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元の世界
事情聴取
僕は変に緊張しない様に呼吸を整えた。これも戦闘のひとつと思えば良い。
「それでは、橘さんが覚えてらっしゃる事を教えてください。」
僕の目の前で若い警察官がメモを取って、年嵩の警察官が僕に話しかけていた。
「僕はほとんど何も覚えていないというか、思い出せないんです。気がついたら病院のベッドで目を覚ましたというか。」
「橘さんは2年ほど前に行方不明者として捜索願が届けられてます。ご存知でしたか?」
「…いいえ。じゃあ僕は今20歳なんですか?…僕は大学1年のはずです。」
僕は顔を顰めて思い出そうとした。実際僕があの世界に飛ばされた時のことは、ほとんど自分でも記憶にないんだ。演技でなくリアルだ。
僕は異世界へ飛ばされた間の事は『なかった事』にした。だから僕の知ってることは、飛ばされる前と、病院で目覚めた後だけだ。
「…記憶喪失でしょうか。実際その傷もお医者さん曰く、剣の様な刃で切られた傷だと仰るんです。何とも分からないことだらけです。しかも失踪場所も発見場所もほぼ同じ場所ですからね。
もし私が警察でなければ、異世界へ行ってたとでも思ってしまったに違いありません。貴方の担当医はそんな事を冗談半分で言ってましたよ。貴方が血だらけで発見された時に着てた服が、西洋の騎士の鎧によく似てますからね。」
僕はハッとすると警察に尋ねた。
「僕はそんな服を着てたんですか?その服は見れますか?」
警察官は微笑むと、僕の自宅に保管してるから退院したら見てくださいと言った。
「一応、傷害事件として扱いますので、何か思い出したらご連絡ください。」
そう言うと2人の警察官は立ち去った。
僕は大きく息をつくと、何とか上手く乗り切ったのではないかと満足した。多分この傷害事件は迷宮入りだろう。
犯人は異世界の敵国の王子の精鋭で、多分もう死んでる。僕の放った刃で切り刻まれるのを見たんだ。そうなるとぼくも立派な殺人犯なんだな。僕はその時の記憶と、真っ白な病室の今の目の前の光景があまりにも乖離していて、思わず笑ってしまった。
しばらくすると、若い研修医が僕の様子を見にやって来た。最近この研修医、清水先生がちょくちょく顔を出す。
興味深々な様子で僕に聞いて来た。
「慎くん、事情聴取はどうだった?君、何も覚えてないんだってね。担当の榊原先生も凄く不思議がっていたんだよ。君の様な傷は見た事がないって。榊原先生は外科の中じゃ一流だから、先生がそう言うってことはよっぽどだよね。でも傷の治りも早いし、いずれ傷痕も綺麗になるだろうから安心してね。」
そうペラペラ喋りながら、ちょっと見せてねと言いながら、横になった僕の病院着の紐を解いて傷のガーゼを交換してくれた。消毒する時に押される感じが少し怖い様な、痛い様な気がして僕は顔を顰めた。
ああ、でも僕が本当に怖いのはジュリアンの元に戻れないことだけど…。
「それでは、橘さんが覚えてらっしゃる事を教えてください。」
僕の目の前で若い警察官がメモを取って、年嵩の警察官が僕に話しかけていた。
「僕はほとんど何も覚えていないというか、思い出せないんです。気がついたら病院のベッドで目を覚ましたというか。」
「橘さんは2年ほど前に行方不明者として捜索願が届けられてます。ご存知でしたか?」
「…いいえ。じゃあ僕は今20歳なんですか?…僕は大学1年のはずです。」
僕は顔を顰めて思い出そうとした。実際僕があの世界に飛ばされた時のことは、ほとんど自分でも記憶にないんだ。演技でなくリアルだ。
僕は異世界へ飛ばされた間の事は『なかった事』にした。だから僕の知ってることは、飛ばされる前と、病院で目覚めた後だけだ。
「…記憶喪失でしょうか。実際その傷もお医者さん曰く、剣の様な刃で切られた傷だと仰るんです。何とも分からないことだらけです。しかも失踪場所も発見場所もほぼ同じ場所ですからね。
もし私が警察でなければ、異世界へ行ってたとでも思ってしまったに違いありません。貴方の担当医はそんな事を冗談半分で言ってましたよ。貴方が血だらけで発見された時に着てた服が、西洋の騎士の鎧によく似てますからね。」
僕はハッとすると警察に尋ねた。
「僕はそんな服を着てたんですか?その服は見れますか?」
警察官は微笑むと、僕の自宅に保管してるから退院したら見てくださいと言った。
「一応、傷害事件として扱いますので、何か思い出したらご連絡ください。」
そう言うと2人の警察官は立ち去った。
僕は大きく息をつくと、何とか上手く乗り切ったのではないかと満足した。多分この傷害事件は迷宮入りだろう。
犯人は異世界の敵国の王子の精鋭で、多分もう死んでる。僕の放った刃で切り刻まれるのを見たんだ。そうなるとぼくも立派な殺人犯なんだな。僕はその時の記憶と、真っ白な病室の今の目の前の光景があまりにも乖離していて、思わず笑ってしまった。
しばらくすると、若い研修医が僕の様子を見にやって来た。最近この研修医、清水先生がちょくちょく顔を出す。
興味深々な様子で僕に聞いて来た。
「慎くん、事情聴取はどうだった?君、何も覚えてないんだってね。担当の榊原先生も凄く不思議がっていたんだよ。君の様な傷は見た事がないって。榊原先生は外科の中じゃ一流だから、先生がそう言うってことはよっぽどだよね。でも傷の治りも早いし、いずれ傷痕も綺麗になるだろうから安心してね。」
そうペラペラ喋りながら、ちょっと見せてねと言いながら、横になった僕の病院着の紐を解いて傷のガーゼを交換してくれた。消毒する時に押される感じが少し怖い様な、痛い様な気がして僕は顔を顰めた。
ああ、でも僕が本当に怖いのはジュリアンの元に戻れないことだけど…。
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