宝石寝物語【短編集】

一花カナウ

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シトリンの物語

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 人間関係が悪化したなぁと思ったら、デトックスと称していろいろリセットする。
 付き合いは最小限に。溜め込んだグッズはリサイクルショップに。
 脱皮みたいにそれまで執着していたものを切り捨てる。身軽になった私は気持ちを新たに再出発するのだ。


 不具合が出てくればこの生き方を変えようと思っていたのに、どういうわけか問題が発生しないのだった。いささか思い切りがよすぎるのではと考えていたものの、こうなるとやめどきがわからない。
 定期的に物を入れ替えるので飽きることがなく、ただ捨てるのではなく売り払っているから貯金ばかり減るということはない。いい循環らしく財運は尽きないらしかった。
 この感覚を活かしたらビジネスになるんじゃないかと夢見たことがあったが、残念ながら商売繁盛とはならなかった。自分というミニマムな世界だから成り立つことらしい。


 さて、そろそろ次の恋愛が始まる頃合いだが、どうしたものだろう。推しができたのはありがたいことだが、部屋にグッズが溢れた今、リセットのタイミングがやってこない。
 これが境地なのだろうか。
 部屋は散らかっていて足の踏み場もないのだがとても幸せである。こうなってみて初めて、部屋を訪ねてくる友人は残しておいた方がよかったかな、とちょっぴり後悔したのだった。

《終わり》

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シトリンの宝石言葉
【人間関係】【デトックス】【財運】【商売繁盛】
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