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宇宙編

宇宙へ:5

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再び、敵の大群のど真ん中に突っ込んで行きつつ。

レイに回避の全権を任せて、ターゲットもロクに合わせずに撃ちまくる。

大半は外れるが、それでも敵の敵対ヘイト値は確実に魔皇帝デビルエンペラーに集中する。

耐久力HPが凄い速さで減っていくが。 それと同等の速度でオートリペアキットに回復が行われていく。

〖回避運動が間に合わない!〗

高性能すぎる故の悲しさと言うべきなのか。

今まで、レイも悠夜ゆうやも、本気の回避運動を行ったことがない。

危なくなったら、フルスロットルで距離を取り離れれば良かった。

しかし、今回は違った。

敵の大群の注意を魔皇帝デビルエンペラーに向けつつ時間を稼がないといけない。

〖回避運動のパターン数が絶対的に足りていない。〗

レイも、回避運動を続けつつ、回避のパターンを最適化しているのだが。それでも間に合っていない。

もっと小さな動きで、細かく動かないと。

速さではない。小さく細かく動く。

ドドドッドッ!

機体に振動が走る。

「レイ!」

『残り! 1分16秒!』

「距離を取る!」

『了解!』

大きく距離を取って、眼前の敵の大群に目をやる。

「時間的に考えると。一応は成功だよな?」

『そうね。 今から第二拠点までは、最速で進んでも1分30秒は掛かるし。』

「アイテムの残りはっと。」

イベント利を開いて、残りのアイテムを確認する。

「うわぁ~。めっちゃ使ったな。」

『今まで使わないで溜め込んでいたのを、一気に消化しちゃったね。』

「だな。」

「残りエネルギーは?」

『68%だよ。』

「ブースト2回分か・・・。」

『ブーストを使うと、エネルギーが尽きちゃうから、お勧めはしないけどね。』

「この際だ。 アイテムを全部使いきるか。」

『良いんじゃない。 普段はエネルギーパック以外は使う事がほとんどないんだし。』

「アイテム陽炎を全て使用! 陽炎使用後にダミーバルーンも全て使用!」

悠夜ゆうやの言葉に反応して、ダミーバールンと陽炎が広範囲に渡って撃ちだされる。

移動しながら、ダミーバルーンと陽炎を撃ちだした為に、結構な範囲で魔皇帝デビルエンペラーのダミーと為ってくれるはず。

「拡散ミラーを10個使用!」

魔皇帝デビルエンペラーの周囲に拡散ミラーが並ぶ。

「フォルテマスビーム!発射!」

叫ぶと共に、トリガーを引く。

両肩・両肘・両膝・背中の部分から伸ばされた射出校からビームが放たれる。

1つの射出口から5つのビームが、合計8つの発射口から打ちされ。

それが、拡散ミラーに取り込まれて、更に500条のビームと為り敵軍に向かって行く。

『ねえ、悠夜ゆうや。』

「ん?」

『使ったアイテムの総額。おおよそ4000万だよ。』

「・・・。」

レイから言われた金額に、思わず沈黙する悠夜ゆうや

なにせ、悠夜ゆうやが使ったアイテムは、全て敵からしかドロップできない希少なアイテムばかりだ。

表情筋が固まるのも無理はない。

『フフッ。』

悠夜ゆうやの顔を見てレイが笑う。

「ま、まぁ。差し引きゼロって事で良いんじゃね?」

『敵の殲滅率2%。 来るよ!』

「おう!」

話をやめて、戦闘モードに切り替える。


 * * * *

必死に回避運動をつづけながら、魔皇帝デビルエンペラーが敵の最中を駆け巡る。

『損傷率48%を超える!』

「フルスロットルで距離を取り! 重力砲グラビティーキャノンをぶっ放すっ!」

アクセルペダルを踏みこみ、一気に距離を開ける魔皇帝デビルエンペラー

胸部装甲が開き、エネルギーが収束して黒い塊を形成する。

重力砲グラビティーキャノン!発射!」

狙いも程々に、重力砲グラビティーキャノンを放つ。
 
黒いエネルギーが広がり、直径150メートルを覆いつくす。

『敵殲滅率!8%! 自機損傷率!48%! 駆動系に影響が出るよ!』

それでも減っている気がしない。

(ダメなのか?)

弱気になる悠夜ゆうや

『後ろに2機抜けたっ!』

レイの言葉に反応して、咄嗟にトリガーを引く。

爆発エフェクトを発して消滅する敵機。

『エネルギー残存量32%』

「悪いレイ。ここまで・・・」

のようだ。 そう言葉を出しかけた時だった。

『来たよっ!』

レイが叫ぶように言う。

ただし、その声は明るい声だった。

レーダーに目をやると、魔皇帝デビルエンペラーの後ろから数多くの機体反応が表示される。

それは、敵を示す赤色のマーカーではなく。

味方を示す緑色のマーカー。

悠夜ゆうやは思わずアクセルペダルを目一杯踏み込んで、後ろの味方に向かい向かっていく。

「待たせたな。悠夜ゆうや。」

内部ダメージが大きすぎて、画像は映し出されないが、聞こえた声はアイザックだった。

「ボロボロだな大将。」

野太い声。映像が映らないでもわかるサムソンだ。

「よく頑張ったわね。後はお姉さんたちに任せなさい。」

最近なにかと、ちょっかいを掛けてくるイライザ。

「さすが私の悠夜ゆうや。後でキスでも何でもしてあげるわ。」

アイラの声が。

『バカ悠夜ゆうや! 今のフルスロットでっ! 機体ダメージが80%を超えちゃったじゃない!』

「悪い。つい。」

「そのダメージじゃ。戦闘断続は無理そうだな。 あとはゆっくり休んでおけ。」

アイザックが言う。

「御冗談。 ここまで来て、戦線離脱は嫌だって。」

「でもよ大将。高速修理でも1時間は掛かるんじゃないか?」

サムソンが言う。

「以前から集めてたパーツが揃った。 あとは資金の問題だけなんだ。」

「そうか。なら香織かおり悠夜ゆうやにクレジットを渡してやれ。」

「私としては、落とされていてくれれば良かったのですが。 まぁ、成功してしまったものは仕方がありませんね。

クレジットを渡します。」

トレード申請しながらの、香織かおりからの冷たい一言。

「愛してるよ。香織かおりさん。」

クレジットを受け取りながら、揶揄からかいたくなって、思わず口走ってしまう。

「死ね。」

低いトーンで返す香織かおり

「ちょっと!そんな、まな板の何処が良いのよ!」

「そうよ! 揉みごたえのある私にしときなさい!」

アイラの言葉に、イライザが被せてくる。

アイラはともかく。 イライザのは完全に面白がってあおっているだけだ。

「ボス戦の前に。 貴方たちを沈めてあげましょうか?」

「誰に向かって言ってるのかな?」

「面白い。やれるものならやってみな。」

アイラとイライザが香織かおりに返す。

「そんじゃ、俺は艦に戻って準備してくるんで。」

そう言って、機体ダメージが入らない程度の最高速で、その場を離れて行く悠夜ゆうや

「おーい。どうするんだこれ?」

サムソンがアイザックに尋ねる。

「戦闘が始まれば、素に戻るだろう。放っておけ。 各員戦闘配置に! 目指すは!最終拠点である第三拠点の宇宙ステーション!」
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