1 / 10
一章 辺境の黒疾風
01.生きとし生ける者に、等しく希望と絶望を。
しおりを挟む
突然だが、俺はファンタジーが好きだ。
漫画やラノベ、アニメ、現代小説。様々なメディアでファンタジー物を漁っては読んで、見て……その度に、一度くらいはファンタジーな世界に行ってみたいと思ってしまう。その点、今開発が進んでいるVR技術っていうのは凄く魅力的なものだ。現実ではないとは言え、擬似的にその世界を再現できてしまうのだから。
──VRでもなんでもいいから、旅をして、仲間を集めて、一緒に戦って、一緒に成長してみたい。その夢は日に日に大きくなっていく。ガキくさいとか、現実見ろとか、散々な事を言われそうな気がするが、男の子というのはいつだってそんなものなんだよ。現実を見るにはまだ早すぎる。
もはや誰も手を付けなくなった近所の寂れた神社の前に立って、俺はただ一つ、願った。
「どうか、異世界に転移できますように……っ!」
『その願い、叶えましょう』
「えっ、唐突すぎない? うぉ、あ、あ、ぬぁぁぁああああああああっっ!」
……この日、現代世界から「秋風悠也」の存在は跡形も無く消え去った。
▼ ▼ ▼
───はっ!? ここは異世界か!?
「お、お嬢様! 目を覚ましましたよ!」
「はしゃがないの、迷惑になるでしょ」
妙に頭が冴えてる。知らない天井、ふかふかのベッド、視界の隅にちらつく銀髪……銀髪?
「こんにちは、体の調子はどうですか?」
「え、ま、まぁ、悪くはない、です……」
「良かったです。道に倒れてたんですよ? しばらく安静にしててくださいね」
「はぁ……」
「レイニャ、彼の看病を」
「はい!」
今のは黒髪の少女だった。大きなポニテが特徴の……まさに、美少女だった。いいぞ異世界、来て良かったなぁ。
「えーっと、レイニャと申します。お体の方は大丈夫です?」
「大丈夫なんですけど、ちょっと状況が飲み込めてないです。なんで俺は普通に会話できてるんでしょう?」
レイニャと名乗った彼女の背中には、モルフォ蝶のような美しく繊細な羽が生えていた。妖精……か? 短い銀髪だ。
「あぁ、それはお嬢様が『共有』したからですよ」
「きょ、共有……?」
「はい、自分の持つ何かと、相手の持つ何かを互いに受け取る学術です。お嬢様はあなたの言語と私達の言語を共有したので、このように会話ができるワケです!」
「ちょっと現実味がないんですが、まぁ、ありがとうございます」
「いえいえ、お礼はお嬢様に。──見た所異国の人のようですが、どちらから?」
あぁ、そういえば今の俺の服はバリバリの制服だったな。
「……分かりません。ただ、当ても無く放浪していたのは覚えています」
「当ても無く放浪、ですか。むー……」
顎に手を当てて難しく考えている。ご存知の通り嘘なのだが、ファンタジー物で知識を蓄えた俺にとってこれが最善の一手だと思った。
『レイニャー! その人と一緒に下に来てー!』
「はーい! 立てます?」
「え、えぇ、多分」
足は……しっかり動く。異常もない。シーツから出てベッドに腰掛け、足に力を入れて立つ。どこも痛くは無い、健康体のままここへ来れたか。
「では、こちらへ」
▼ ▼ ▼
連れて来られたのは、半端ない程広いリビング……らしき場所。貴族の家なんてものがあるが、まさにそれだ。長すぎる楕円形テーブルに立つ蝋燭の火が揺らめいている。
「改めまして、こんにちは。……こんばんはの方がいいでしょうか、アルテミアという者です」
「こ、こんばんは。ユーヤです」
眼前に立つは美少女。ぱっちりとした翠色の瞳にさっきも言ったが大きな黒髪のポニーテール。千年に一人どころの話じゃない。
「道端で倒れていたものですから、すぐに救助しました。こんな夜更け、もしかしたら魔族に襲われるかもしれませんからね……」
「ありがとうございます。えっと…すみません、今お礼できるものが何も無くて」
「とんでもありません、お気持ちだけで十分──いえ」
曇りのない笑顔から途端に真面目な顔つきになり、俺はビクッとしてしまった。
「……ユーヤさん、どうしてこの街に来たのですか?」
「分かりません。目的無く彷徨って気付いたらここにいました」
「なるほど。それなら恩を返すのにうってつけのものがありますよ!」
「そ、それはなんですか!?」
冷淡な顔つきからまた一転、誇らしげな表情で彼女は、
「私の仲間になってください!」
──と、俺に言ってきたのだった。
漫画やラノベ、アニメ、現代小説。様々なメディアでファンタジー物を漁っては読んで、見て……その度に、一度くらいはファンタジーな世界に行ってみたいと思ってしまう。その点、今開発が進んでいるVR技術っていうのは凄く魅力的なものだ。現実ではないとは言え、擬似的にその世界を再現できてしまうのだから。
──VRでもなんでもいいから、旅をして、仲間を集めて、一緒に戦って、一緒に成長してみたい。その夢は日に日に大きくなっていく。ガキくさいとか、現実見ろとか、散々な事を言われそうな気がするが、男の子というのはいつだってそんなものなんだよ。現実を見るにはまだ早すぎる。
もはや誰も手を付けなくなった近所の寂れた神社の前に立って、俺はただ一つ、願った。
「どうか、異世界に転移できますように……っ!」
『その願い、叶えましょう』
「えっ、唐突すぎない? うぉ、あ、あ、ぬぁぁぁああああああああっっ!」
……この日、現代世界から「秋風悠也」の存在は跡形も無く消え去った。
▼ ▼ ▼
───はっ!? ここは異世界か!?
「お、お嬢様! 目を覚ましましたよ!」
「はしゃがないの、迷惑になるでしょ」
妙に頭が冴えてる。知らない天井、ふかふかのベッド、視界の隅にちらつく銀髪……銀髪?
「こんにちは、体の調子はどうですか?」
「え、ま、まぁ、悪くはない、です……」
「良かったです。道に倒れてたんですよ? しばらく安静にしててくださいね」
「はぁ……」
「レイニャ、彼の看病を」
「はい!」
今のは黒髪の少女だった。大きなポニテが特徴の……まさに、美少女だった。いいぞ異世界、来て良かったなぁ。
「えーっと、レイニャと申します。お体の方は大丈夫です?」
「大丈夫なんですけど、ちょっと状況が飲み込めてないです。なんで俺は普通に会話できてるんでしょう?」
レイニャと名乗った彼女の背中には、モルフォ蝶のような美しく繊細な羽が生えていた。妖精……か? 短い銀髪だ。
「あぁ、それはお嬢様が『共有』したからですよ」
「きょ、共有……?」
「はい、自分の持つ何かと、相手の持つ何かを互いに受け取る学術です。お嬢様はあなたの言語と私達の言語を共有したので、このように会話ができるワケです!」
「ちょっと現実味がないんですが、まぁ、ありがとうございます」
「いえいえ、お礼はお嬢様に。──見た所異国の人のようですが、どちらから?」
あぁ、そういえば今の俺の服はバリバリの制服だったな。
「……分かりません。ただ、当ても無く放浪していたのは覚えています」
「当ても無く放浪、ですか。むー……」
顎に手を当てて難しく考えている。ご存知の通り嘘なのだが、ファンタジー物で知識を蓄えた俺にとってこれが最善の一手だと思った。
『レイニャー! その人と一緒に下に来てー!』
「はーい! 立てます?」
「え、えぇ、多分」
足は……しっかり動く。異常もない。シーツから出てベッドに腰掛け、足に力を入れて立つ。どこも痛くは無い、健康体のままここへ来れたか。
「では、こちらへ」
▼ ▼ ▼
連れて来られたのは、半端ない程広いリビング……らしき場所。貴族の家なんてものがあるが、まさにそれだ。長すぎる楕円形テーブルに立つ蝋燭の火が揺らめいている。
「改めまして、こんにちは。……こんばんはの方がいいでしょうか、アルテミアという者です」
「こ、こんばんは。ユーヤです」
眼前に立つは美少女。ぱっちりとした翠色の瞳にさっきも言ったが大きな黒髪のポニーテール。千年に一人どころの話じゃない。
「道端で倒れていたものですから、すぐに救助しました。こんな夜更け、もしかしたら魔族に襲われるかもしれませんからね……」
「ありがとうございます。えっと…すみません、今お礼できるものが何も無くて」
「とんでもありません、お気持ちだけで十分──いえ」
曇りのない笑顔から途端に真面目な顔つきになり、俺はビクッとしてしまった。
「……ユーヤさん、どうしてこの街に来たのですか?」
「分かりません。目的無く彷徨って気付いたらここにいました」
「なるほど。それなら恩を返すのにうってつけのものがありますよ!」
「そ、それはなんですか!?」
冷淡な顔つきからまた一転、誇らしげな表情で彼女は、
「私の仲間になってください!」
──と、俺に言ってきたのだった。
0
あなたにおすすめの小説
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです
NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた
この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました
okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました
雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。
気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。
剣も魔法も使えないユウにできるのは、
子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。
……のはずが、なぜか料理や家事といった
日常のことだけが、やたらとうまくいく。
無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。
個性豊かな子供たちに囲まれて、
ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。
やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、
孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。
戦わない、争わない。
ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。
ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、
やさしい異世界孤児院ファンタジー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる