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家出

王様からの話

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僕はピッピに揺られながら、王宮での謁見を思い出していた。


何も知らされずに呼びつけられた僕と伯爵は、身支度もそのままに王様が現れるのを待っていた。いや、伯爵は僕に心配げな顔を向けていたので、これから何を言われるのかある程度予測しているのかもしれない。

僕は不安な気持ちで王様が部屋に登場するのを待った。ここは公式の場ではない様で、以前に王様に謁見した際にひざまづいた場所とはまるで違う様だった。


そう、言うなれば王のプライベートな書斎という感じ。とはいえ、物凄い豪華な部屋だったけれど。僕が不安を感じながらも部屋の様子を興味深げにキョロキョロしていると、伯爵は少し笑って言った。

「マモル、ここは王の第二執務室だ。あまり他の獣人に聞かせられない事を話す時に使われる。要はその様な話があるという事だよ。」


僕は王様が人間である僕の事に関する何かを話すのだと予測した。しかも内密な内容…。僕は急に胸がドキドキしてきた。僕に答えられる事ならいいけれど、僕はしがない16歳の単純な人間で、広い知識も無い。お役に立てるだろうか。

そう考えた矢先、王様が従者と一緒に部屋に入ってきた。王はいかめしくも、謁見の間でお会いした時よりは少しリラックスした様子で、気さくに声を掛けてくださった。


「リットン伯爵、マモル、急に呼び出して悪かったな。中々時間が取れなくて、急に空きが出たので来てもらった。公式に発表する前に、そなたらと話をしておいた方が良いと思ったのだ。

マモルが少し前に暴力を受けて寝込んだ際、伯爵とは少し話をした。だが、決まる前に直接マモルに尋ねてみたかったのだ。


…マモルは我が王子たちと仲が良いな。というよりは、王子たちがマモルと仲良くしたがっているというのが正解かもしれない。マモルのその人間の魅了に、若い王子たちはすっかり参っている様だ。

そこでマモルに提案がある。マモルはこの獣人の国では唯一無二の人間だ。しかも幻の竜を従えた伝承の人間だ。我としてはマモルにはこの国にずっと留まってもらいたい。


そこで王子たちと結婚してもらえぬか。いや、王妃や側妃になる必要はない。マモルはそんな肩書きなど必要ないくらい、人間として地位を確立しておるからな。

新たな「人間」爵位の創設と、出来れば王子たちとの婚姻を頼みたいのだ。その結婚は何にも縛られないものである。ただし王子二人との結婚が条件だ。どちらか一方では国が争いの種になりかねない。

もし、マモルが望むならばだがな。どうであろう。」

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