79 / 110
6:魔導師として宮廷入りしたので、やれることだけやってみます!
話してくれればよかったのに 2
しおりを挟む「え? ここは聖水の湖のそばにある別邸ですよ」
「どうして」
返しながら、メルヒオールはベッドを降り、畳まれている自分の服に袖を通し始める。
「殿下が、王宮よりもこっちの方が近いから、別邸で休憩しようっておっしゃって」
アルフォンシーヌが別邸を訪れるに至った経緯を簡単に説明すれば、メルヒオールが小さく舌打ちをする。
「油断しました。ここにいてはいけません。まだ、俺は――」
彼が部屋を出る準備をしているのだとわかったとき、部屋の扉が勢いよく開かれた。
鍵をかけていた扉を蹴破ったのはリシャールだった。
「そろそろ、返すものを返してくれないかい? メル、逃げようとしても無駄ですよ」
「殿下……」
メルヒオールとリシャールが対峙する。しばしにらみ合っていたが、リシャールが先に視線を逸らし、アルフォンシーヌに目を向けた。
「あるいは、アルちゃんを置いていってくれるなら今回は見逃しましょうか。今のアルちゃんを抱き潰せば、目的の一つは達せられますし」
え、あたしですかっ?
メルヒオールとリシャールの間での話かと思っていたら、どうやらアルフォンシーヌも関係しているらしい。第三者面をして、この場をそっと去ろうとしていたアルフォンシーヌには衝撃の展開だ。
アルフォンシーヌとリシャールの間にメルヒオールが立つ。
「殿下。まだ執行猶予が残っているはずです。ギリギリまで、俺はあがきたい。それに、アルを犠牲にするのは俺が許さない」
執行猶予? 犠牲に?
なんの話をしているのか、アルフォンシーヌにはわからない。でも、メルヒオールが必死になって守ろうとしてくれているのが伝わって、胸の奥が熱くなった。
メルヒオールの宣言に、リシャールは鼻で笑う。
「その感情は愛情じゃないでしょう? 彼女が鍵だから、そして巻き込まれてしまった被害者だから、義務感や正義感で守ろうとしているだけ。メルの中のソレが、彼女を必要としているから、突き動かされているに過ぎないのでは?」
わからない言葉の羅列が続く。だが、リシャールが自信満々に告げて責めているあたり、メルヒオールにとって都合の悪い話なのだろう。
メルヒオールは首を振って否定した。彼の長い髪が大きく揺れる。
「違います! 俺は、初めて会ったときから――」
「幼女と結ばれたいなんて、普通は思わないでしょう?」
リシャールの的確な指摘に、メルヒオールは息を飲む。
メルヒオールとアルフォンシーヌが出会ったのは彼が十五歳になる少し前であり、その頃のアルフォンシーヌは四歳だった。そんな時期にメルヒオールが見初めていたのだとしたら、少々一般常識から外れていると言える気がする。
「普通はそうかもしれませんが、俺は運命を感じたのです」
苦しい理由だと思ったのか、メルヒオールの返事は歯切れが悪い。
「それは候補者に選ばれるくらいですから、当然そういう感情も覚えましょう」
リシャールは勝ち誇ったような笑みを浮かべ、言葉を続ける。
「メル、君のほうが間違っている。悪あがきは諦め、選択しなさい。すべての魔力を捧げて私を王にするか、伝承通りに私を切り捨て自ら王となるか」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ヤンデレエリートの執愛婚で懐妊させられます
沖田弥子
恋愛
職場の後輩に恋人を略奪された澪。終業後に堪えきれず泣いていたところを、営業部のエリート社員、天王寺明夜に見つかってしまう。彼に優しく慰められながら居酒屋で事の顛末を話していたが、なぜか明夜と一夜を過ごすことに――!? 明夜は傷心した自分を慰めてくれただけだ、と考える澪だったが、翌朝「責任をとってほしい」と明夜に迫られ、婚姻届にサインしてしまった。突如始まった新婚生活。明夜は澪の心と身体を幸せで満たしてくれていたが、徐々に明夜のヤンデレな一面が見えてきて――執着強めな旦那様との極上溺愛ラブストーリー!
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる