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竜の森

竜のこと

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結局僕は、みんなの前で竜についての話をすることになった。森の方で時折聞こえるロクシーの嬉しそうな声ににっこりすると、僕は話し始めた。

「皆さんがどのくらい竜についてご存知なのかは、僕には分かりません。そもそも僕の国でも竜そのものの姿を見た事は無いんです。

けれど、竜については色々な話がありました。ある意味、竜は時に神のような神聖なものとして扱われていました。それは大きな力や魔法、人知を超えた力を持つ、そういった意味で神聖なものなんです。

僕たちの国は僕を見ればよくお分かりのように、この国の獣人の方達に比べたら見るからに軟弱でしょう?だから力の強いものに憧れを持つんでしょうね。


そういう意味で、竜は恐れを抱きつつも、とても崇められていたんです。神話や物語、いろいろなものに竜は存在していて、ある意味非常に身近だったんです。

もしかしたらロクシーは僕のそんな竜に対する気持ちを感じて、僕のところにやってきたのかもしれませんね?伯爵は以前言ってましたよね。


ロクシーの変幻自在の姿の在り方を見れば、元々この世界にロクシーのような竜は存在していたのではないかって。ただ皆さんの目に見えなかっただけかもしれないって。もしかしたらその説が一番合っているかもしれませんね。

そうだ、今ロクシーを呼んでみましょうか。僕のところに戻ってきてくれると良いのですが…。」


そう言って僕は崖の端へ向かって歩いた。そして森を見回して、心の中で戻ってきてと念じてから大きな声でロクシーの名前を呼んだ。すると目の前に突然空間を切り裂いて、小さなロクシーが現れた。

僕はロクシーのサイズにびっくりしてしまったけれど、もう変幻自在だったらそれもありかと素直に受け入れた。嬉しそうに僕の腕の中に飛び込んできたロクシーは、僕の顔をペロペロと舐めた。


僕はくすぐったさと、ちゃんと僕のところにロクシーが戻って来てくれた喜びでクスクス笑っていると、ふと後ろが静かな事に気がついた。ロクシーを抱っこしたまま振り向くと、その場にいる皆の目と口がポカンと開いて、唖然とした表情でこちらを見ていた。

あぁ案外ファンタジー内の人って、自分たちがファンタジーの自覚がない分、この手の事に免疫がないのかもしれないな。僕みたいにファンタジー外の人間にとっては、獣人や竜はまさしくファンタジーそのものだ。


だからどっぷりこの世界に慣れちゃうと、何でもありだなって思っちゃうけどね。僕はそんなことを考えたせいで、面白くなっちゃって笑いが止まらなくなってしまった。

伯爵にロクシーをもう少し遊ばせてもいいですかと許可を取って、僕はもう一度腕を伸ばしてロクシーにもうちょっと遊んできていいよと言った。

ロクシーは今度は空中であっという間に大きくなって、また森へと向かう美しい飛翔を見せてくれたんだ。
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