異世界に飛ばされた僕の従騎士生活

コプラ@貧乏令嬢〜コミカライズ12/26

文字の大きさ
72 / 127
二度目の砦生活

消えたシン

天幕の外が騒がしく感じたのは戦略の詰めも終わる頃だった。

私の名が呼ばれた気がして目をあげると、天幕の入り口の護衛が緊張した顔でこちらに合図を送っていた。

直ぐに散会して表に出ると、護衛と兵士長が顔を強張らせて待ち構えていた。

周囲の兵士達も何故か動揺している様で、皆私と目を合わせようとしない。

私はいつもなら側に付き従ってくるシンを無意識に探したが、現れない。まぁ、そんな事もあるかと思いつつも、兵士長の表情を見ると、悪いニュースを持ってきたのは間違いなかった。


「申せ。」

兵士長は私の前に跪くと声音に緊張を滲ませて言った。

「フォーカス様にご報告致します。先程、馬場より報告があり、フーガと数頭が消滅。フーガを追っていたシン殿も行方不明との事です。」

私は大きく息を吸い込み、後ろに続いていた数人の幹部も息を呑むのが聞こえた。

「馬場へ向かいながら状況を聞く。ローディ、共に来て状況の確認をしてくれないか!」

私とローディ、兵士長、他数人が急ぎ馬場へ向かった。


話はこうだった。馬丁が馬場に放していた馬達が急に暴れ出したので諌めていたところ、フーガを呼ぶ声がしたと。
見たところ、フーガと数頭が柵を抜けて森の方へ向かって姿が消えかかっていた。

そしてフーガを追いかけて行ったシンがフーガ達の消えた辺りで、同様に消えたところを数人が目撃したという事だった。

魔法士であるローディと私は顔を見合わせて頷き合った。消えるのは何かしらの魔法が関係したのでは無いかと。
魔法士の居る現在、彼の把握していない魔法は使えないようにしているので、良い事で無いのは明らかだった。


私は以前シンが目の前で馬上から崩れ落ちたあの時以上の悪い予感に、胸が締め付けられて息苦しいほどだった。

「ジュリアン、まずは現場を見てからだ。無闇に動揺はするな。」

前を向いて急ぐローディに諌められて、私は悪態をつくと兵士長に聞いた。

「なぜシンは馬場に行ったのだ。会議の間はいつも天幕外に待機しているのだが。」

兵士長は首を振って言った。

「私にも分かりません。しかし馬場に向かうシンを見てる兵士は居るでしょうから、馬場に向かう様に命じます。」


我々が馬場に到着した時には、何人かのシンを目撃した兵士達が待機していた。
私たちは馬場の外の、シンが消えた現場に向かいながら話を聞いた。シンと会話したという弓使いのカークが言った。

「シン殿は何か悪い予感がすると気になっている様子でした。何か変わったことが無いかと私に聞いたほどです。」

私たちはシンが消えた現場を思わず黙って見つめた。悪い予感、それはまさにこの事そのものだったのだ。

感想 62

あなたにおすすめの小説

転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~

ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。 コイツは何かがおかしい。 本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。 目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。

オッサン、エルフの森の歌姫【ディーバ】になる

クロタ
BL
召喚儀式の失敗で、現代日本から異世界に飛ばされて捨てられたオッサン(39歳)と、彼を拾って過保護に庇護するエルフ(300歳、外見年齢20代)のお話です。

平凡ハイスペックのマイペース少年!〜王道学園風〜

ミクリ21
BL
竜城 梓という平凡な見た目のハイスペック高校生の話です。 王道学園物が元ネタで、とにかくコメディに走る物語を心掛けています! ※作者の遊び心を詰め込んだ作品になります。 ※現在連載中止中で、途中までしかないです。

虚ろな檻と翡翠の魔石

篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」 不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。 待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。 しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。 「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」 記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。

男装の麗人と呼ばれる俺は正真正銘の男なのだが~双子の姉のせいでややこしい事態になっている~

さいはて旅行社
BL
双子の姉が失踪した。 そのせいで、弟である俺が騎士学校を休学して、姉の通っている貴族学校に姉として通うことになってしまった。 姉は男子の制服を着ていたため、服装に違和感はない。 だが、姉は男装の麗人として女子生徒に恐ろしいほど大人気だった。 その女子生徒たちは今、何も知らずに俺を囲んでいる。 女性に囲まれて嬉しい、わけもなく、彼女たちの理想の王子様像を演技しなければならない上に、男性が女子寮の部屋に一歩入っただけでも騒ぎになる貴族学校。 もしこの事実がバレたら退学ぐらいで済むわけがない。。。 周辺国家の情勢がキナ臭くなっていくなかで、俺は双子の姉が戻って来るまで、協力してくれる仲間たちに笑われながらでも、無事にバレずに女子生徒たちの理想の王子様像を演じ切れるのか? 侯爵家の命令でそんなことまでやらないといけない自分を救ってくれるヒロインでもヒーローでも現れるのか?

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

婚約破棄されたから能力隠すのやめまーすw

ミクリ21
BL
婚約破棄されたエドワードは、実は秘密をもっていた。それを知らない転生ヒロインは見事に王太子をゲットした。しかし、のちにこれが王太子とヒロインのざまぁに繋がる。 軽く説明 ★シンシア…乙女ゲームに転生したヒロイン。自分が主人公だと思っている。 ★エドワード…転生者だけど乙女ゲームの世界だとは知らない。本当の主人公です。

親友と同時に死んで異世界転生したけど立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話

gina
BL
親友と同時に死んで異世界転生したけど、 立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話です。 タイトルそのままですみません。