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僕の足元の沼地
ディック先生の話
ディック先生は悪戯っぽくウインクすると、僕を見て尋ねた。
「この国の未来の国王、アスラン皇太子に会った感想を是非聞きたいね。」
僕は一見穏やかそうに見えて、その実隙のないディック先生が、僕の答えを聞くまで絶対に逃してくれなさそうだとため息をついた。
「先生、随分好奇心旺盛ですね?取り敢えず勉強からしませんか?僕、せっかく予習してきたのに、どんどん頭から抜けてしまいそうです。」
ディック先生は弾ける様に笑うと、教室のドアを開きながら言った。
「ハハハ、これは一本取られたな。全く君は可愛い生徒だよ。先生をしていて、こんなに学習意欲の高い生徒は初めてだ。君の言う事ももっともだ。さぁ、先にやるべき事をやってしまおう。」
それから僕はいつも通り、言語の講義を受けた。先生は僕の覚えが早いから、来年やるべき範囲も始めてもいいと思うと言ってくれた。
僕は将来どうやって生きていくのか決めていないけれど、早め早めにいろんなことが出来るようになりたかった。僕が張り切って良い返事をしたので、ますます先生は僕をお気に入りだと笑いながら揶揄った。
いつも講義が終わる一刻程前に助手が持ってきてくれるお茶のセットを、自ら淹れてくれた先生は、僕にソーサーを渡しながら、さぁ、さっきの話の続きをしようと言った。
僕は逃れられないと覚悟を決めて答えた。
「アスラン皇太子の印象ですよね?ぱっと見は、物語に出てくるような完璧な王子様だと思いました。でも僕に話しかけてくれた印象は、すごく気さくで優しい印象です。
でも正直僕は、皇太子と知り合いになるのは望んでいなかったんです。だからうまく逃げようとしたんですけど、結局捕まってしまって…。王族って望めば全て叶えられるんでしょう?それって、何だか…。」
僕がそう話すと、ディック先生は顎に手を当てて考え込んでいた。それから僕の顔を見て話し出した。
「マモル、アスラン皇太子は見た通りにそつがない男だ。小さい頃から皇太子になるべくして育てられている彼は、確かに望めばほとんどのものが叶えられる立場だろう。
でも友人の私から言えるのは、彼はいつも多くを望むことなく、自分に期待された国民の願いを果たそうとしている様に見えたよ。私は彼が優しくて、同時に強い獣人だと知っているんだ。
彼こそ王たる逸材なのは間違いない。そして彼が小さな望みを胸に抱いていることも知ってる。…彼は常に心から自分が愛し愛される相手を探している。
私は王というのは、一見華やかだが、自分を押し殺して自由に生きられないという大きな代償を払うのだと思う。だから望んでも普通には生きられないアスランにとって、本当の愛を得るという唯一の望みが叶うといいなと思っているんだよ。」
「この国の未来の国王、アスラン皇太子に会った感想を是非聞きたいね。」
僕は一見穏やかそうに見えて、その実隙のないディック先生が、僕の答えを聞くまで絶対に逃してくれなさそうだとため息をついた。
「先生、随分好奇心旺盛ですね?取り敢えず勉強からしませんか?僕、せっかく予習してきたのに、どんどん頭から抜けてしまいそうです。」
ディック先生は弾ける様に笑うと、教室のドアを開きながら言った。
「ハハハ、これは一本取られたな。全く君は可愛い生徒だよ。先生をしていて、こんなに学習意欲の高い生徒は初めてだ。君の言う事ももっともだ。さぁ、先にやるべき事をやってしまおう。」
それから僕はいつも通り、言語の講義を受けた。先生は僕の覚えが早いから、来年やるべき範囲も始めてもいいと思うと言ってくれた。
僕は将来どうやって生きていくのか決めていないけれど、早め早めにいろんなことが出来るようになりたかった。僕が張り切って良い返事をしたので、ますます先生は僕をお気に入りだと笑いながら揶揄った。
いつも講義が終わる一刻程前に助手が持ってきてくれるお茶のセットを、自ら淹れてくれた先生は、僕にソーサーを渡しながら、さぁ、さっきの話の続きをしようと言った。
僕は逃れられないと覚悟を決めて答えた。
「アスラン皇太子の印象ですよね?ぱっと見は、物語に出てくるような完璧な王子様だと思いました。でも僕に話しかけてくれた印象は、すごく気さくで優しい印象です。
でも正直僕は、皇太子と知り合いになるのは望んでいなかったんです。だからうまく逃げようとしたんですけど、結局捕まってしまって…。王族って望めば全て叶えられるんでしょう?それって、何だか…。」
僕がそう話すと、ディック先生は顎に手を当てて考え込んでいた。それから僕の顔を見て話し出した。
「マモル、アスラン皇太子は見た通りにそつがない男だ。小さい頃から皇太子になるべくして育てられている彼は、確かに望めばほとんどのものが叶えられる立場だろう。
でも友人の私から言えるのは、彼はいつも多くを望むことなく、自分に期待された国民の願いを果たそうとしている様に見えたよ。私は彼が優しくて、同時に強い獣人だと知っているんだ。
彼こそ王たる逸材なのは間違いない。そして彼が小さな望みを胸に抱いていることも知ってる。…彼は常に心から自分が愛し愛される相手を探している。
私は王というのは、一見華やかだが、自分を押し殺して自由に生きられないという大きな代償を払うのだと思う。だから望んでも普通には生きられないアスランにとって、本当の愛を得るという唯一の望みが叶うといいなと思っているんだよ。」
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