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第1章

9:うっかり触ると大火傷

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スタン。っと、まるで最後の階段を軽く飛んで降りた時のような感じで校庭に着地する明彦あきひこ

「まだ動けるんでしょ? 手加減したんだし。 それとも降参する?」

「ふざけるなっ! シャナっ!」

「術式発動! 二式!」

シャナの声で、シノンは精神感応戦闘服アストラル・アーマー・コンバットスーツの形態から、次の形態へと換装する。

明彦あきひこの目の前に姿を見せたのは。

「ロボット?」

そう、体高こそは4メートルくらいだがロボットだった。

バコッ! と音がしたと思うと。

肩と足の部分の箱が開かれ、バシュ!と言う音と共に、ミサイルが発射される。

「コヨミ。」

「あいよっ!」

明彦あきひこの言葉と共に、コヨミが明彦あきひこの前に出てきて。 向かってくるミサイルに向かって突っ込んでいく。

「えっ!?」

それを見たシャナが間の抜けた声を上げる。

「次元結界。」

明彦あきひこが呟く様に言うと、周囲から色がなくなり。

灰色一色の世界になる。

いや、正確に言えば。 シャナ、シノン(ロボット)、コヨミ、明彦あきひこには色が残っている。

それと、教室の中の人物たちも。

ドーン!ドドドンッ!

すさまじい轟音と共に、ミサイルに突っ込んだコヨミの場所が爆発する。

「つっ! 放水!」

慌てて、シノンが魔法を行使して、爆発場所に向かって大量の水を撒き散らす。

煙と土煙が収まると、そこには無傷のコヨミが立っている。

「おや。 意外と優しいんだ。」

ミサイルが直撃したのにもかかわらず、ケロっとした表情でロボットを見るコヨミ。

服にも損傷は見当たらず。 上から水が放水されているのにも関わらず濡れていない。

「うそ・・・。殺しちゃっと焦ったのに・・・。」

ロボットからシノンの声が聞こえる。

「遅かったじゃないか。」

明彦あきひこがコヨミに向かって言うと。

「いやぁ~。精神系異常なんて、久しぶりに食らっちゃったからね。」

テヘッ。っと、顎に拳を当てて可愛らしいポーズをとる。

「で?」

「代わってくれるんでしょ?」

「遊びたいんだろ?」

「うん!」

「じゃ。選手交代で。」

そう言って、明彦あきひこは軽くジャンプして、教室のシャナの隣に着地すると同時に、伸縮式の警棒を縮めて右腕に仕込みなおす。

「あの・・」

パンッ!

とシャナが何か言いかけた時。

何かを叩く様な音が教室に響く。

「ふう。やっと解除できた。」

「一条先生。 仮にも教師なんだから耐性くらい上げておけよ。」

「あほっ!ちゃんとレベル5まで上げてたわっ! 常時発動型パシッブスキルで誰がレベル7なんて思うかっ!」

(ごもっとも。 まさかのレベル7だったからな。)

「えっ!?  えっーーーー!?」

目を大きく真ん丸にしながらシャナが一条を見る。

「おっ。 コヨミが相手してんの?」

窓際に寄ってきたのは鳴海なるみ

「う~ん。 まだ、ちょっと残ってるかな?」

リュウカが目を抑えながら言う。

「何なんですか? 貴方たち?

なんで、私の魅了チャームが、もう解けているのですか?」

「あ~、このクラスの奴らって、基本化け物だから。 気にしたら負け?かな?」

「おいっ!」

「ちょ! 七五三しのしめくん。酷っ!」

ナルと、リュウカが抗議の声をあげる。

「殺そうが、消滅させようが、生き返ってくる奴。」

「うっ。」

明彦あきひこの言葉にリュウカが唸る。

「核兵器でも、光学兵器でも、魔法攻撃でも、傷を付けるのが不可能なドラゴニュート。」

そう言って、まだ呆けたままの状態のオスタナを見る。

「時間制限無しで。 その気になれば宇宙怪獣を秒で倒せて、コヨミの全力でも相手できる宇宙超人戦士スーパーマンファイター。」

「たはははは。」

鳴海が声をあげる。

「魔法も化学兵器も使わずに、全てを肉体だけで叩き伏せる半獣人。」

そう言ってコヨミに視線を向ける。

「化け物以外に、何て言えばいいのかな? 逆にあったら教えてくれ。」

にっこりと、微笑みながら言う明彦あきひこ

「いやいやいやっ! 一番の化け物って言うならアンタだからねっ!」

微笑む明彦あきひこに向かって言うナル。

その横で、ウンウンと、激しく首を上下に振るリュウカ。

「あほか。 俺の場合は、自他共に認めてるよ。

母さんは神様で。 父さんは神殺しの竜なんだぞ。

産まれた時から人間どころか、生物の枠ってもんから外れてるって次元だわ。」

肩を竦めながら言う明彦あきひこ

その横では、シャナがポカーンと口を半開き状態にして呆けていた。
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