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王都への旅路
湖
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湖面が光ってさざなみがキラキラ揺れる。僕は目の前の予想より大きな湖に只々圧倒されていた。そして特筆すべきはその色だろう。一見まろやかな翡翠色とでも言う様な美しい水の色は、近くで見ると透明度が高かった。
多くの獣人達が興奮した様に大小様々な舟を浮かべて、網を放っていた。ビチビチと跳ねるのはどう見てもさっき食べた双頭魔魚の様だった。薄い水色の体はボンヤリと透けて、骨の様なものは見えない。赤いひとつ目が網の中でいくつも目立っていた。
「ぱーかちゅ!ちゅごい!いっぱい!」
思わず興奮して指差せば、パーカスもまた目を輝かせて、この滅多に見れないという光景を楽しんでいた。僕は後ろに立っている僕の護衛である虎獣人のロバートをパーカスの肩越しに覗き込んで呼びかけた。
「ろばーちょ!みちゃ?ちゅごいねー?」
ロバートは強面を緩めて、嬉しげに笑って頷いた。
「ええ、テディ様。私はここで生まれ育ちましたが、こんな光景は生まれて初めてです。知り合いの老人もこんな事は聞いたことがないと言ってましたよ。」
パーカスが振り向いてロバートに尋ねた。
「老人もそう言っていたのかの?」
ロバートは頷いて湖の喧騒を眺めながら言った。
「ええ。元々美味しくて人気のある双頭魔魚は、湖の底近くに生息している魔魚なんだそうです。だから湖面近くで網に囚われる事などほとんど無いらしくて。大抵獲れる時は嵐などで湖が荒れた時に、ちらほら迷い出た単体が獲られる様です。」
するとパーカスは眉を顰めて湖を睨みつける様に見つめていた。それから僕に小声で尋ねた。
「…テディの目には、湖はどう見えるかの。双頭魔魚も魔物と言えども、魔石ほどの大きさのモノはないじゃろうが…。」
パーカスが僕の魔力が見えるアレを教えて欲しいのかと気がついて、首を伸ばした。確かに網の中の双頭魔魚はキラキラして見える。それは魔魚自身がボンヤリ光って見えてるせいでもあった。
とは言え、僕は大きな舟が繰り出している辺りにボンヤリ湖面を光らせているものが何か知りたかった。大群がいるのかもしれない。
「ぱーかちゅ、もっと、あっちいきゅ!ひかっちぇる!」
僕が湖にもっと近寄ってほしいと要求すると、パーカスは少し迷った様に周囲を見回した。それから湖に張り出したお店のひとつに入って行くと、二階のテラス席へ僕たちは案内された。テラスのバルコニーには何人もの獣人達が、湖の双頭魔魚の捕物を楽しげに眺めていた。
僕はパーカスの腕の中から降りると、獣人達の脚の間に入って一番前まで進むと、手摺りを掴んで湖を見下ろした。素晴らしい眺めだった。キラキラと透ける青い双頭魔魚の体と赤い目、そして翡翠色の湖水。大小の舟や、賑やかなその熱気。
まして僕には魔力が光って見えるので、キラキラが過剰な位だ。じっと見ていると、パーカスと虎獣人のロバートが直ぐ後ろに来ていた。
「テディ、落ちない様に気をつけるのじゃよ。ほら、手を繋ぐのじゃ。」
僕は気もそぞろながらパーカスに片手を繋がれて、手摺りの間から顔を出して熱中して眺めていた。なんだかさっきと変わった気がする。僕は首を傾げてパーカスに教えた。
「ぱーかちゅ、あちょこ、おっきいふにぇのおきゅ、ちゃっきよりひかっちぇる!…もちかちてまもろ?」
大きな舟は漁をすると言うより、船遊び用っぽかった。子供も含む数人の獣人が乗っているのが見えた。その舟の向こう側の湖水がさっきよりも明るく光ってる気がしたんだ。僕は急にドキドキし始めた。もしアレが魔物の光だったら?すごく大きな魔物なんじゃ無いだろうか。
パーカスを見上げると、眉を顰めて僕の言った大きな舟の奥をじっと見つめていた。僕はドキドキと不安と恐怖を感じ始めて、パーカスと繋いだ手をぎゅっと握った。何かが起き始めているのは間違いなかった。
「テディ、良いか?ここでじっと待っておるのじゃ。ロバート、湖の管理人は何処におる?」
ロバートは緊張した顔の僕とパーカスの様子に戸惑いながら、少し先に建物のある湖の船着場を指差した。
「ロバート、テディと離れないでここで待っていなさい。決して湖に降りてはならぬぞ。テディ、私はアレを確認してくる。場合によっては竜化しなければならぬかもしれぬが、心配するな。私は強いからの。」
そう言って、僕の頭を撫でると、足早に店の階段を降りて行った。僕たちが手摺りから覗き込んで居ると、店から船着場へ走るパーカスが見えた。500歳と言っていたけど、あの俊敏さは一体何処から出てくるのだろう。
「‥一体どう言う事なんですか、テディ様。」
僕はドキドキしながら、湖水を睨みながら言った。
「ぱーかちゅ、もちかちて、アレ、やっちゅけゆ。ふにぇのちと、あびゅない…。」
僕の意味する事の全部は伝わってないかもしれないけれど、ロバートにも何か大変な事が起こりつつある事が分かった様だった。ロバートは店の人を呼ぶと、何か言付けて僕と手を繋いだ。僕の身体にはロバートの尻尾まで巻きついている。
「私がテディ様をお守りしますからね。今、ブレート様に急いでおいでくださる様に言付けました。大変な事が起きないといいのですが。」
僕たちの会話を聞いていたのか、周囲の獣人達が顔を見合わせた。そして戸惑いながら湖に目を向けた時、辺りに警報音が響き渡った。すると湖水の船がゆっくりと船着場の方へ戻り始めた。でも僕にはもっと恐ろしい光景が見えていた。
大きな舟の向こうに見えていたボンヤリとした光は、今やこちらへ向かって進むその舟の真下でさっきよりも強く光っていた。僕の知っている魔物の光の何倍も大きなソレは、想像したくも無い大きな魔物に間違いなかった。
僕はロバートの手をぎゅっと握って呟いた。
「もう、らめら…!」
その時大きな影が湖畔から湖の上に一気に飛び出した。それは大きな黒い竜、パーカスだった。僕のところまで黒竜の立てる風圧が感じられるほどだった。
「ぱーかちゅ!ふにぇ!たちゅけてぇ!」
そう叫んで、固唾を呑んで目の前の光景を見守ることしか僕に出来る事はなかった。
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多くの獣人達が興奮した様に大小様々な舟を浮かべて、網を放っていた。ビチビチと跳ねるのはどう見てもさっき食べた双頭魔魚の様だった。薄い水色の体はボンヤリと透けて、骨の様なものは見えない。赤いひとつ目が網の中でいくつも目立っていた。
「ぱーかちゅ!ちゅごい!いっぱい!」
思わず興奮して指差せば、パーカスもまた目を輝かせて、この滅多に見れないという光景を楽しんでいた。僕は後ろに立っている僕の護衛である虎獣人のロバートをパーカスの肩越しに覗き込んで呼びかけた。
「ろばーちょ!みちゃ?ちゅごいねー?」
ロバートは強面を緩めて、嬉しげに笑って頷いた。
「ええ、テディ様。私はここで生まれ育ちましたが、こんな光景は生まれて初めてです。知り合いの老人もこんな事は聞いたことがないと言ってましたよ。」
パーカスが振り向いてロバートに尋ねた。
「老人もそう言っていたのかの?」
ロバートは頷いて湖の喧騒を眺めながら言った。
「ええ。元々美味しくて人気のある双頭魔魚は、湖の底近くに生息している魔魚なんだそうです。だから湖面近くで網に囚われる事などほとんど無いらしくて。大抵獲れる時は嵐などで湖が荒れた時に、ちらほら迷い出た単体が獲られる様です。」
するとパーカスは眉を顰めて湖を睨みつける様に見つめていた。それから僕に小声で尋ねた。
「…テディの目には、湖はどう見えるかの。双頭魔魚も魔物と言えども、魔石ほどの大きさのモノはないじゃろうが…。」
パーカスが僕の魔力が見えるアレを教えて欲しいのかと気がついて、首を伸ばした。確かに網の中の双頭魔魚はキラキラして見える。それは魔魚自身がボンヤリ光って見えてるせいでもあった。
とは言え、僕は大きな舟が繰り出している辺りにボンヤリ湖面を光らせているものが何か知りたかった。大群がいるのかもしれない。
「ぱーかちゅ、もっと、あっちいきゅ!ひかっちぇる!」
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僕はパーカスの腕の中から降りると、獣人達の脚の間に入って一番前まで進むと、手摺りを掴んで湖を見下ろした。素晴らしい眺めだった。キラキラと透ける青い双頭魔魚の体と赤い目、そして翡翠色の湖水。大小の舟や、賑やかなその熱気。
まして僕には魔力が光って見えるので、キラキラが過剰な位だ。じっと見ていると、パーカスと虎獣人のロバートが直ぐ後ろに来ていた。
「テディ、落ちない様に気をつけるのじゃよ。ほら、手を繋ぐのじゃ。」
僕は気もそぞろながらパーカスに片手を繋がれて、手摺りの間から顔を出して熱中して眺めていた。なんだかさっきと変わった気がする。僕は首を傾げてパーカスに教えた。
「ぱーかちゅ、あちょこ、おっきいふにぇのおきゅ、ちゃっきよりひかっちぇる!…もちかちてまもろ?」
大きな舟は漁をすると言うより、船遊び用っぽかった。子供も含む数人の獣人が乗っているのが見えた。その舟の向こう側の湖水がさっきよりも明るく光ってる気がしたんだ。僕は急にドキドキし始めた。もしアレが魔物の光だったら?すごく大きな魔物なんじゃ無いだろうか。
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「テディ、良いか?ここでじっと待っておるのじゃ。ロバート、湖の管理人は何処におる?」
ロバートは緊張した顔の僕とパーカスの様子に戸惑いながら、少し先に建物のある湖の船着場を指差した。
「ロバート、テディと離れないでここで待っていなさい。決して湖に降りてはならぬぞ。テディ、私はアレを確認してくる。場合によっては竜化しなければならぬかもしれぬが、心配するな。私は強いからの。」
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「‥一体どう言う事なんですか、テディ様。」
僕はドキドキしながら、湖水を睨みながら言った。
「ぱーかちゅ、もちかちて、アレ、やっちゅけゆ。ふにぇのちと、あびゅない…。」
僕の意味する事の全部は伝わってないかもしれないけれど、ロバートにも何か大変な事が起こりつつある事が分かった様だった。ロバートは店の人を呼ぶと、何か言付けて僕と手を繋いだ。僕の身体にはロバートの尻尾まで巻きついている。
「私がテディ様をお守りしますからね。今、ブレート様に急いでおいでくださる様に言付けました。大変な事が起きないといいのですが。」
僕たちの会話を聞いていたのか、周囲の獣人達が顔を見合わせた。そして戸惑いながら湖に目を向けた時、辺りに警報音が響き渡った。すると湖水の船がゆっくりと船着場の方へ戻り始めた。でも僕にはもっと恐ろしい光景が見えていた。
大きな舟の向こうに見えていたボンヤリとした光は、今やこちらへ向かって進むその舟の真下でさっきよりも強く光っていた。僕の知っている魔物の光の何倍も大きなソレは、想像したくも無い大きな魔物に間違いなかった。
僕はロバートの手をぎゅっと握って呟いた。
「もう、らめら…!」
その時大きな影が湖畔から湖の上に一気に飛び出した。それは大きな黒い竜、パーカスだった。僕のところまで黒竜の立てる風圧が感じられるほどだった。
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