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目覚め
下手をしたらしい
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お茶を美味しそうに飲んでからあっさりと立ち去ったセデアスを見送った後、サーブはもう一度テラスの椅子に座り込んだ。仕事の早い侍女が、もう茶器を片してしまっている。
空っぽなテーブルを眺めながら小さく溜息をつくと、サーブは腕を組んで目の前の中庭を眺めた。
「サーブ様、お客様はお帰りですか?」
状況は知っているくせに、敢えて聞いてくる所に遠慮がない執事見習いのデニーを横目で見たサーブは口を尖らせた。
「ああ、完全に怒らせた。遊び相手をこんな場所に連れて来るのは駄目なんだと。」
テーブルに軽い果実酒の入った足付きグラスを置きながら、デニーは独り言の様に呟いた。
「サーブ様がこちらにご学友をお連れになるのは初めてでしたね。」
サーブはまたもやセデアスの身分を聞くのを忘れてしまったと気がついて、顔を顰めた。
「…別に学友では無いけどな。だが、学生には違いないだろうが。王都にはいくらでも学校はあるから、その中のいずれかだろう。」
「どう言ったお知り合いなのですか?お部屋にお泊まりになるかもしれないと仰いましたが、サーブ様はその様なお相手をこちらにお連れした事もございませんが。」
サーブはデニーに言われて、実際になぜ屋敷にセデアスを連れてきてしまったのだろうと考え込んだ。遊び相手だったら前回の様に連れ込み宿で十分だった筈だ。そのための金が無いわけでもない。
「…今度は正式にご招待差し上げたらいかがですか?あの時のサーブ様の態度では誤解を生じさせたのではと思いましたので。」
デニーはそれだけ言うと、礼をしてテラスから部屋に戻って行ってしまった。
執事見習いのくせにズバズバと言いたい事だけ言う食えない男だ。正執事である父親の跡継ぎとしていずれ兄上に仕えるのだろうが、余計な事を彼らに言わないだけの信頼があるせいで思わずアドバイスに耳を傾けてしまう。
「…遊び相手って言ったのはセデアスの方なんだよ。」
サーブはそう一人ごちると、果実酒を喉に流し込んだ。
やましい気持ちがあったとは言え、自分はセデアスを客人として屋敷に引っ張り込んだ。そんな言い訳は通用しないのだろうか。セデアスが反対しなければ、お茶を飲んでからあの柔らかな身体を堪能したのは間違いない。
それこそ本人が嫌がらなければ朝まで…。
連れ込み宿に連れて行きたくなかったのはサーブの考えだった。あそこに一緒に行くのが遊び相手だとすれば、ここに連れてきたのは…。自分でもよくわからない感覚に答えは出なかった。
セデアスと目が合うと身体が熱くなるし、ザワザワして来る。まるで思春期の様な激しい感覚に我ながら驚いてしまう。それを誤魔化すために要らぬ事を言ってしまったかもしれない。
結局袖にされたのは自分なのだろうかと、サーブは椅子に大きな身体を沈めてため息をついた。自分はセデアスの遊び相手で身体目当てらしいからな。セデアスにとってみたら、色々教えてくれる都合の良い相手に過ぎないのかもしれない。
今までサーブ自身も都合のいい相手としか付き合って来なかったせいで、自分がそう言う立場になるとどうやってそこから這い上がれば良いのかまるで分からなかった。
とは言えサーブは、何も知らなかったセデアスが初めて気を許して受け入れた最初の相手だと言う事に、何処か希望を持っていた。そう、今日本屋を出た時に目の前に飛び込んできたセデアスの驚く様な綺麗さ、変貌ぶりに驚かされたとしても。
「くそっ、やっぱり下手をしたな。次の約束どころか、嫌われた。本もここに届けられたら、もうお手上げだ。」
サーブはデニーに頼み事をしなければならなくなった事に気づいて、ますます顔を顰めた。
空っぽなテーブルを眺めながら小さく溜息をつくと、サーブは腕を組んで目の前の中庭を眺めた。
「サーブ様、お客様はお帰りですか?」
状況は知っているくせに、敢えて聞いてくる所に遠慮がない執事見習いのデニーを横目で見たサーブは口を尖らせた。
「ああ、完全に怒らせた。遊び相手をこんな場所に連れて来るのは駄目なんだと。」
テーブルに軽い果実酒の入った足付きグラスを置きながら、デニーは独り言の様に呟いた。
「サーブ様がこちらにご学友をお連れになるのは初めてでしたね。」
サーブはまたもやセデアスの身分を聞くのを忘れてしまったと気がついて、顔を顰めた。
「…別に学友では無いけどな。だが、学生には違いないだろうが。王都にはいくらでも学校はあるから、その中のいずれかだろう。」
「どう言ったお知り合いなのですか?お部屋にお泊まりになるかもしれないと仰いましたが、サーブ様はその様なお相手をこちらにお連れした事もございませんが。」
サーブはデニーに言われて、実際になぜ屋敷にセデアスを連れてきてしまったのだろうと考え込んだ。遊び相手だったら前回の様に連れ込み宿で十分だった筈だ。そのための金が無いわけでもない。
「…今度は正式にご招待差し上げたらいかがですか?あの時のサーブ様の態度では誤解を生じさせたのではと思いましたので。」
デニーはそれだけ言うと、礼をしてテラスから部屋に戻って行ってしまった。
執事見習いのくせにズバズバと言いたい事だけ言う食えない男だ。正執事である父親の跡継ぎとしていずれ兄上に仕えるのだろうが、余計な事を彼らに言わないだけの信頼があるせいで思わずアドバイスに耳を傾けてしまう。
「…遊び相手って言ったのはセデアスの方なんだよ。」
サーブはそう一人ごちると、果実酒を喉に流し込んだ。
やましい気持ちがあったとは言え、自分はセデアスを客人として屋敷に引っ張り込んだ。そんな言い訳は通用しないのだろうか。セデアスが反対しなければ、お茶を飲んでからあの柔らかな身体を堪能したのは間違いない。
それこそ本人が嫌がらなければ朝まで…。
連れ込み宿に連れて行きたくなかったのはサーブの考えだった。あそこに一緒に行くのが遊び相手だとすれば、ここに連れてきたのは…。自分でもよくわからない感覚に答えは出なかった。
セデアスと目が合うと身体が熱くなるし、ザワザワして来る。まるで思春期の様な激しい感覚に我ながら驚いてしまう。それを誤魔化すために要らぬ事を言ってしまったかもしれない。
結局袖にされたのは自分なのだろうかと、サーブは椅子に大きな身体を沈めてため息をついた。自分はセデアスの遊び相手で身体目当てらしいからな。セデアスにとってみたら、色々教えてくれる都合の良い相手に過ぎないのかもしれない。
今までサーブ自身も都合のいい相手としか付き合って来なかったせいで、自分がそう言う立場になるとどうやってそこから這い上がれば良いのかまるで分からなかった。
とは言えサーブは、何も知らなかったセデアスが初めて気を許して受け入れた最初の相手だと言う事に、何処か希望を持っていた。そう、今日本屋を出た時に目の前に飛び込んできたセデアスの驚く様な綺麗さ、変貌ぶりに驚かされたとしても。
「くそっ、やっぱり下手をしたな。次の約束どころか、嫌われた。本もここに届けられたら、もうお手上げだ。」
サーブはデニーに頼み事をしなければならなくなった事に気づいて、ますます顔を顰めた。
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