稲って言いました!?」
「なんですか急にそんなに興奮して。馬に興奮が伝播するからやめてください」
メリアさん本当に毒舌!
しかし今はそれどころではないのだ。
「その稲って、米になるんじゃないですか?」
「へぇー!よくご存じですね。正解です」
稲であってたあああああああああああ!
王女様、地球人だ。
ていうか、まず間違いなくアジア人だ。
稲と小麦の二毛作だもの!
日本人だったらいいなー。
地球人ってだけでも同郷は同郷だけど、やっぱり同じ日本人だとより嬉しいよね!
「メリアさん!」
「なんですかもー。いい加減にしてくださいよ」
うるせー。それどころじゃないんだい。
「まーじーでー、王女様に伝言頼みますよ!王女様もまず間違いなく興味を示してくれるので!」
僕の発言を聞いてメリアは眉をしかめた。
「前にも言いましたが、あたしができるのは隊長に伝えるところまでです。姫様に伝言はできません」
そうだったー。
伝われば間違いなく興味を持ってもらえるのに!
「そうでした。それでも十分です。本当に、本当に、ほんとーーーーにお願いします!」
メリアはうんざりした顔で「あーはいはいわかりましたよ」と言ってくれたけど、大丈夫かな?
そう思ったその時。
風が吹いた。
風は小麦達を撫で、大きな波となった。
夕焼けに映える黄金の波は、この世のものとは思えない美しさで、僕は口も思考も止まってしまっていた。
急に静かになった僕を訝しんで、僕の視線をたどったメリアは「ああ」と得心して、
「綺麗ですよね。この光景。ちょうどいい時期に来られて幸運でしたね」
メリアに話しかけられても僕は答えることができなかった。
その時、馬が歩みを止めていたのにも、僕は気付けないでいた。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
★あとがき★
この光景は筆者である僕が実際に見た光景です。
実際には小麦ではなく稲でしたが。
黄金色の稲穂が夕陽に照らされて、風に吹かれて、波を作る光景の美しさは、
ずっと忘れられずにいます。
当時は毎日16~20時間くらい働かされていて、
精神的にも肉体的にも限界だった中で見たから余計に感動したのかもしれませんが、
思わず車を路側帯に止めて、泣きながら見入りました。
こんな風に文章を書く時が来るとは思ってもみませんでしたが、
文章を書くと決めた時から、この話は絶対に入れたいと思っていた話です。
皆さんも、秋口に収穫前の稲穂を見る機会があったら、
ぜひゆっくり見てみてください。
風に揺れるその姿は、本当に美しいので。
この光景が見られて本当に良かった。旅に出て良かった。そう思えた。
王家直轄領に入ったその日の夕方。
ようやく二つ目の町に近づいたその時、僕の視界に唐突に表れたのは輝く黄金色だった。
これは……稲?それとも麦?
「この視界を埋め尽くす、黄金色の作物をメリアは知っていますか?」
手綱を握るメリアに聞いてみる。
「ああ、これは小麦ですね」
小麦自体があるのは知ってたけど、この国で栽培してたのか。
「国内でもほそぼそとやってた農家を姫様が見出しましてね。姫様自ら頼み込んで、移住と農地拡大の支援をしたんですよ。今ではここら一体の畑は彼らが管理しているんですよ」
また王女様か!
「ちょうど今は収穫前の時期ですね。収穫し終わったら水を張って『イネ』を育てるんですよ。『ニモーサク』ってやつです」
にもーさく?
!!
二毛作か!
いや、待て待て待て。
聞き逃せない単語が出たぞ。
稲!?稲って言ったよね?
「め、め、メリア!稲って言いました!?」
「なんですか急にそんなに興奮して。馬に興奮が伝播するからやめてください」
メリアさん本当に毒舌!
しかし今はそれどころではないのだ。
「その稲って、米になるんじゃないですか?」
「へぇー!よくご存じですね。正解です」
稲であってたあああああああああああ!
王女様、地球人だ。
ていうか、まず間違いなくアジア人だ。
稲と小麦の二毛作だもの!
日本人だったらいいなー。
地球人ってだけでも同郷は同郷だけど、やっぱり同じ日本人だとより嬉しいよね!
「メリアさん!」
「なんですかもー。いい加減にしてくださいよ」
うるせー。それどころじゃないんだい。
「まーじーでー、王女様に伝言頼みますよ!王女様もまず間違いなく興味を示してくれるので!」
僕の発言を聞いてメリアは眉をしかめた。
「前にも言いましたが、あたしができるのは隊長に伝えるところまでです。姫様に伝言はできません」
そうだったー。
伝われば間違いなく興味を持ってもらえるのに!
「そうでした。それでも十分です。本当に、本当に、ほんとーーーーにお願いします!」
メリアはうんざりした顔で「あーはいはいわかりましたよ」と言ってくれたけど、大丈夫かな?
そう思ったその時。
風が吹いた。
風は小麦達を撫で、大きな波となった。
夕焼けに映える黄金の波は、この世のものとは思えない美しさで、僕は口も思考も止まってしまっていた。
急に静かになった僕を訝しんで、僕の視線をたどったメリアは「ああ」と得心して、
「綺麗ですよね。この光景。ちょうどいい時期に来られて幸運でしたね」
メリアに話しかけられても僕は答えることができなかった。
その時、馬が歩みを止めていたのにも、僕は気付けないでいた。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
★あとがき★
この光景は筆者である僕が実際に見た光景です。
実際には小麦ではなく稲でしたが。
黄金色の稲穂が夕陽に照らされて、風に吹かれて、波を作る光景の美しさは、
ずっと忘れられずにいます。
当時は毎日16~20時間くらい働かされていて、
精神的にも肉体的にも限界だった中で見たから余計に感動したのかもしれませんが、
思わず車を路側帯に止めて、泣きながら見入りました。
こんな風に文章を書く時が来るとは思ってもみませんでしたが、
文章を書くと決めた時から、この話は絶対に入れたいと思っていた話です。
皆さんも、秋口に収穫前の稲穂を見る機会があったら、
ぜひゆっくり見てみてください。
風に揺れるその姿は、本当に美しいので。
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