コプラのTwitter1分小説 まとめ

事故でもそれは。 お題「吐息」「ゼロ距離」

息が止まった。壬生君の顔が僕の顔の直ぐ目の前に近づいてた。勿論色っぽい話って訳じゃない。でも僕の心臓は飛び跳ねた。大学のゼミで初めて顔を合わせた壬生君は、口数が多い訳では無いけれど、背が高くて部活でいかにも活躍して来ましたという雰囲気の男だった。

「…悪い。」

そう言って、倒れ込んだ僕にのし掛かった身体を持ち上げると、手を伸ばして僕も引っ張り起こしてくれた。僕よりガッチリした手は、何をしたらそうなるのか硬くて大きかった。

壬生君は僕の手を見つめてボソリと言った。

「…女みてぇな手だ。」

僕は恥ずかしさでカッと熱くなって、手を振り解くと壬生君を睨んだ。どうしたって見かけが弱っちい事がコンプレックスな僕には、それは本当の事だけにグッサリ刺さった。



あれから一年が経って、僕に吐息の掛かる距離に壬生貴史は近づいて言う。

「初めて会った時、悠太の事押し潰し掛けた事あったろ？あの時悠太の目覗き込んで、手握って、なんか胸の奥がぎゅっと掴まれるっていうか。

柔らかくて綺麗な手だったから、一気に身体が熱くなって結構パニクってたんだ。あれから色々あったけど、こんな風に悠太と一緒にいられてマジで嬉しいんだけど。…好きだ。」

微笑んだ僕は貴史の顔を見上げて、吐息を混ぜる様に囁いて唇を押しつけた。

「…うん。僕も大好きだよ。」