魔導師として宮廷入りしたので、そのお仕事はお引き受けしかねます!

一花カナウ

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6:魔導師として宮廷入りしたので、やれることだけやってみます!

話してくれればよかったのに 2

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「え? ここは聖水の湖のそばにある別邸ですよ」
「どうして」

 返しながら、メルヒオールはベッドを降り、畳まれている自分の服に袖を通し始める。

「殿下が、王宮よりもこっちの方が近いから、別邸で休憩しようっておっしゃって」

 アルフォンシーヌが別邸を訪れるに至った経緯を簡単に説明すれば、メルヒオールが小さく舌打ちをする。

「油断しました。ここにいてはいけません。まだ、俺は――」

 彼が部屋を出る準備をしているのだとわかったとき、部屋の扉が勢いよく開かれた。
 鍵をかけていた扉を蹴破ったのはリシャールだった。

「そろそろ、返すものを返してくれないかい? メル、逃げようとしても無駄ですよ」
「殿下……」

 メルヒオールとリシャールが対峙する。しばしにらみ合っていたが、リシャールが先に視線を逸らし、アルフォンシーヌに目を向けた。

「あるいは、アルちゃんを置いていってくれるなら今回は見逃しましょうか。今のアルちゃんを抱き潰せば、目的の一つは達せられますし」

 え、あたしですかっ?

 メルヒオールとリシャールの間での話かと思っていたら、どうやらアルフォンシーヌも関係しているらしい。第三者面をして、この場をそっと去ろうとしていたアルフォンシーヌには衝撃の展開だ。
 アルフォンシーヌとリシャールの間にメルヒオールが立つ。

「殿下。まだ執行猶予が残っているはずです。ギリギリまで、俺はあがきたい。それに、アルを犠牲にするのは俺が許さない」

 執行猶予? 犠牲に?

 なんの話をしているのか、アルフォンシーヌにはわからない。でも、メルヒオールが必死になって守ろうとしてくれているのが伝わって、胸の奥が熱くなった。
 メルヒオールの宣言に、リシャールは鼻で笑う。

「その感情は愛情じゃないでしょう? 彼女が鍵だから、そして巻き込まれてしまった被害者だから、義務感や正義感で守ろうとしているだけ。メルの中のソレが、彼女を必要としているから、突き動かされているに過ぎないのでは?」

 わからない言葉の羅列が続く。だが、リシャールが自信満々に告げて責めているあたり、メルヒオールにとって都合の悪い話なのだろう。
 メルヒオールは首を振って否定した。彼の長い髪が大きく揺れる。

「違います! 俺は、初めて会ったときから――」
「幼女と結ばれたいなんて、普通は思わないでしょう?」

 リシャールの的確な指摘に、メルヒオールは息を飲む。
 メルヒオールとアルフォンシーヌが出会ったのは彼が十五歳になる少し前であり、その頃のアルフォンシーヌは四歳だった。そんな時期にメルヒオールが見初めていたのだとしたら、少々一般常識から外れていると言える気がする。

「普通はそうかもしれませんが、俺は運命を感じたのです」

 苦しい理由だと思ったのか、メルヒオールの返事は歯切れが悪い。

「それは候補者に選ばれるくらいですから、当然そういう感情も覚えましょう」

 リシャールは勝ち誇ったような笑みを浮かべ、言葉を続ける。

「メル、君のほうが間違っている。悪あがきは諦め、選択しなさい。すべての魔力を捧げて私を王にするか、伝承通りに私を切り捨て自ら王となるか」
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