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高山助教授の眼差し

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何度か実験に参加していくうちに、俺は気づいたことがあった。高山助教授のことだ。流石に付き添いで付いてくるあいつらには話せないけれど、一度高山助教授とじっくり話をしないといけない気がした。

そう考えていたせいか、あいつらの監視?の目をかい潜って助教授と二人で話すチャンスが出来た。祥一朗の付き添いだったのだけど、会社の方で急用が出来たみたいで、30分だけ席を外すとのことだった。桐谷さんも居るし、僕は祥一朗に待ってるから用を足して来てと快く送り出した。


「…桐谷さん、ちょっと高山助教授と内々の話があるから二人だけにしてもらっても大丈夫ですか?」

桐谷さんはちょっと驚いた様子で俺と助教授を見つめた。助教授も少し戸惑った様子だったけれど、桐谷さんに声をかけるまで二人にしてくれと部屋から送り出した。

高山助教授は二人分のコーヒーを入れて、僕の前のソファにゆったりと座ると優しげに言った。

「…黒崎君から何か特別な話でもあるのかな?」

俺はこの際だからぶちまけようと思った。時間もないしね。


「祥一朗が戻ってくるまで時間があまりないので、俺が思ってる事言いますね。

高山先生、俺と俺の父親を重ねて見るのはやめて欲しいんです。間違っていたら申し訳ないんですけど、先生、俺のこと好きですよね。でもそれって、先生が自分を騙してるっていうか…。

先生の眼差しは僕自身を通り抜けて、俺に見え隠れする、父親?の姿への好きっていうか。


先生はご存知かどうか分からないんですけど、俺の母親は俺の父親に執着しているんです。幼馴染で、でも男しか愛せない父親とは結ばれなかった。それなのに、対外受精でこっそり俺たち姉弟を産んだくらいですよ。これが執着じゃなかったら、何でしょうね。

先生の眼差しは、そんな母親が俺を見る時と同じ眼差しをしてるんです。

先生は、俺の父親の事を愛してる。俺じゃない。だから、無理に俺のこと好きにならないで欲しいっていうか。俺も先生が無理してるのがわかって辛いんです。


案外自分の気持ちって分かりませんよね。俺も発情期が来るまで、自分の本当の気持ちもないがしろにしていたし、他人の気持ちなんてもっと知らんぷりだった。酷いですよね。

だから先生にも、ありのままの自分の気持ちに気づいてほしくて。先生は俺の父親への気持ちを、俺にすり替えなくてもいいんです。…だって、それはとても大事な気持ちでしょ?」

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