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バースの難しさ

僕の名前が?

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「…理玖の名前を騙った奴がいるんだ。」

僕は自分の知らないところで広がっている噂話に、知らずに巻き込まれていたことに呆然とした。あっくんは僕を気遣う様な眼差しで見つめると、僕を胸に抱きしめた。

僕はハッとして、あっくんの胸を手で押し退けた。

「今の話、ちゃんと教えて。僕が巻き込まれてること、知っておいた方がいいと思うから。」


あっくんはため息をつくと渋々話し始めた。

「こんな事、理玖には聞かせたくなかったよ…。だから俺たちも理玖の名前を騙った奴を探してるんだが…。そいつはすっかりシークレットラバーから姿を消したんだ。多分大学生ではないだろう。だから余計見つからない…。」

僕はあっくんの顔を見つめて尋ねた。

「…そのシークレットラバーって何?」


あっくんは少し迷った様に目をうろつかせると、諦めたように言った。

「大学生限定の出会い系なんだけど、どちらかというと性的な事だけを目的に会うサイトなんだ。理玖の名前を名乗った男はSM系で人気のあるQって男だった。絶対名前を名乗らないし、大体一回しか同じ相手と関係しない事で有名な奴だったらしい。

そのQって男が、自分の名前をミヨシ リクだって名乗った。それがSMジャンルで直ぐに噂になって広まった。それを耳にした俺の友人が教えてくれたんだ。


多分、理玖が大学であの男に絡まれたのはそれが原因だ。もちろん、実際Qと関係した人間は、Qと理玖が別人だと直ぐに分かる。でも他の奴らは、人気のある淫乱な男がミヨシリクって名前だと認識してしまったんだ。

本当の理玖を知ってる人は理玖がそんな事するなんて思わないだろうけど、世の中は面白がって嘘だと思っていても話のネタにするだろう?」


僕は思いの外とんでもない事になってると知って、ゾッとしてしまった。僕が誰とでも寝る淫乱な男だと、全然知らない人たちに思われてるの?でも、そんなのどうしたら良いんだろう。一度流れた噂はこんな時代に払拭出来るんだろうか。

「あっくん、僕どうしたら…。」

あっくんは僕をぎゅっと抱きしめて言った。

「…俺に考えがあるんだけど、理玖にとって良いことか分からないんだ。俺の一存じゃ決められないし。三好のおじさんにちゃんと話してみるけど、その前に理玖の承諾が必要だと思って。今から言う話、聞いてくれるか?」

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