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行動
滅多にない見もの
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切れそうな空気というのはこの事を言うのかもしれない。
目の前で強張った顔で睨み合うお二人さんの醸し出す空気に、コンバルトは喉を鳴らした。ああ、今夜は退屈とはおさらばだ。
週末と言えば愛人としっぽりするのが定例とは言え、この会員制の酒場に集まるのはそんな事では退屈を拭えなくなった奴らばかりだ。年齢で自然に別れるスペースがそれぞれ盛り上がりを見せる様に、この先年を取ってもこの退屈からは逃れられないのかと、コンバルトは小さく溜息をついたばかりだ。
だからあの一目置かれるサーブが顔を見せるなり振られただとか公言するのは、諜報を生業とするうちの様な家系出身の自分には垂涎の話題だった。
黙っていても目の前に列を成すような、将来騎士団長も見えそうな有能な青年であるサーブは、そもそも特定の相手に執着する様な奴じゃない。勝手に期待して、勝手に砕け散っていく触れ合ったお相手の数が多くても、それに気を留めるような真面目な奴でもないからだ。
そのサーブが明らかに困惑した様子で、恋愛初心者のような事を呟くのだからその面白さと言ったら無かった。一体どんな相手がこのサーブを袖にすると言うのだろう。
この世界は血統や地位が大きく物を言う様になって久しい。いつの時代でも実力は色々な要素で積み上がってくるものだからそれを否定する訳じゃない。分かりやすくなった代わりに、下剋上が難しくなったこの風潮を覆す事などますます難しいだろう。
自分もその力のある血統の中に居ながら、どこかでそうでない世界を夢見ているのは誰にも言っていない。そんな甘い世界を思い描くのは、情報の錯綜する中で裏を知り過ぎた弊害なのかもしれない。
けれども今夜はそれで終わらなかった。
滅多に顔を見せない吸血族のイシスが似た様な顔をしながらやって来たからだ。このゾクゾクする様な何か起きそうな予感に、一方で混乱を好むコンバルトの血が走り出した。
燻った火種に火を放つのは簡単だった。
驚くべき事に、二人は同じ人物に悩まされているのが明らかになった。
確かにイシスは同室者だから当然として、サーブは一体どこでそのセデアスなる者と知り合ったというのだろう。その疑問はサーブの口から明らかにされなかった。
自分の手の中の石の価値を広げて見せるほど、サーブは簡単な男ではない。
「可愛いセデアスを放って置け無かったんだ。まるで巣から出た若雛よろしく危なっかしいあの子に、飛び方を教えてやったのは本人の希望があったからだ。」
サーブを知っている者としたら、その言葉通りに受け取るのは難しい。この男は身体能力だけでなく言語能力もそこそこだ。言いくるめるという言い方は合ってるか分からないが、似た様なテクニックは自然身についている。
内心何を考えているのか分かりずらいイシスは、それでも強烈な一矢をサーブに打ち込んだ。
コンバルトは高度なボードゲームを眺めている気分で、彼らのやり取りを見ていた。それにしても明らかにそのセデアスという青年が気になり過ぎる。
意図せずにこの二人を手玉に取っている感が拭えないものの、そこにはそう出来るだけの何か理由がある筈だ。イシスに痛いところを突かれて眉間に皺を寄せたサーブが立ち上がって帰らない様に、コンバルトはイシスに尋ねた。
「その転校生ってサーブの話を聞いてると、普通に大人しい感じに思えるけど、イシスはそんなタイプは普段相手にもしないだろう?同室だからって理由でそこまで肩入れするのもらしくないな?
教えてくれよ、何がどうなってる?」
二人の視線が自分に集まったのに気づいて、コンバルトは内心ニヤリと笑った。
コイツらの思い通りにならない姿を揶揄うのも楽しいが、手に入れたいのはセデアスと言う名前の青年の情報だ。諜報に長けているコンバルトの家系の血が、そこにお宝めいたものを感じたのは確かだった。
目の前で強張った顔で睨み合うお二人さんの醸し出す空気に、コンバルトは喉を鳴らした。ああ、今夜は退屈とはおさらばだ。
週末と言えば愛人としっぽりするのが定例とは言え、この会員制の酒場に集まるのはそんな事では退屈を拭えなくなった奴らばかりだ。年齢で自然に別れるスペースがそれぞれ盛り上がりを見せる様に、この先年を取ってもこの退屈からは逃れられないのかと、コンバルトは小さく溜息をついたばかりだ。
だからあの一目置かれるサーブが顔を見せるなり振られただとか公言するのは、諜報を生業とするうちの様な家系出身の自分には垂涎の話題だった。
黙っていても目の前に列を成すような、将来騎士団長も見えそうな有能な青年であるサーブは、そもそも特定の相手に執着する様な奴じゃない。勝手に期待して、勝手に砕け散っていく触れ合ったお相手の数が多くても、それに気を留めるような真面目な奴でもないからだ。
そのサーブが明らかに困惑した様子で、恋愛初心者のような事を呟くのだからその面白さと言ったら無かった。一体どんな相手がこのサーブを袖にすると言うのだろう。
この世界は血統や地位が大きく物を言う様になって久しい。いつの時代でも実力は色々な要素で積み上がってくるものだからそれを否定する訳じゃない。分かりやすくなった代わりに、下剋上が難しくなったこの風潮を覆す事などますます難しいだろう。
自分もその力のある血統の中に居ながら、どこかでそうでない世界を夢見ているのは誰にも言っていない。そんな甘い世界を思い描くのは、情報の錯綜する中で裏を知り過ぎた弊害なのかもしれない。
けれども今夜はそれで終わらなかった。
滅多に顔を見せない吸血族のイシスが似た様な顔をしながらやって来たからだ。このゾクゾクする様な何か起きそうな予感に、一方で混乱を好むコンバルトの血が走り出した。
燻った火種に火を放つのは簡単だった。
驚くべき事に、二人は同じ人物に悩まされているのが明らかになった。
確かにイシスは同室者だから当然として、サーブは一体どこでそのセデアスなる者と知り合ったというのだろう。その疑問はサーブの口から明らかにされなかった。
自分の手の中の石の価値を広げて見せるほど、サーブは簡単な男ではない。
「可愛いセデアスを放って置け無かったんだ。まるで巣から出た若雛よろしく危なっかしいあの子に、飛び方を教えてやったのは本人の希望があったからだ。」
サーブを知っている者としたら、その言葉通りに受け取るのは難しい。この男は身体能力だけでなく言語能力もそこそこだ。言いくるめるという言い方は合ってるか分からないが、似た様なテクニックは自然身についている。
内心何を考えているのか分かりずらいイシスは、それでも強烈な一矢をサーブに打ち込んだ。
コンバルトは高度なボードゲームを眺めている気分で、彼らのやり取りを見ていた。それにしても明らかにそのセデアスという青年が気になり過ぎる。
意図せずにこの二人を手玉に取っている感が拭えないものの、そこにはそう出来るだけの何か理由がある筈だ。イシスに痛いところを突かれて眉間に皺を寄せたサーブが立ち上がって帰らない様に、コンバルトはイシスに尋ねた。
「その転校生ってサーブの話を聞いてると、普通に大人しい感じに思えるけど、イシスはそんなタイプは普段相手にもしないだろう?同室だからって理由でそこまで肩入れするのもらしくないな?
教えてくれよ、何がどうなってる?」
二人の視線が自分に集まったのに気づいて、コンバルトは内心ニヤリと笑った。
コイツらの思い通りにならない姿を揶揄うのも楽しいが、手に入れたいのはセデアスと言う名前の青年の情報だ。諜報に長けているコンバルトの家系の血が、そこにお宝めいたものを感じたのは確かだった。
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