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シーソータイム

蓮とバイクで

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昼に蓮に喋りすぎたかと思いながら駅から家に向かっていると、家の前に蓮が待っていた。さっきの今で、ちょっと気まずい俺は顔を顰めて言った。

「…蓮。何?」

蓮は俺にヘルメットを放り投げると、荷物を家に置いてくる様に言った。どうも強制的にバイクに相乗りする事になるみたいだ。こいつなりに俺を気晴らしに連れ出してくれようとしてくれてるのか。


案外頑固な所のある蓮に逆らう気力もなくて、俺は肩をすくめると荷物を玄関に置いてヘルメットを被ると蓮の後ろに跨った。蓮のバイクは時々乗せてもらっていたけれど、いつも手入れが良い美しいフォルムのバイクだった。

俺は乗せてもらうばかりで詳しくなかったけれど、蓮は16歳の頃から乗っていた。今じゃ大型二輪だ。一度バイクが好きなのかと尋ねた事がある。その時蓮は確かこう言った。


『便利だからな。ちょっと夜風に当たりたい時にいいだろ。』

今まさにそれを俺にしてくれようとしてるのかもしれない。走り出したバイクの振動を感じながら、俺は蓮に掴まって流れる景色を見送った。

どれくらい走ったのか、気がつけば潮の匂いを感じた。俺たちは海まで来たみたいだった。砂浜に降りる駐車場には、平日の夜のせいかひと気がなくて、バイクのエンジン音が静かな暗闇に響いた。


俺は強張った身体を軋ませながら、ゆっくりと降りてヘルメットを脱いだ。手渡したヘルメットを蓮がバイクにロックすると、俺たちは黙って砂浜に降りて行った。

波打ち際は月の光に照らされて、ぼんやりと波飛沫が光っていた。俺は不規則に聞こえてくる波の音にリラックスして、堤防の下のブロックに座ると、二人で潮風を楽しんだ。


「俺は時々ここに来るんだ。色々考え過ぎて煮詰まってる時に良いからな。…それに俺、お前に話もあったし。」

俺はそう言う蓮を見た。蓮はしばらく海を見つめていたけど、俺の方を向くと話し続けた。

「俺は涼介が好きだ。こんな時に言うべきじゃないって分かってるけど、前に一度鷺沼先輩とセフレ解消した時、俺が様子見てる間にお前先輩と付き合い出しただろ。


あれは後悔しても仕切れなかった。気持ちは伝えなくちゃダメなんだって思い知らされた。お前がこんなに弱ってる時につけ込むのは狡いって分かってる。

でも俺はずっと涼介が堪らなく好きで、もう黙って見守るのも限界なんだ。…ごめんな。」

そう言う蓮の顔は月明かりに照らされて、俺を怖いぐらい真っ直ぐに見つめていた。

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