コレは流行りの転生ですか?〜どうやら輪廻転生の方でした〜

誉雨

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別視点

side 獣(熊)

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side  シーザー(ヴァーロス 家畜の神)


俺たちはずっと待っている。
あの子がまた帰ってくる日を。

俺はこの辺境領の獣を統括しているヴァーロスだ。
辺境領には獣が多い。
ここがあの子が帰ってくる場所だと、獣は全員知っているからだ。
辺境領以外で生まれた獣ですら、時がくればここを目指す。
ただ、あの子の傍にいたいから。
理由はそれだけだ。
あの子がいつ帰ってくるかもわからない、長い時の中で俺たちは考えた。
この地をあの子が安心して暮らせる場所にしよう。
俺たちだけの世界にあの子を閉じ込める事は簡単だ。
だが、あの子はいつも自由だったから。
その自由を守ってあげたい。

あの子が人間の世界でも自由でいられる様に、その傍に俺たちがいられる様に、まずは環境を整えた。
俺たちは人間と契約する事を選んだ。
人間に隷属する訳ではない。
コチラが選ぶ側だ。
1人の人間と契約し、力を貸し与える。
俺たちの力は強大で、この領地は瞬く間に発展した。
あの子がどんな姿で帰ってきても自由でいられる様に、領地にはさまざまな人間を集めた。
獣の血をひく者。
エルフやドワーフといった妖精の血をひく者。
竜の末裔。
全てが対等であると説いて伝え続けた。
その結果、今ではこの辺境領は種族に関係なく住み易い場所になっている。

ただ、辺境領以外の人間の世界は腐っている。
俺たちが全く介入しないからか、人族が頂点の様に振る舞う馬鹿が後を立たない。
まぁ、俺たちには関係ないが。
あの子はこの地に帰り、この地で暮らす。
この地以外を守る謂れはないし、必要も感じない。
俺たちにはあの子以上に大切なモノ等、ないのだから仕方がない。

何百年経とうと、あの子の為のこの地で待つ時間は苦痛ではない。
俺たちには死の概念がない。
一度生まれたら消える事はないのだ。
この地を守り、あの子を思って過ごす。
いつかあの子が帰ってくると全員が知っているからだ。

そしてその日は突然訪れた。
小さい、ごく僅かな波動。
あの子だ。
あの子が帰ってきた。
何処に居るのか波動を辿るが、僅か過ぎて場所が特定出来ず自らに苛立つ。

「たちゅけて」

声を出してくれたおかげで、特定に成功した。
北の森だ。
契約者に声をかける事もせず、目的地まで全力で走った。
あの子は無事だろうか。
木の根元に丸まっているあの子を見つけた。
あぁ、俺たちの愛しい子だ。
まだ覚醒前なのだろう。
俺の声は愛しい子に届かない。
少しもどかしいが、関係ない。
先ずはこの子を安心させてあげなければ。
抱き上げて、声の代わりに舐めて愛情を伝える。
食べていいと言われた時には驚いたが、胸に顔を擦り寄せてくる愛しい子が可愛くて、舐め回してしまっていたのだから誤解されても仕方がない。

「クマちゃん」

俺を何度も呼んでくれるが、愛しい子がつけてくれた名前で早く呼ばれたい。
契約者を引き摺ってでも連れてくればよかったと後悔した。

「シーザー、見つかったんだね。やっぱり可愛いね。早くみんなにも会わせてあげたいな」
「ルアンか。そろそろ来てくれると思っていた」

鳳凰のルアンは愛しい子を見て幸せそうだ。

「ねぇ、愛しい子がボクを捕まえようとしてくれてるんだけど、ボクは焦らすべき?飛び込んじゃいたいんだけど。」
「ルアンが捕まると、俺は嫌でもルアンを食べなきゃいけなくなるから、出来れば逃げてくれ」
「何でそうなるの!?」
「とりあえず、契約者の所に昨日採った実と薬草があるから持ってきてくれないか?どうやら愛しい子は腹を空かしてる」

ルアンは快く取りに行ってくれたが、愛しい子は相当ルアンを俺に食べさせたかった様で泣き出してしまった。
その様子は可愛いのだが、内容が可笑しくて涙を舐め取りながら笑ってしまった。
急いでくれた様で、ルアンはすぐに戻って来てくれた。

「ごめん、もう少ししたらバカが来る。追いかけて来やがった」

愛しい子が苦い薬草をそのまま食べるのを見て、慌てて木の実を割り、口に入れてあげていると、ルアンがイラついた口調とは裏腹な笑顔でニコニコと愛しい子を見つめている。
愛しい子は口に入れた木の実を取り出すと小さく細い指で摘み、俺の口元へ持ってきてくれた。
可愛いので有り難く頂く。

「何、その可愛い行動!ボクもする」

ルアンは鳥の習性なのか、口移しで食べさせたかった様だ。
しかし焦っている為か木の実がなかなか割れず、勘違いした愛しい子に俺の様に貰っていた。

「こんなの嬉しいに決まってる!」

その意見には激しく同意する。
そうこうしている間にルアンの契約者が現れた。
誤算だったのは、この男が俺の名前を呼んだ事で愛しい子が名前に気付いて、呼んでくれたのだ。

あぁ、満たされた。

名前を呼ばれた瞬間、渇き切っていた俺の根源は溢れる程の魔素で潤い、満たされた。
湧き出る水に守られる様に、俺の根源はもう乾く事はないだろう。
愛しい子がつけてくれた名前を、愛しい子が呼んでくれるだけで、俺たちは満たされる。
この時をずっと待ち続けているのだ。
早くみんなでこの歓喜を分かち合いたい。
ルアンも無事に名前を呼ばれ、俺たちはみんなの元へ愛しい子と共に帰る。

これからは常に傍にいる。
愛しい子。
帰ってきてくれてありがとう。
また、みんなで遊ぼう。

俺たちはその為に生まれて、存在し続けているのだから。
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