宝石寝物語【短編集】

一花カナウ

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パールの物語

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 幸福な結婚になるかは未知数だ。これは言われるまま唐突に決まった婚姻である。
 相手の顔もよく知らないまま、私は今まで着たことのない美麗な衣装を身に纏って祭壇の前に一人立たされていた。
 彼が私を気に入ってくれなかったらどうしよう。
 相性が悪くとも、子は必ずなさねばならないと言い付けられている。母から「お前は安産型だから元気な声たくさん産めるよ」と励まされたことを思い出し、できることだけでも頑張ろうと思う。
 神につながる血筋の末裔に自分が嫁ぐことになったのはなんの縁なのだろう。不老長寿とされる者たちとともに上手くやっていけるのだろうか。
 不安は尽きない。静かに震えていると、祭壇に続く扉がゆっくりと開く音が響いた。
 二人きりの祝言。

「初めまして、旦那様。どうか末永くおともさせてくださいませ」

 今宵純潔を捧げる相手に私は微笑んだ。

《終わり》

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パールの宝石言葉
【幸福】【結婚】【安産】【不老長寿】【純潔】
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