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白薔薇学園ゲーム
唇に溺れて※
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真琴の巧みな唇に冬馬はすっかり気持ち良くなっていた。冬馬自身が自覚する事はなかったけれど、この白薔薇学園のゲームオプションとして、主人公は敏感体質と言うのが標準装備でついていた。
冬馬はこの《白薔薇学園の箱庭》へ別の世界線からの転生者と言っても良かった。そして冬馬の記憶通り、彼自身は姉のゲーム攻略の手助けをした事実はそのままだったけれど、冬馬の知らぬところで姉はゲームをリスタートしていた。
もちろん自分の弟である藤原冬馬を主人公と設定して。ただし姉は自分の弟が主人公という設定に段々萎えてしまって途中でゲームを放棄してしまった。だから結末がどうなるのかは誰にも分からないし、まして今の世界線の冬馬自身が知る由もなかった。
そして冬馬はこの白薔薇学園を無自覚に攻略しているとも知らずに、今までラブラブゲージを積み上げて来ていた。とは言え今や冬馬の方が、彼らの攻略対象になってしまったと言ってもおかしくないのは世界線のバグかもしれないが、そんな事は彼らには関係ない事だ。
主人公らしく欲望に弱い冬馬はすっかり真琴の唇に落とされて、閉じた瞼を震わせた。そんな冬馬に真琴自身も我慢出来なくなって、甘く息を吐き出す冬馬の唇を割ってぬるりと舌を差し入れた。
初めてのその感触に、冬馬はヒクリと身体を強張らせたけれど、攻撃的な一方でなだめる様な真琴の舌の優しさに重くなった瞼は開かなかった。
だから真琴が渋々顔を引き剥がした時も、冬馬は気怠い一方で欲望に張り詰めた身体を持て余していた。
「冬馬…。」
掠れた真琴の声が遠くから聞こえて、冬馬はようやく我に返った。脱力した自分の身体は鍛えられた真琴に支えられていて、冬馬はその事に瞬きを何度か繰り返してから気づくという有様だった。
「…っ!」
混乱する冬馬を見つめていた真琴はクスクスと甘く笑った。それは冬馬が見た事のない真琴の新しい一面だった。ズクリと自分の身体の一部が強張っているのを自覚させられて、冬馬は気まずげに真琴の視線から目を逸らした。
ギシリとベッドから立ち上がった真琴は、冬馬の俯いた頭をクシャリと撫でて呟いた。
「これ以上ここに居たら俺も止まれなくなるから、もう行くわ。冬馬がこんなにもキスに弱いとか、嬉しい様な心配な様な複雑な気持ちだけどな。
…感じる事は悪い事じゃないぜ。嬉しいよ、俺は。…でも、他の奴としたら怒るからな?」
それだけ一方的に言い終わると、真琴は部屋を出て行った。部屋の扉がカチリと閉まる音がして、冬馬はドサリとベッドに横たわった。今立ち上がる事は出来そうも無かった。
真琴に押し切られた形とは言え、キスを受け入れたのは自分だった。どうしてそんな話になったのかも、よく思い出せない。キスの気持ち良さに流されてしまった冬馬は、ケットを頭に被って身悶えした。
涙目になりながらも、強張った身体の一部は収まる気配を見せず、冬馬はヨロヨロと立ち上がるとシャワールームに閉じ籠った。大浴場は各寮に用意されていたけれど、部屋には個別のシャワーブースが設置されていた。
冬馬はその有り難みをこの時ほど実感した日はなかった。
けれどこの攻略ゲームの舞台である白薔薇学園には、生徒間の恋愛のための至れり尽くせりの設備がそこかしこにあるという事までは冬馬は気づけなかった。もっとも気づいたところで、ますます頭を抱える羽目になっただけだろう。
後ろめたさと自分の身体の裏切り、そしてしでかしてしまった事を受け止めきれない冬馬は、ろくに水気を拭いもせずにバタリとベッドに沈み込んだ。
すっかり腫れている気がする自分の唇を指でなぞって、冬馬は今まで通りに真琴に顔を合わせられる気がしなかった。少なくともキスは嫌だと感じなかったせいで、余計そう思った。自分は痴態を晒してしまったんだろうか。
この世界はやはり《白薔薇学園の箱庭》なのだろうかと、冬馬はもう一度ため息をついた。
冬馬はこの《白薔薇学園の箱庭》へ別の世界線からの転生者と言っても良かった。そして冬馬の記憶通り、彼自身は姉のゲーム攻略の手助けをした事実はそのままだったけれど、冬馬の知らぬところで姉はゲームをリスタートしていた。
もちろん自分の弟である藤原冬馬を主人公と設定して。ただし姉は自分の弟が主人公という設定に段々萎えてしまって途中でゲームを放棄してしまった。だから結末がどうなるのかは誰にも分からないし、まして今の世界線の冬馬自身が知る由もなかった。
そして冬馬はこの白薔薇学園を無自覚に攻略しているとも知らずに、今までラブラブゲージを積み上げて来ていた。とは言え今や冬馬の方が、彼らの攻略対象になってしまったと言ってもおかしくないのは世界線のバグかもしれないが、そんな事は彼らには関係ない事だ。
主人公らしく欲望に弱い冬馬はすっかり真琴の唇に落とされて、閉じた瞼を震わせた。そんな冬馬に真琴自身も我慢出来なくなって、甘く息を吐き出す冬馬の唇を割ってぬるりと舌を差し入れた。
初めてのその感触に、冬馬はヒクリと身体を強張らせたけれど、攻撃的な一方でなだめる様な真琴の舌の優しさに重くなった瞼は開かなかった。
だから真琴が渋々顔を引き剥がした時も、冬馬は気怠い一方で欲望に張り詰めた身体を持て余していた。
「冬馬…。」
掠れた真琴の声が遠くから聞こえて、冬馬はようやく我に返った。脱力した自分の身体は鍛えられた真琴に支えられていて、冬馬はその事に瞬きを何度か繰り返してから気づくという有様だった。
「…っ!」
混乱する冬馬を見つめていた真琴はクスクスと甘く笑った。それは冬馬が見た事のない真琴の新しい一面だった。ズクリと自分の身体の一部が強張っているのを自覚させられて、冬馬は気まずげに真琴の視線から目を逸らした。
ギシリとベッドから立ち上がった真琴は、冬馬の俯いた頭をクシャリと撫でて呟いた。
「これ以上ここに居たら俺も止まれなくなるから、もう行くわ。冬馬がこんなにもキスに弱いとか、嬉しい様な心配な様な複雑な気持ちだけどな。
…感じる事は悪い事じゃないぜ。嬉しいよ、俺は。…でも、他の奴としたら怒るからな?」
それだけ一方的に言い終わると、真琴は部屋を出て行った。部屋の扉がカチリと閉まる音がして、冬馬はドサリとベッドに横たわった。今立ち上がる事は出来そうも無かった。
真琴に押し切られた形とは言え、キスを受け入れたのは自分だった。どうしてそんな話になったのかも、よく思い出せない。キスの気持ち良さに流されてしまった冬馬は、ケットを頭に被って身悶えした。
涙目になりながらも、強張った身体の一部は収まる気配を見せず、冬馬はヨロヨロと立ち上がるとシャワールームに閉じ籠った。大浴場は各寮に用意されていたけれど、部屋には個別のシャワーブースが設置されていた。
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すっかり腫れている気がする自分の唇を指でなぞって、冬馬は今まで通りに真琴に顔を合わせられる気がしなかった。少なくともキスは嫌だと感じなかったせいで、余計そう思った。自分は痴態を晒してしまったんだろうか。
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