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親密さとは
親密な知り合いのキスは
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橘の舌が私の唇の裏を柔らかくなぞると、私は気持ちよさでうっとりとため息をついた。私の手が無意識に橘の腕を握りしめていた事にも気がつけずに、私は橘の甘いキスに酔いしれていた。
今や、大胆に私の口の中でうごめく橘の舌から逃げ回っていた私の舌も、甘く喰まれて、吸われて、私はもっとそれが欲しくなって、橘の舌に自分から追い縋っていた。
急に橘が私をぎゅっと抱きしめる力が強くなって、私はすっかり力の抜けた身体を預けて、更に橘とのキスにのめり込んだ。私には初めての何も考えられない動物的なキスで蕩けてしまって、私は橘がそっと離れていっても目を開けることが出来なかった。
私が、ぐったりと橘に支えられながら瞼を開けると、そこにはぎらついたオスの眼差しをした橘が私を見つめていた。私は自分を欲しがる橘を眼差しから感じてゾクゾクさせられた。
一方で、さっきまでの焼け付くような頭の中がだんだんと冷えてきて、私は橘の腕の中からぎこちなく身を起こすと、腕を突っ張ってふらつきながら橘から身体を離そうとした。
でも橘は私をそっと抱き締めたまま離そうとしなかった。そして耳元でそっと囁いた。
「もう少しこのままで…。君が欲しくて我を忘れてしまった。こんな気分は私も初めてだ…。」
私は橘に揶揄われると思っていたので、橘の嘘を感じない言葉を聞かされて、何だか離れ難くてそのまま橘の胸に抱きしめられていた。どのくらいそうしていたのか分からなかったけれど、橘は私に言った。
「これ以上君の甘い香りを嗅いでいたら、帰れなくなりそうだ…。親密な知り合いは今日は帰るよ。それ以上の関係になったら、もう君を逃してはやれないけれど。」
私が橘の言葉にハッとしてふらつきながら離れると、橘はやっぱり私を真っ直ぐな眼差しで捕らえていた。私は訳もなく心臓が五月蝿く拍動するのを感じて、何も言えなかった。橘は手を引いて階段を登ると、私の身体をそっとマンションのポストの並ぶドアの中へ入れて囁いた。
「ちゃんと部屋に鍵を掛けなさい。私が部屋まで送っていったら、うっかり入ってしまいそうだから今日はここでお別れだ。おやすみ。また連絡する。…必ず電話に出てくれ。頼む。」
そう言うと、ガラスドアを閉めてポーチの階段を降りて行った。私は闇夜に消えて行く橘の後ろ姿をぼんやりと見送った。
部屋に帰宅した私は自分のベッドに突っ伏すと、声にならないうめき声を枕に吸わせていた。何やっちゃってるの、私。あんなキスを橘征一と、あんなマンションの入り口で!
しかも今日は野村さんと水族館デートしたっていうのに。その余韻も残ってるうちに、あんな男とあんなにエッチなキスして…。
私は仰向けになると、天井を見上げて指先で自分の唇をなぞった。橘とのキスは嫌じゃなかった。それどころか、もっとして欲しくて強請ったのだろうか。立ってられなくなって、橘に抱きしめられて。
見た目より厚みのある身体はガッチリとしていて、安心感があった。私は認めたくないけれど、あいつの腕の中で突き飛ばしもせずに抱き締められ続けられていた。
私は、すっかり迷子になっていた。私は橘を嫌な男だと思っていたはずだ。もちろん今も。…たぶん。でもキスされて突き飛ばさなかったのはどうして?
私はとんでもない考えに辿り着く前に起き上がって、バックからスマホを取り出した。野村さんにお礼のメッセージを送らないといけない。けれど今の私は、なんて言葉を送ったら良いか分からなくなっていた。
実際型通りにしか送る言葉がない。だって、野村さんと分かれてすぐに、別の男とキスする様な女なんだから。従姉妹の美波がいたら、きっと『美那もやるわね』ってニヤリと笑って誉めてくれるかもしれないけれど。
そう言えば橘の話では美波が別れを回避するために逃げ回っていたって言ってた?あの子がそんな事するだろうか?…うん、するかも。美波は自分が振られそうな時は次の男をさっさと作って、絶対に自分が振られるのではなく、振る方なのだと立場を固めがちなのだ。
そう言えば、学生の頃からそんな事があったっけ。私はため息を吐いて、願わくば今の美波のお相手が変な男ではありませんようにと祈ることしか出来なかった。
手の中のスマホが震えて、着信を知らせるランプが点滅した。橘征一からの着信だった。別れ際に必ず出てくれって言ってたっけ。私は急き立てられるように慌てて受信に指を触れた。
「…もしもし、美那です。」
スマホから聞こえてくるのは甘くて低い橘征一の声だった。
「出てくれたね。…ちゃんと家に入ったか確かめられなかったから、美那の無事な声が聞けて安心したよ。
たぶん近いうちに弟が退院することになると思う。随分元気だからね。帰国後は私のマンションに居候していたから、そのまま私のマンションで療養することになるはずだ。
弟が君に謝りたいって言ってるんだ。もし良かったら、来週末にうちに会いにきてやってくれないか。土曜日、11時に美那の家まで車で迎えに行くよ。大丈夫かい?」
今や、大胆に私の口の中でうごめく橘の舌から逃げ回っていた私の舌も、甘く喰まれて、吸われて、私はもっとそれが欲しくなって、橘の舌に自分から追い縋っていた。
急に橘が私をぎゅっと抱きしめる力が強くなって、私はすっかり力の抜けた身体を預けて、更に橘とのキスにのめり込んだ。私には初めての何も考えられない動物的なキスで蕩けてしまって、私は橘がそっと離れていっても目を開けることが出来なかった。
私が、ぐったりと橘に支えられながら瞼を開けると、そこにはぎらついたオスの眼差しをした橘が私を見つめていた。私は自分を欲しがる橘を眼差しから感じてゾクゾクさせられた。
一方で、さっきまでの焼け付くような頭の中がだんだんと冷えてきて、私は橘の腕の中からぎこちなく身を起こすと、腕を突っ張ってふらつきながら橘から身体を離そうとした。
でも橘は私をそっと抱き締めたまま離そうとしなかった。そして耳元でそっと囁いた。
「もう少しこのままで…。君が欲しくて我を忘れてしまった。こんな気分は私も初めてだ…。」
私は橘に揶揄われると思っていたので、橘の嘘を感じない言葉を聞かされて、何だか離れ難くてそのまま橘の胸に抱きしめられていた。どのくらいそうしていたのか分からなかったけれど、橘は私に言った。
「これ以上君の甘い香りを嗅いでいたら、帰れなくなりそうだ…。親密な知り合いは今日は帰るよ。それ以上の関係になったら、もう君を逃してはやれないけれど。」
私が橘の言葉にハッとしてふらつきながら離れると、橘はやっぱり私を真っ直ぐな眼差しで捕らえていた。私は訳もなく心臓が五月蝿く拍動するのを感じて、何も言えなかった。橘は手を引いて階段を登ると、私の身体をそっとマンションのポストの並ぶドアの中へ入れて囁いた。
「ちゃんと部屋に鍵を掛けなさい。私が部屋まで送っていったら、うっかり入ってしまいそうだから今日はここでお別れだ。おやすみ。また連絡する。…必ず電話に出てくれ。頼む。」
そう言うと、ガラスドアを閉めてポーチの階段を降りて行った。私は闇夜に消えて行く橘の後ろ姿をぼんやりと見送った。
部屋に帰宅した私は自分のベッドに突っ伏すと、声にならないうめき声を枕に吸わせていた。何やっちゃってるの、私。あんなキスを橘征一と、あんなマンションの入り口で!
しかも今日は野村さんと水族館デートしたっていうのに。その余韻も残ってるうちに、あんな男とあんなにエッチなキスして…。
私は仰向けになると、天井を見上げて指先で自分の唇をなぞった。橘とのキスは嫌じゃなかった。それどころか、もっとして欲しくて強請ったのだろうか。立ってられなくなって、橘に抱きしめられて。
見た目より厚みのある身体はガッチリとしていて、安心感があった。私は認めたくないけれど、あいつの腕の中で突き飛ばしもせずに抱き締められ続けられていた。
私は、すっかり迷子になっていた。私は橘を嫌な男だと思っていたはずだ。もちろん今も。…たぶん。でもキスされて突き飛ばさなかったのはどうして?
私はとんでもない考えに辿り着く前に起き上がって、バックからスマホを取り出した。野村さんにお礼のメッセージを送らないといけない。けれど今の私は、なんて言葉を送ったら良いか分からなくなっていた。
実際型通りにしか送る言葉がない。だって、野村さんと分かれてすぐに、別の男とキスする様な女なんだから。従姉妹の美波がいたら、きっと『美那もやるわね』ってニヤリと笑って誉めてくれるかもしれないけれど。
そう言えば橘の話では美波が別れを回避するために逃げ回っていたって言ってた?あの子がそんな事するだろうか?…うん、するかも。美波は自分が振られそうな時は次の男をさっさと作って、絶対に自分が振られるのではなく、振る方なのだと立場を固めがちなのだ。
そう言えば、学生の頃からそんな事があったっけ。私はため息を吐いて、願わくば今の美波のお相手が変な男ではありませんようにと祈ることしか出来なかった。
手の中のスマホが震えて、着信を知らせるランプが点滅した。橘征一からの着信だった。別れ際に必ず出てくれって言ってたっけ。私は急き立てられるように慌てて受信に指を触れた。
「…もしもし、美那です。」
スマホから聞こえてくるのは甘くて低い橘征一の声だった。
「出てくれたね。…ちゃんと家に入ったか確かめられなかったから、美那の無事な声が聞けて安心したよ。
たぶん近いうちに弟が退院することになると思う。随分元気だからね。帰国後は私のマンションに居候していたから、そのまま私のマンションで療養することになるはずだ。
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