カブラギ魔対はロマン主義って本当ですか!?

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君の街まで編

#7 リヴァイアサン

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 『災害級ディザスター』という等級ですら、測りきれない魔獣がいる。

 そもそも魔獣と呼べるかすら怪しい。

 「」自身が天災であり、地球の意思である、と言われている。

 生きていること自体が、人間だけでなく他の生命にとって脅威である。


 約300年で延べ3回しかない発見報告とその脅威度は正に"神話"、故に『神話級レジェンド』。

討伐成功は、発見報告三件の内一件のみ。

 リヴァイアサンは、過去に一度だけ観測され、その大蛇の様な見た目と水を司るその力から名付けられた。



カレンが、顕現したリヴァイアサンを目の前に、死を覚悟した瞬間だった。

 リヴァイアサンの頭部が戦闘機のごとき速度で大いなる四腕ザ・フォースを、否、彼がを通過した。

 その風圧をカレンが髪に感じる時には、大いなる四腕が湖の上空でもがいていた。

 リヴァイアサンはさらにその上空にいる。

 目で追う暇もないほどに、リヴァイアサンは頭部を大いなる四腕に向けて急降下、そのまま湖のど真ん中へ突き刺した。

 リヴァイアサンの長い胴体がみるみる湖に吸い込まれていく。

 初めにリヴァイアサンが飛び出してきた場所から尾びれが抜かれると、その尾びれが湖に戻る前には、再びリヴァイアサンが顔を見せる。

 太陽と重なる様に頭部を構え、リヴァイアサンはカレン達を一瞥する。

 正しく蛇睨み。

 カレンとアイリは指先まで凍ってしまったかのように動けなくなった。

 【水魔法】の極致、海獣の名を成すが通りに、その口先から放たれるは水の光線。

 空を斬り、音を飛沫に変える人智を超えた魔法。


 死を覚悟したからだろうか、カレンの体はずっと緊張がとけ、冷や汗をかきながら膝から崩れ落ちた。

 絶望はしない、諦めもしない、死の直前まで挑戦することを辞めない様に顔を上げ、目線だけでも、と、目の前にいる神のごとき存在に一矢報いようとしたことは、彼女にとってこの数日間で得た学びから成長できたと誇れることだった。




 いつだって彼らの背中は先を行き、逆光に抗うように希望の影を落とす。




 目の前には、腕を組み仁王立ちでカレン達に届くはずだった水を魔法陣で受け止めるアンコがいた。

 激しい水飛沫の中、アンコはニヤリと
 自信に満ち溢れた彼女の髪は大きく靡いていた。

 やがて、水のレーザーが止み、その銃口がゆっくりと閉じる。

 「あなた達、私の後ろにいなさい」



 十大アンコの唯一の適性【守護魔法しゅごまほう】。

 本来、適性が【守護魔法】のみでは魔道士は成り立たない。

 【守護魔法】は名の通り、の魔法。

 だがそれでも、彼女の師、鏑木時定は彼女を徹底的に鍛え上げた。

 それは、鏑木時定の弟子として魔道士になりたい、という彼女に応える為、ある意味時定の意地だったかもしれない。


 その甲斐あってか、彼女は成った。


 今では、最強と呼ばれる時定の魔法をも防ぎ切り、絶対防御という名を持つ彼女の障壁は背後に一切の魔法を通さない。

 それが『神話級』であっても例外ではない。


 
 そして十大アンコは強敵を前に笑う。




 「あれ、ユウキさんは……?」


 体勢を建て直したカレンは周りをみてユウキがいないことに気づく。



 アンコは強敵を前にして自らの防御への自信と強者へと挑むことの楽しさから笑う。

 さらに彼女の【守護魔法】が最大限に輝く時、彼女は誇らしげに強敵へと立ち向かう。

 それは護るものがいる時、それと___



 「ユウキくんならあそこよ」



 アンコの指さした先はリヴァイアサンの頭上。


 そこには、バチバチと雷光を放ち、リヴァイアサンに対して腕を構えるユウキがいる。




 彼女の魔法が最も輝く時、それは、隣に最強の矛がいる時だ。




 アンコとユウキは、互いに絶対的な信頼を寄せている。

 二人揃っている時は、お互いに攻撃・防御を任せ、それぞれの役割に全力を尽くす。

 そして、"最強"鏑木時定の意志を継いだ者達、ユウキも強敵を前に

 

 大いなる四腕へとリヴァイアサンが攻撃した時、ユウキはすぐさま攻撃へと行動を移し、周囲の木を足場に蹴り進み、一気に電荷を溜める。

 光速の域まで速度上げた時、ユウキはリヴァイアサンへと向かって飛び上がる。


 そして放たれるは、溜め込んだ電荷を収束させた【雷撃サンダーボルト】。

 
 リヴァイアサンが頭上のユウキの存在に気づく前に、魔法が直撃する。

 その余波が水面を駆け、木々を揺らす。



 カレンは、二人の勇姿を見て、一体どれだけ遠い背中だろうか、と思い馳せ、カレンが向けた憧れの眼差しにはいつしか柔らかな炎が灯っていた。

 共に戦いたい、こんな魔道士に成りたい、カレンが鏑木魔法対策所に求めたモノは確かにあった。

 時定を初めとした他と一線を画す魔道士に、食らいつき、強くなりたい、カレンが思い描く目標が今くっきりと心に浮かび上がった。



 ユウキは魔法の反動を流し構えを解く。


 しかし、その下にはぶるん、と一度身震いしただけのかすり傷一つ付いていないリヴァイアサンがいた。

 リヴァイアサンはユウキの方へ向きを変え睨みつける。



 「……まじ?」


 ユウキにとってもこれ程ダメージが無いのも想定外だったのだろう、現在の彼は空中で無防備、回避すらまともに取れない。

 そんなユウキをリヴァイアサンは今にも飲み込もうと大きく口を開け、突き進んでいる。


 
ダメだ、と思ったその時にはカレンの足は踏み出していた。

 勝てない相手だなんてカレン自身が一番身に染みてわかっている。

 現れただけで怯み、睨まれただけで死を覚悟した。

 しかし、それでも、何かしないと目の前で大切な存在を失ってしまう。

 今までのカレンでは踏み出すことの出来なかったこの一歩がきっかけを生み出すはず、焦燥か無謀か、カレンがアンコの魔法陣を飛び出した。



 「何か、何か! 一体私は何が出来る! 最大限に想像して"私の魔法"の可能性を!」



 徐ろに胸の前で構えた両手の先に赤い炎が灯り、次第に大きく燃えていく。

 燃えた炎を左手から右手、右手から左手へと円を描きながら紡いでいく。



 イメージしたのはロープか鎖か、そんなことは頭から消し去り、今リヴァイアサンを引き止めるだけの魔法を展開する。


 火力の増す炎を、空をなぞってリヴァイアサンへ放つ。


 炎の鎖はリヴァイアサンの首へと巻き付く、カレンは炎を掴んで精一杯に引っ張った。

 だが、びくともしない、それに火力も足りない、リヴァイアサンは少し速度が落ちた程度、ズルズルとカレンが引き摺られていく。


 「なにこれ、重たい……! それに、最も火力を上げないとっ!」


 魔法に集中しようとするが、少しでも気を抜けば、一気に持っていかれるだろう。

 「キュウン!」

 「ふ、フレアちゃん!?」

 唐突にカレンの髪からヒョイッと飛び出したフレアがカレンの炎を引いている右手に触れた。

 そしてフレアは、力を入れるように全身が赤く光りだす。

 すると、カレンの炎は掴んでいた所からさらに勢いを増し、火力を上げていく。

 リヴァイアサンまで辿り着き、倍程の大きさに成った炎の鎖は、リヴァイアサンの首を締め付ける。

 リヴァイアサンは呻き声を上げて、行動を止める。

 瞬時にカレンの方へ向き、尻尾を振り上げた。

 苦しみながらも尾びれを叩きつけようとカレンめがけて尻尾を振り下ろす。

 「【風刃ふうじん】ッ!」

 リヴァイアサンの苦し紛れの攻撃がカレンに届くことは無かった。

 後方から飛び出してきたアイリが【風魔法】薙ぎ払う。




 ……はずだった。


 「ちょっとまって、めっちゃ重いッ!!」


 刀で受け止め、鍔迫り合いの様になるかと思われたが、アイリは力負けしている。

 変わらず窮地であったが、カレンが注意を引いた隙に電荷を貯め直したユウキが音よりも早く二人を救い出す。




 「ちょっと、アイリ何しにきたの!」

 「ごめん、ごめん、なんだか飛び出すカレンを見てたら体が動いちゃって」

 えへへ、と反省の色の薄いアイリに、「もう!」と小突く。

 だが、アイリのあの一手が無ければ、あの一瞬が生まれなければ、ユウキも間に合わずカレンは潰されていたのかもしれない、だから攻めきれない。

 「火ノ花さんも、無茶は禁物! ……だけど今回ばかりは助かったよ、ありがとう」



アンコの魔法陣の裏でリヴァイアサンについての考察が始まる。


 「ユウキさんならどうにかなりましたよね?」

 「さぁ、どうかな……、とにかく、魔法が効かないのはきついな」


 今も水を飛ばし続けるリヴァイアサンを見れば、ユウキの攻撃だけでなく、カレンが巻き付けた炎の鎖も、アイリの風も、何も無かったかのように、綺麗な鱗が煌めいている。

 「肝はあの鱗と甲殻だね、おそらく魔法のダメージだけを消し去るもの、僕の雷にも二人の攻撃も衝撃はあった、完全な無効化ではない」

 「剥がせないでしょうか」

 「しんどそうだね、できたとしても一人じゃ無理、せめて二人であいつに張り付かないと」



 「ね、目はどうかな、あそこなら通るんじゃない?」
 
 「……悪くないね、試す価値はある」

「じゃ、私達二人はサポートに、なんとかユウキさんに攻撃を___」


 「いや、二人も主力だ、三人で一斉にあいつの目を突く、アンコ」

 「ええ、ね、分かったわ」

 「でも、私のは"炎"ですし、あんまり効かないかと……」

 「相手は『神話級』、少しでもダメージソースはほしい、それに火ノ花さんの可能性は【炎魔法】だけじゃないでしょ?」

「そう言われても……」

 「よし、二人は実戦訓練と銘打とう、僕とアンコがいる、絶対死なせはしない、安心して挑むんだ」

 

 『神話級』の魔獣となんて戦う機会は滅多に来ない、勝てば大きな自信となる。




 ユウキは右手に魔法剣を顕現させ、【風魔法】のカプセルを装填する。

 カレンとアイリはフゥーッと深呼吸し、息を整える。



 そんな二人にアンコは触れ、声をかける。

 「いい? 今私の魔法を付与したわ、ゲームで言うライフが増えたとでも思って」

 【守護魔法】の付与。
 アンコから離れてしまえば魔力の流れが途切れてしまうので、アンコの張る無敵の結界、とはいかないが、何度か攻撃を防いでくれるアーマーの様になる。

 「さっきの水鉄砲からしてよ、あの攻撃を三回受ければ壊れてしまうわ、危なくなったら戻ってきて、もう一度付与するから」

 そして二人は先頭に立つユウキに並び立つ。

 「火ノ花さんは風凪さんを、風凪さんは火ノ花さんを、お互いに意識して呼吸を合わせるんだ、そこに僕が合わせる」


 アンコの魔法陣が消えたら合図、リヴァイアサン討伐作戦が幕を開ける。

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