あなたに見て欲しいの

一花カナウ

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あなたに見て欲しいの

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 アスナお嬢様がなかなか校舎から出て来られない。

 ――妙だな……

 サークル活動もなかったはずだ。朝の会議にてスケジュールは確認していたし、本人とも今日の日程については話をしている。

 ――課外活動で遅くなる場合は連絡するようにと言ってあるし、大学側にも授業に変更があれば適宜連絡するようにと伝えてあったはず。なのに、迎えの時間から三十分は経ったな……

 檜葉(ひば)アスナお嬢様は檜葉コンツェルンの御令嬢だ。清楚なお嬢様というイメージをそのまま具現化したような女性である。
 高校を卒業すると同時に、産まれたときから決められていた婚約相手と政略結婚することになっていたが、本人がキャンパスライフを経験しておきたいなどと初めてのわがままを言ったがために短大に通うに至る。
 この短期大学は当然ながら檜葉コンツェルンから融資を受けており、アスナお嬢様が通うのに安全であるようにと、短期間で設備が一新された。
 短大で学ぶといっても、彼女の周辺はママゴトに等しい。余計な虫がつかないようにと男子禁制が徹底され、アスナお嬢様の在籍期間に限っては講師も事務員も全て女性にするという徹底ぶり。当然ながら、外部大学のサークルとの交流も皆無だ。

 ――一応、確認しておくか。

 教務課に連絡し、授業が終わっていることを確認。サークル部屋にも連絡を入れて、誰も中にいないことは見てもらった。

 ――どういうことだ?

 僕は気乗りがしないながらも、アスナお嬢様に持たせているGPSを辿ることにした。彼女のプライバシーを考えると、あまり使いたくないのだ。

 ――校内にいる?

 北側の校舎の周辺をうろうろしている。僕は迎えに付き合ってきた同僚を車のそばに残し、校内に入った。僕だけが、この歪められた女の園への出入りを許されている唯一の男だからだ。
 まもなく目的地に到着。しかし彼女の姿はない。

 ――まだ動いているのに。

 念のために音を出すように指示すると、茂みの中から音がした。覗けば、猫にGPS搭載のキーホルダーがつけられている。

 ――これはどういう……

 このキーホルダーにGPSが仕込まれていることを知っているのは僕を含めた警護担当の数人だけ。ただ、いまどきキーホルダーなんてつける方が珍しいので、怪しむ人は怪しく思うかもしれないが。

 ――緊急事態と考えるべきだな。

 すでに警護担当者たちは警戒態勢をとっていたが、そろそろ警察を介入させることを考えてもよさそうである。
 僕はイタズラである可能性も捨てきれなかったので、アスナお嬢様へ電話をすることにした。
 コール音。数回鳴った後に切れた。

 ――何をやってるんだ?

 電源は切っていないようだ。スマートフォンのGPSで彼女の居場所を見つけるかと画面を見れば、向こうから電話がかかってきた。
 テレビ通話。
 わけがわからないながら、通話ボタンを押す。
 薄暗い映像。狭そうな空間のその奥に、アスナお嬢様がキャミソールドレス姿で椅子に座っていた。

 ――キャミソールドレスというか……下着だよな。

 部屋が薄暗いから下着が見えにくいだけで、キャミソールドレスは下がうっすら透けている。彼女は目隠しをされており、手首を縛られた状態で上から吊るされていた。

「お嬢様? アスナお嬢様?」

 あまりにも動かないので呼びかけると、彼女はゆっくりとカメラのほうに顔を向けた。

「――水澤(みずさわ)?」

 声は間違いなくアスナお嬢様だ。彼女は僕のことを名字で呼ぶ。

「アスナお嬢様。これは一体どういうことですか? どちらにいらっしゃるのです?」
「水澤……私……」

 そこでカメラの向きが変わった。マスクを被った人物が映し出される。体型はスレンダーで、男性なのか女性なのか判別できない。他に人物が映されない場合、この人物が電話をかけ直してきたのだと考えられるだろう。

「やあやあ、こんにちはー。アスナちゃんのエッチなショータイムに間に合ってよかったね、水澤さん」

 声はボイスチェンジャーを通したもの。やはり男性なのか女性なのか不明。

「そこはどこだ⁉︎」
「うーん、教えられないなー」

 からかうように言うので、会話は成立しないものと判断。通話を切ってGPSを確認しようと手を動かすと、画面がアスナお嬢様に向けられた。

「おっと。ここで通話を切ったら、アスナちゃんのアソコにぶっとい物を挿入しちゃうよ? すぐに動画を公開しちゃうからね」

 そう告げて、アスナお嬢様のスカートがまくられる。ショーツが大写しにされた。

「へえ……脅迫ね」

 録音を開始。取り逃がすつもりはないが、証拠を残しておいたほうが法的に裁ける。僕は案外と自分も低い声が出せるんだな、なんて呑気に考えつつ相手の様子を伺う。

 ――周囲を隠しているのは僕が知っている場所だからかな? 猫にGPSをつけて僕をおびき寄せ、電話をかけたところで向こうが動き出したってことは、僕の場所が見えている可能性があるか。

 直接ここを見ているわけではなく、監視カメラ越しに見ている可能性もある。慎重に行こう。

「まあ、君がちんたらしていたら、アスナちゃんは大変なことになるんだけど」

 振動音。そして画面にローターが出てきた。

「例えば、まあこんな感じ?」

 彼女の白い太腿にブルブル震えるローターが当てられる。

「ひゃっ⁉︎ な、何?」
「怖くないよ。マッサージ器みたいなものだから」
「マッサージ器?」
「これを内腿にあてて撫でると、脚が細くなるんだ。大学生ならみんなやってることだよ」
「そ、そうなんですか?」

 ――なんという嘘を……

 確かに、みんなとまでは行かずとも、お世話になっている人は大学生くらいならある程度いるだろう。呆れてしまって、僕は言葉を発せなかった。

「さあ、脚を開いて。リンパ節に溜まった悪いものを流していこう」
「は、はい!」

 素直にアスナお嬢様は脚を開いた。すかさずローターの先がショーツのクロッチ部分をなぞる。

「ひ、ひゃあっ⁉︎」
「ほらほら、リラックスして。悪いものが流れやすいように」
「あ、あぅっ……」

 ――騙されていますよ、お嬢様……

「アスナお嬢様、そろそろお気づきください。そいつはアスナお嬢様のいやらしいところを楽しんでいるのです」
「や、だって、水澤……これ、気持ちがいっ……あっ」
「アスナちゃんは素直な身体を持っているんだね。気持ちがいいなら、もっともっと刺激を強くしてあげる」
「あっ……水澤ぁ……」

 ――僕は何を見せられているんだ……

 強くなる振動音。クロッチ部分がずらされて、秘部がさらけ出される。わずかな明かりを反射していて、濡れているのがわかる。

「ああんっ、やあっ」
「すっごいヌルヌルでビショビショだ。アスナちゃんの気持ちいい場所はここかな?」

 膨れた場所にローターを当てると、アスナお嬢様は脚をさらに開いて腰を揺らした。

「あっ、ああんっ」

 ――なぜノリノリ……

 この様子だと、アスナお嬢様の知人が犯人だろう。アスナお嬢様はグルだ。
 真面目に画面を見ているのはアホなので、僕は彼女がいる場所を検討をつけて絞り込む。

「ああんっ、水澤ぁ……見て、もっと……」
「ええ、見てますとも」

 適当に返事をしていると、ショーツが足から引き抜かれた。濡れた秘部を、今度はバイブが撫でている。

「ああっ、気持ちいい……」
「こっちもお世話しないとねえ」

 そう告げて、キャミソールドレスの裾がさらに巻き上げられた。ふっくらした胸元を包むブラジャーの隙間に、小さいローターが押し込まれる。乳首に当たるように調節すると、アスナお嬢様が身悶える。

「あうっ……水澤……」
「僕の名前を呼ばないでいただけますか? 僕はあなたとは縁のない人間なんですから」
「いや、水澤……」

 ――なんで。

 アスナお嬢様の視線に熱を感じるようになったのはいつからだったろうか。どこで学んできたのか、変な色仕掛けばかりしてくるので、僕は正直勃たなくなっている。どうも僕のことをオカズにしているようだと同僚に聞いたときは、クライアントから何を言われるかとビクビクしていたものだ。

 ――さっさと結婚してしまえば、僕はお役御免なのに。それでいいじゃないか。

 場所の特定に成功。同僚が彼女の居場所を突き止めるほうが早かった。端末から情報を得ると、僕は校舎の中に入る。

「ああ、水澤……もう、イっちゃう……私のいやらしいところ、全部見て」
「では、直接拝見しますので、我慢していてください」
「へっ⁉︎」

 駆け上った階段の突き当たりの準備室。僕は扉を開けた。

 ――いた。

 僕の到着に気づくなり、犯人は部屋の横に立って両手を挙げていた。彼女はうちの警備会社から派遣されている女性社員だった。在学中に不便がないようにと友だちのフリをして警備してきたはず。
 僕は問い詰めたい衝動をそこでは抑えて、アスナお嬢様のもとに行く。録音もさりげなく消して。

「来ましたよ、アスナお嬢様。とてもはしたない格好ですね」
「水澤……」
「僕がいかせて差し上げましょう。それがお望みでしょう?」

 彼女の背後から目隠しをゆっくりと外す。吊るされていた手枷も、解くのは難しかったので上から伸びていた部分は切断した。

「さて、どのように致しましょうかね?」

 僕の手で彼女の目を覆い、耳元で囁く。それだけで彼女はいったようだった。

《終わり?》
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