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バースの難しさ

篤哉side尊からの忠告

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「篤哉、どうした?そんな難しい顔して。」

目の前の涼介が、俺に尋ねてきたけれど答えられるはずがない。もしかして知ってるかもしれないけど、涼介は理玖の兄貴だ。しかも溺愛してる。俺は眺めていたスマホをポケットに仕舞うと、何でもないとカフェラテを飲んだ。

「どうせ篤哉の頭の中は理玖くんの事でいっぱいでしょうが。こんな奴は放っておいて、今日こそ合コン行こうぜ、涼介。」


壱太の誘いに、涼介はチラッと蓮を見ると肩をすくめて今日は先約があるから無理だと断った。…なんだ?今の。俺は釣られて蓮を見たけど、目線を落とした蓮は何を考えてるのかいつもながら分からなかった。でもちょっと口元が緩んでるな。

「壱太もさ、そろそろ落ち着いたら?俺を見ろよ。こんなに幸せで大丈夫?って時々自分でも心配になるよ。」

俺が壱太を揶揄うと、いつもなら嫌味のひとつでも飛ばす男が俺を見つめて言った。


「俺だって運命の相手に会えたら、溺愛したいのは山々なんだぜ?だけどな、そう簡単に見つかるわけないじゃん?だから色々な相手に会って、俺だけの運命に遭遇するために頑張ってるんだ。

…ひとつ聞いていいか?篤哉はどうして理玖くんの事好きになったんだ?ていうか、いつ運命の相手だって気づいた?」

俺は涼介をチラッと見ると、涼介はニヤつきながら肩をすくめた。


「…そーだな。涼介んちに遊びに行くと、いつもちっちゃくて可愛い理玖がいてさ、抱っこするとあー幸せって気分になったのが最初だな。それで甘やかしてたら、涼介にしょっちゅう怒られてさ。

で、ずっと気になってたんだけど、理玖が6年生でお試しデートしたってこいつに聞いて、居ても立っても居られなくて夜、押しかけたんだ。寝てる理玖の顔見た時に、俺が必要なのは理玖だけだって分かったっていうか。上手く説明できないけどね。」


珍しく真剣な顔をしていた壱太は、急に立ち上がると急用だと慌てて立ち去ってしまった。俺たちはキョトンと壱太を見送ると、俺もちょっと用があるからと席を立った。

さっきSNSで届いた尊からのメッセージが気になっていた。

『朝から理玖のΩの匂いが強くて、抑制剤飲ませました。俺も煽られて持ってたラット抑制剤慌てて飲んだほどです。理由は篤哉さんの方が分かってると思うけど、対策考えた方がいいと思います。報告まで。』

俺は中学部へと足を向けた。
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