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ターコイズのお守り
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御守りとして使っているターコイズのビーズでできたブレスレットが千切れて飛んだ。玄関先でバラバラになって私は途方に暮れる。
これから旅行なんですけどっ⁉︎
彼氏がくれた大事なブレスレットだ。まんまるのビーズのすべてを回収するのが無理だとしても、そのまま放置して家を出るわけにはいかない。
私は定刻どおりの出発は諦めて、電車を遅らせることにした。ふだん身につけていたものが壊れるのは、何かの危機を身代わりになってくれたときだともいう。幸い、移動手段は予約しているわけではない。多少の遅れは挽回できるはずだ。
私はビーズを拾い集めて瓶にしまい、家を出た。
この三十分間が、まさか私の命運を分けることになろうとは。
***
駅に着いて、電車の事故を知った。脱線事故。多数の怪我人が出ているとのこと。しばらく動かない。
途方に暮れていると、スマホが鳴った。
「葉月、お前、無事なのか⁉︎」
「あーうん、電車、乗り遅れちゃって」
電話は今日一緒に観光ホテルに行く予定だった秋也だった。すごく取り乱した様子で、いつものクールさは皆無である。
「じゃあ、乗ってなかったんだな?」
「まだ地元の駅だよ」
「うっわ、良かった……」
「電車動かないから出られないんだけど、タクシーで迂回すればいい?」
「キャンセル料、俺が払うから旅行は中止だ。これから俺がそっちに行く」
「え、いーよ。来なくて」
「俺が会いたいんだよ。お前ん家に行くから、帰ってろ」
「えー?」
「絶対に待ってろよ」
そして通話は切れた。
***
私の家にやってきた秋也は私を見るなり抱き締めてくる。イチャイチャするような仲ではあるのだけど、すごくすごく珍しかった。
「どうしたの、秋也」
「葉月が無事で良かった」
「大袈裟だなあ」
「お前、あの電車に乗っているはずだったんだぞ」
「……え?」
「事故を起こした電車。お前、定刻どおりに家を出ていたら、事故った電車の先頭車両にいたはずなんだ」
説明されて状況を理解した。
思い起こせば確かにそうだ。事故の時間から逆算すれば、予定通りであったらその電車のその車両にいた。
さっと血の気がひく。
「……滅多に遅刻なんてしないのに、どうしたんだ? 体調でも悪くなったか?」
「ううん、そうじゃないんだよ」
身体を離してもらえたので、手首を指差した。
「ん?」
「ブレスレットが切れちゃって。石を拾っていたら遅れちゃったの」
「へえ……。ちゃんと仕事をしたんだな」
「ん?」
今度はこちらが首を傾げる番だ。
「ターコイズのパワーストーンとしての効果って危険を予知したり旅の安全を願ったりするものなんだってさ。だから、体張ってお前を守ったんだろう。大事にしていたから」
「そういう効果を期待して私にくれたの?」
「石を見た時、葉月に似合うと思ったからプレゼントして、効果を知ったのはその後だな。導かれた感じがしたから気になってさ」
そういうところも、石の導きなのかもしれない。ふむふむと私は頷く。
「そっか。大事にしていた甲斐はあったんだねえ」
「それで、葉月。ホテルはキャンセルしてきたが、これからどうする?」
「まずは美味しいものでも食べて仕切り直したいな」
「そうだな。なんか探すか」
いつもより言葉が弾む。最近素っ気なく感じていた秋也が駆けつけてくれたことが思いのほか嬉しいのだ。
***
ターコイズのブレスレットは元通りに直して、私はまた身につけている。いつか秋也とハネムーンに行くときにも一緒にあるといいなと願う。
《終わり》
これから旅行なんですけどっ⁉︎
彼氏がくれた大事なブレスレットだ。まんまるのビーズのすべてを回収するのが無理だとしても、そのまま放置して家を出るわけにはいかない。
私は定刻どおりの出発は諦めて、電車を遅らせることにした。ふだん身につけていたものが壊れるのは、何かの危機を身代わりになってくれたときだともいう。幸い、移動手段は予約しているわけではない。多少の遅れは挽回できるはずだ。
私はビーズを拾い集めて瓶にしまい、家を出た。
この三十分間が、まさか私の命運を分けることになろうとは。
***
駅に着いて、電車の事故を知った。脱線事故。多数の怪我人が出ているとのこと。しばらく動かない。
途方に暮れていると、スマホが鳴った。
「葉月、お前、無事なのか⁉︎」
「あーうん、電車、乗り遅れちゃって」
電話は今日一緒に観光ホテルに行く予定だった秋也だった。すごく取り乱した様子で、いつものクールさは皆無である。
「じゃあ、乗ってなかったんだな?」
「まだ地元の駅だよ」
「うっわ、良かった……」
「電車動かないから出られないんだけど、タクシーで迂回すればいい?」
「キャンセル料、俺が払うから旅行は中止だ。これから俺がそっちに行く」
「え、いーよ。来なくて」
「俺が会いたいんだよ。お前ん家に行くから、帰ってろ」
「えー?」
「絶対に待ってろよ」
そして通話は切れた。
***
私の家にやってきた秋也は私を見るなり抱き締めてくる。イチャイチャするような仲ではあるのだけど、すごくすごく珍しかった。
「どうしたの、秋也」
「葉月が無事で良かった」
「大袈裟だなあ」
「お前、あの電車に乗っているはずだったんだぞ」
「……え?」
「事故を起こした電車。お前、定刻どおりに家を出ていたら、事故った電車の先頭車両にいたはずなんだ」
説明されて状況を理解した。
思い起こせば確かにそうだ。事故の時間から逆算すれば、予定通りであったらその電車のその車両にいた。
さっと血の気がひく。
「……滅多に遅刻なんてしないのに、どうしたんだ? 体調でも悪くなったか?」
「ううん、そうじゃないんだよ」
身体を離してもらえたので、手首を指差した。
「ん?」
「ブレスレットが切れちゃって。石を拾っていたら遅れちゃったの」
「へえ……。ちゃんと仕事をしたんだな」
「ん?」
今度はこちらが首を傾げる番だ。
「ターコイズのパワーストーンとしての効果って危険を予知したり旅の安全を願ったりするものなんだってさ。だから、体張ってお前を守ったんだろう。大事にしていたから」
「そういう効果を期待して私にくれたの?」
「石を見た時、葉月に似合うと思ったからプレゼントして、効果を知ったのはその後だな。導かれた感じがしたから気になってさ」
そういうところも、石の導きなのかもしれない。ふむふむと私は頷く。
「そっか。大事にしていた甲斐はあったんだねえ」
「それで、葉月。ホテルはキャンセルしてきたが、これからどうする?」
「まずは美味しいものでも食べて仕切り直したいな」
「そうだな。なんか探すか」
いつもより言葉が弾む。最近素っ気なく感じていた秋也が駆けつけてくれたことが思いのほか嬉しいのだ。
***
ターコイズのブレスレットは元通りに直して、私はまた身につけている。いつか秋也とハネムーンに行くときにも一緒にあるといいなと願う。
《終わり》
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